お父さん
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「ジャム、まだ起きているのかい。もう寝ないと明日も寝坊するよ。」
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ジャム
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「僕も寝たいんだけど、ぜんぜん眠くないんだもの。」
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お父さん
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「そうだなあ、ジャム。夜眠れないときは、羊を数えると眠くなってくるよ。」
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ジャム
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「羊? 何それ。 」
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お父さん
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「毛がふわふわしていて、4本足で歩く動物さ。群れを作って暮らしていることが多いんだ。それを『羊が一匹、羊が二匹‥‥』って数えていくのさ。」
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ジャム
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「ふーん。羊が一匹、羊が二匹‥‥こんなので眠くなるのかなあ。羊が三匹、羊が四匹‥‥。ふぁーあ。羊が五匹‥‥羊が六匹‥‥」
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お母さん
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「ジャム、お使いに行ってきてくれないかしら。ジャム‥‥あら、お昼寝しているの?」
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ジャム
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「えーと、羊が‥‥。あれ、羊って何だったかな。」
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お母さん
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「ジャム、羊を知っているの? それなら話が早いわ。お使いは羊のことなのよ。このノートを届けて欲しいの。」
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ジャム
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「何のノートなの?」
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お母さん
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「このノートはねえ、いろいろな人が羊のことを順番に書いているの。一番新しく書いたのはお母さん、お母さんの前に書いたのははお父さん。」
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ジャム
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「へえ、お父さんの前は?」
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お母さん
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「羊のお話を作っている人たちで回していたらしいわ。」
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ジャム
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「お父さんやお母さんのところに何で回ってきたの?」
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お母さん
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「よくわからないわ。でも羊のお話を作っている人達は案外この近くに住んでいるみたいなの。」
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ジャム
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「へえ。で、お母さんが僕に頼みたいお使いっていうのは、このノートを次の人に持って行くことだね。」
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お母さん
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「そうなの。行ってきてくれるかしら。」
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ジャム
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「いいよ。ピペも一緒に行こうよ。」
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ピペ
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「ピペ!」
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ジャム
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「それで、このノート、誰に持って行くの?」
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お母さん
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「アンのおとうよ。」
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ジャム
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「えっ。アンのおとうは遠くへ行っちゃったんじゃないの。」
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お母さん
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「今ね、うわばみ谷の橋の点検に来ているの。」
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ジャム
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「それじゃあアンも?」
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お母さん
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「もちろんよ。」
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ジャム
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「うわあ、アンに会えるんだ。行こうピペ。‥‥でも、お母さん。」
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お母さん
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「なあに、ジャム。」
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ジャム
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「このノート、何でアンのおとうのところに回すの?」
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お母さん
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「だって面白そうじゃない。それにアンのおとうにトランペットを貸してもらいたいし‥‥、あ、それはこっちの話。」
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ジャム
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「いいのかなあ、どんどん羊の話と関係無くなっちゃうけど。」
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お母さん
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「いいの、いいの。つべこべ言わずにさっさと行きなさい。」
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ジャム
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「こっちの方に来るのは久しぶりだね。でも、このノート、アンのおとうのところに持って行くのでいいのかなあ。」
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ピペ
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「ピペ‥‥。」
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ジャム
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「あれ、ピペ。向こうから変な生き物がやってくるよ。」
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ピペ
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「ピペ?」
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ジャム
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「あ、近づいて来る。僕等と同じ方向にいくのかなあ。あいさつしてみようか?」
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ピペ
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「ピペ。」
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ジャム
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「やあ、こんにちは。このへんではあまり見ない顔だねえ。僕はジャムでこっちがピペ。」
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ピペ
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「ピペ!」
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ポー
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「僕は羊のポー。」
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ジャム
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「へえ、君は羊なんだ。羊って初めて見たよ。ちょっとさわってみてもいい?」
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ポー
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「いいよ。」
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ジャム
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「うわあ、ふわふわだ。気持ちいい。これが羊かあ。僕お母さんのお使いで来ているんだけど、羊のことをこのノートにいろいろな人が書いているらしいんだ。」
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ポー
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「ちょっと見てもいいかな。」
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ジャム
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「いいよ。はい。」
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ポー
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「へー、これは面白いや。これを誰のところに持って行くの?」
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ジャム
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「アンのおとうのところだよ。この先のうわばみ谷にいるんだ。」
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ポー
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「アンっていうのは君のガールフレンド?」
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ジャム
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「よせやい‥‥た、ただの友達だよ。あれ、君の近くでは何だか素敵な音楽が鳴っているね。」
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ポー
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「これは、めいなCoっていう人たちが作ってくれた曲だよ。僕はこれからめいなCoの張紅陽さんの家に遊びに行くところなんだ。張さんは、この先を東の方にずっと行ったところにある東京っていう街に住んでいるんだ。」
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ジャム
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「へえ。僕達はそこの角を西に曲がるからそこでお別れだね。」
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おとう
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「おっ、ジャム、久しぶりだなあ。」
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ジャム
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「あ、アンのおとうだ。こんにちわ。」
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おとう
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「よくここに来ていることがわかったなあ。」
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ジャム
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「それはお母さんが‥‥。」
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アン
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「ジャムー。」
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ジャム
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「アンの声だ。あ、あそこにいる。アンー。」
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ポー
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「あれあれ、走って行っちゃった。君も行ったほうがいいよ。」
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ピペ
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「ピペー。」
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おとう
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「羊とはこのあたりでは珍しいな。でも、やけに平面的な羊だなあ。」
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ポー
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「粘土じゃないんです。ごめんなさい。」
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おとう
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「おいおい、あやまることはないだろう。じゃあな、お前もがんばれよ。」
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ポー
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「はい。さようなら。」
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気がつくとポーは草原の中に一人で横になっていました。
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ポー
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「‥‥あれ、夢を見ていたのかな。ジャムとピペとは友達になれそうだったのになあ。あのアンのおとうはセリフが棒読みでちょっと変だったかな。でも楽しい夢だったなあ。」
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ポーが立ち上がると、目の前に一冊のノートが落ちていました。
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ポー
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「あ、ジャムがおとうに渡すはずだったノートだ。アンの姿を見たとたんにジャムは走っていったから、返すのを忘れちゃった。どうしよう。」
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ポーは少し考えて、東京の張さんのところに持って行くのが良い考えのような気がしてきました。もう少し考えて、張さんのところに持って行くのはすごく良い考えのような気がしてきました。そしてポーは、東の方へ歩いて行きました。
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おしまい
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