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  •  フィギュアスケートの世界選手権最終日は28日、男女のフリーが行われた。女子は、ショートプログラム(SP)3位で全日本女王の宮原知子がフリーで126.58点とSPに続き自己ベストをマークして、合計193.60点で銀メダルを獲得した。初出場で表彰台に立ったのは、2007年の浅田真央(銀メダル)以来の快挙。女子日本勢は10大会連続で表彰台を守った。
     「表彰台に乗ることは難しいと思っていたので銀メダルを取れて嬉しい。フリーの演技が終わった後は、もしかしたら3位にはなれるかなと思っていたので、2位になれるとは思っていなかった。すごく嬉しい。いままでロシアの強い選手に勝ったことがなかったので、今回2人に勝つことができて自信になった」

     国際大会で女子として史上6人目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をSPで成功させて世界歴代3位となる77.62点を出したエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)は、フリーでも132.74点の高得点をマークして合計210.36点の200点台に乗せて、初の世界女王に輝いた。ロシア勢としては2005年のスルツカヤ以来10年ぶりの制覇となった。
     「トリプルアクセルを跳べたときは鳥肌がたった。これは夢?本当に世界選手権で成功したの?と思った。トリプルアクセルを入れたSPをノーミスで滑ったのは初めてだった。今回の自分のパフォーマンスには満足しています。シーズン最後の大会で優勝できて嬉しい。感激でいっぱいですし、優勝が決まったときは驚くべき瞬間でした」

     総合3位は合計191.47点のエレーナ・ラジオノワ(ロシア)が入ったほか、日本勢ではSP5位の本郷理華が合計184.58点の6位、SP4位の村上佳菜子は合計179.47点の7位だった。日本女子は上位2人の合計順位を「8」として「13」以内だったので、来季の世界選手権出場枠は最多3枠を確保した。

  •  男子は、ソチ五輪金メダルでSP首位の羽生結弦がプログラム冒頭の4回転サルコーが2回転に、4回転トーループで転倒するなどの失敗を重ねて得点源を失ってフリーで175.88点の3位になり、合計271.08点に留まって銀メダルに終わり、日本選手初の大会2連覇はならなかった。
     「本当に悔しいです。今の自分にとって悔しいという言葉が一番合っていると思います。自分の気持ちをうまく言えないので悔しいという一言に全てを託したい。すごく練習してきたハビエルが練習の成果を出したことが嬉しい。いつも『おめでとう。誇りに思う』言ってくれていたハビエルと立場が逆になって、僕が2位でハビエルが1位になってみて、初めてハビエルを誇りに思うことが分かった。自分はそんなに心が広くないので悔しいし、絶対に勝ってやりたいと思います。でもその反面、自分と一緒に練習している仲間が優勝することはこんなにも嬉しいんだと思いました」

     SP2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が2種類の4回転を2度成功させるなどで得点を伸ばして逆転で初の栄冠に輝き、世界選手権9度目の出場でついに頂点に立った。
     「何と言っていいのか、言葉が出ない。本当に世界一になったのか信じられない。世界チャンピオンは私の夢でさえありませんでしたが、ついにそれを成し遂げました。金メダルは来季に向けてのやる気にもなりますし、一生懸命に練習し続けること、そして毎試合でベストを尽くす私にたくさんのエネルギーを与えてくれるはずです」

     銅メダルはSP3位でフリー1位だったデニス・テン(カザフスタン)。そのほかの日本勢は、SP19位の小塚崇彦が総合12位、SP23位の無良崇人が総合16位に終わった。この結果、日本男子は上位2人の合計順位が「13」以内を上回って「14」になったため、来季の世界選手権出場枠を最多3から2に減ることが決まった。2008年から8年間は3枠を保持していたが、ベテラン2選手の惨敗が響いた。

  • 《大会総括》

     ソチ五輪翌シーズンの世界選手権は男女とも新しいチャンピオンが誕生した。中でも、特筆すべきは18歳のトゥクタミシェワがSPでトリプルアクセルの大技を完璧に決めたことだ。昨季までは女子では浅田真央しか競技会で跳ぶことができなかった浅田の代名詞とも言えたトリプルアクセルだが、2018年平昌五輪ではおそらく多くのトップを狙う女子選手が当然のように挑んでくる大技になる予感がする。3年後に迫るひのき舞台のメダル候補たちの戦いがいよいよ本格化してくるだろう。

     男女とも世代交代の流れが急速に進みそうで、今回表彰台に上がったトップ選手たちのポジションも決して安泰ではなく、来季以降は続々とシニアに参戦してくるジュニア上がりの有望選手たちとの勝負が激しく展開されそうだ。


    ※このコラムは、フリーランス記者の辛仁夏が担当しました。



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