2023.10.19
INTERVIEW 02
笠原梨乃役 吉瀬美智子さん
- 今回は日本を代表する大女優という役柄です。
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撮影初日から蔵前(ムロツヨシ)にクビを言い渡すシーンだったんです。どういう風にやっていいのかまだ感触もわからないままやったんですけど、見てくださった方に嫌な感じが伝わるといいなと思いました。ただ、私としては、『極道の妻たち』をイメージして演じたんですけど、声が甘いせいか、思ったようにいかず少し難しかったです。
- 人気女優と聞くとプライドも高くてわがまま、みたいなイメージを持つ人もいるかもしれないですね。
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でもそれって、表では見せないものでしょ。だから、その裏の嫌な感じを本当はめちゃくちゃ出したかったんです。「吉瀬って本当にそうなのね」と思われたいというか、裏ではこういう風にやってるんだろうな、と思われるように見せたかったんです(笑)。
- 梨乃というキャラクターを演じるにあたって、監督からリクエストはあったんですか?
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特にありませんでした。なので、自由に楽しく演じました。
- 梨乃は、何故、30年もの間尽くしてくれた蔵前さんを切ってしまったんでしょうね?
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ずっと蓄積されたものがあったんでしょうね。最後に「抹茶ラテを飲み飽きた」というセリフがありましたが、もちろんそんな簡単な理由ではなくて、ずっとずっと溜めてきた30年、その「ずっと」が爆発したというか。だから、何かひとつの理由じゃないんですよ。毎回、「はぁ……」となりながらも二人三脚でやってきて、いつかいつかと思いながら切るタイミングはあそこだった、ということなんだと思います。
- ずっとふたりで頑張って、海外進出の夢が叶うその直前に切っちゃうわけですから蔵前さんにとっては酷な出来事でした。
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きっとそれほど嫌だったんでしょうね。「海外進出もあなたの手柄にされたくない」という思いもあったんじゃないかな。
- ひとりのマネージャーが30年つくというのは長いですよね?
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長いですね。30年というのは珍しいと思います。
- で、最後の引き金になったのが……。
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抹茶ラテだったのかな。莉乃も「飽きたんだよ」って言えばいいのに、それを言うのも嫌だったのかも(笑)。
- 裏方さんの大切さは、役者さんは最もよく分かっていますよね。
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もちろん分かっています。でも、「いないと何にもできないでしょ?」みたいに思われていることがまた嫌だったりしたんでしょうね。台本に付箋をいっぱいつけて、いろいろ書いてあるのとか、きっと男性関係とかも全部把握されているから、「はあ、自由になりたい」という思いもあったんじゃないでしょうか?
- 吉瀬さんも、そういうところにおいては梨乃に共感できると?
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はい(笑)。
- ムロさんとのお芝居はいかがでしたか。
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本当に現場を盛り上げてくださる方。ずっと話しかけてくださるし、やりやすい環境を作っていただいたと思います。本当に何を投げてもいろんな形で返してくださるから、安心してお芝居が出来ました。私が不器用な分、ムロさんが合わせてくれる感じでした。「そうくるんだったら、僕はこうします」みたいな感じでやってくださるから、楽しかったです。
- ムロさんは「喋ってないと不安になる」「間が怖い」とおっしゃっていました。
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アドリブもずっと続くから、つい聞き入ってしまって(笑)。どこからどこまで準備してきているのか全然分からない。凄いです。番宣でも、ずっとムロさんが盛り上げてやってくださるので助かります。いらっしゃるだけで、場がふわっと明るくなります。
- お芝居をする前に、事前におふたりの間で話し合われたことはありましたか?
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役についての会話はなかったですね。「食べ物は何が好き?」とか「お酒飲む?」とか、そういう普通の会話から緊張をとってくださる感じでした。
- 座長として素晴らしいですね。
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本当に素晴らしい方です。なのに、もっとちゃんと褒めてあげなきゃいけないのに、全然できないです(笑)。
- 今後、梨乃はどうなっていくんでしょうか? 蔵前と会うようなこともあるんでしょうか?
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どうなるんでしょう?(笑)。ただ、表に出る職業ですから、TVで見かけたりして彼にはそれがグサグサくるような感じもあるでしょうね。そういうシーンも私は凄く大好きなんです。
- それは楽しみです。きっと、蔵前さんの心の中にはずっと梨乃がいるわけですもんね。
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男性って付き合っていた相手と別れると、引きずるって言うじゃないですか。意外と女性は引きずらないと思うんですけど、そんな感じがずっとあるんじゃないでしょうか。30年も一緒にいたんですから、忘れたくても忘れられないでしょ(笑)。