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Interview インタビュー

2023.07.24インタビュー01

浜岡妙子&若菜絹代役
若村麻由美さん

出演が決まった際、準備期間が短くて悩まれたとか?
まだ不安です(笑)。でも、最初にやらせていただくことになりましたとご挨拶させていただいた時に、スタッフの方たちが本当に温かく迎え入れてくださったんです。すごく緊張していたのですが、この現場なら大丈夫かもしれないと思いました。また、実際に撮影現場に入ってセリフを言った時、共演者の方もスタッフの方もそれぞれの役割を全うしてくださっていて…。その時に“ああ、一歩踏み出したんだな”と感じました。それが撮影初日。“いろいろなことがわからないままでも、この温かいスタッフと共演者とだったらやっていけるな”と思い、一つ大きな安心感とともに楽しいなと感じられたので、あとは怒涛の毎日を送っています(笑)。
浜岡妙子と若菜絹代の演じ分けで意識されていることは?
私の中では、まずは浜岡妙子という普通の主婦を軸としています。夫の陽一役をマキタスポーツさん、一人息子のあきらを中川大輔くんが演じていまして、その3人家族が第一にしっかりとあります。そこから派生しての物語で、まず大女優の若菜絹代が失踪したので、その代役に急遽、普通の主婦の妙子が見たこともない世界に飛び込む物語です。まず、妙子の普通な感じを出すのに、マキタさんの力がすごく重要で、撮影に入る前に家族のシーンだけ本読みをさせていただきました。その時に“ああ、こういう旦那さんを持っている奥さんなんだ。大変だな”って思わせてくれたぐらいマキタさんがすごく実感のあるお芝居をなさっていて、それがすごく良かったんです。陽一さんがいつもくるくると、靴下を半分だけかかとの部分だけ脱げていて、妙子はそれがすごく気になっているんですけど口には出しません。それが洗濯機にそのまま突っ込まれていたりして、洗濯機がうまく動かなくなったりとか(笑)。そういう日常生活の些細な積み重ねがしっかりとベースにあって、そこから妙子は思わぬ世界に連れ込まれるわけです。
その世界で起こるさまざまな出来事にカルチャーショックを受けながらもなんとかこなしていこうとする前向きな妙子さん、というのが次に登場します。かつらをかぶってつけまつげをしてつけ爪をして、若菜のふりをします。最初に謝罪会見という大きな目標に向かって、シェイプアップ大作戦やヒールを履いて一生懸命練習することが始まりました。なかなかうまくいったんじゃないかと事務所側が思い、若菜がなかなか戻ってこないということもあるので、次から次へと若菜に扮した妙子がいろんな番組に登場したり…。そこが、視聴者の方には面白く見ていただけると思います。だんだんと妙子も自分の中の未知なる可能性のようなものに気づき始めて、最初は及び腰で後ろ向きだったのですが、あることをきっかけに若菜さんになってみる、やってみるっていうふうに、一歩前に踏み出すんです。扮装はしているけれども、普通の妙子が頑張っている時、私たちは“妙子若菜”と言っています。若菜絹代がどっちも姓も名前みたいなので、絹代なのか若菜なのか時々混乱することもあります(笑)。
もう一人が若菜絹代です。実はこの人が一番ミステリアスでなかなか登場しないんです。若菜絹代のシーンは、今撮り始めているところなのですが、まだ悪魔的なところはあんまり撮っていません。ですので、どんなふうに悪魔なのか、まだ私もまだ分からないんですけど、楽しみにしています。でも、若菜絹代はおそらくマイペースなのだろうと思うんです。それが客観的には周囲の人にとっては悪魔めいていたり、突然いなくなったりすることも悪魔ですよね?
演じ分けについては、それぞれにシチュエーションがしっかりあるので、自然に相手役の人とセリフを交わす中で、声のトーンとか役の重心みたいなものが決まってくるんです。自然と姿勢も変わってくるし歩き方も変わってくるし、というような感じです。そう考えると人間というのは、対人に自分をどう見せたいか?  とか、その距離感で人物ができていくんだなと、このドラマで改めて気づかせてもらいました。
演じられる役に共感できるところは?
主人公の浜岡妙子に共感できます。スーパーで働いたことはないのですが楽しいだろうなと思っていて。私はキュウリのパックがどうやってできてるか知らなかったんですけど、3本パックにしてラップでくるんで熱の電気の上に当てるとピタッとつくんです(笑)。子供の頃から不思議に思っていたので、今回、実際にやらせていただけました。スーパーのシーンは他にもいろいろと知らなかったことを体験できたので、とても楽しかったです。妙子は一切の家事をこなしているので、お母さんたちがどんな思いで家族を支えているのか?  という部分には共感できます。文句も言わずにご飯を作ったり…。家族にとって、そんな“お母さん”がいつも家にいてくれるということが安心できるんですよね。私が自分自身がそうだというより“そうだよね。本当にお母さん、いつもありがとう”いう感じです。
妙子の写真を見た時に本当に平凡な感じがしました。
嬉しいです。最初は髪の毛が伸びっぱなしになっていたので、監督に“役に合わせてもうちょっとカットしようと思います”と話したら“そのままでいいです”と言われました。ちょっとパーマが取れかかっている状態なんですけど、その感じに日常感があるということでそのままやらせていただきました(笑)。
他に外見的には?
妙子に関しては基本シンプルに、上は白、下はデニムなどのパンツが多くて、たまにスカートも履きますが、家事やスーパーで働く時に動きやすいのが妙子のスタイル。何が大変って、たくさんある衣装の中で、あそこの白いパンツとデニムって言われたら、ほとんどそうなんです。どの白いシャツなのかがわからなくなるぐらい(笑)。でも、そこをぜひ見ていただきたいですね。ちゃんと着替えてますから(笑)。全部ちょっとデザインが変わっていたりするんですよ。妙子がだんだん目覚めていく中で、日常生活の白いシャツも少しずつデザインが増えていったりして、そういうシンプルなシャツとボトムスでも心境の変化みたいなのをスタイリストさんが用意してくださっています。
今回は芸能界の裏側も描かれます。本作から若村さんが感じられることは?
このドラマがすごいのは、昨年末に全話できていたということ。連続ドラマでは、先の台本がなかなか出来ないことが多い中で全部わかっているんです。業界のあんなネタ、こんなネタみたいなものもすでに全て毎話に盛り込まれていました。多分、普段視聴者の方が見てくださっているドラマなどは編集された表の部分だけです。その裏側でどうやって作られているのか?  どんな人たちがどんなに大変な思いをしているのか?  みたいなところが描かれているので“そうなのか、こんなことあるのか”と、面白がりながら見ていただけると思います。もちろん楽しいこと、面白いことだけではありません。私たちは深刻な部分も乗り越えています。そんな大変な業界の中で何かをお届けするんだ、という気持ちで皆んなが一丸となってやっているんです。ドラマでは、そういう深刻なところを木村佳乃さんが演じる所属プロダクション社長、比嘉莉湖が背負っていますので、そこもご覧いただきたいです。そこも含めて、基本的にはてんやわんやになるのですが(笑)。また、全話出来ていたということでは、主題歌を書き下ろして下さった小田和正さんも昨年末にすでに読んでいたので、曲も早くにできていました。そして今のツアー小田さんが、その曲を引っさげて回って下さっているのもすごいことだと思います。
若村さんにとって、この芸能界、役者の世界は?
素晴らしいです。私にとって“素晴らしき世界”です。本当にその通りです。今回もそうですけれども、“あなたに”って役をいただけることが、やっぱり何よりもありがたいです。どんな仕事でも主婦の方も、必要とされるっていうことは本当に幸せなことですよね。“あなたに”って言っていただける役者で居続けたいな、と思います。

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