フォーミュラ・ニッポンに参戦して2年目の昨季最終戦、このレースに勝ちさえすれば、年間ドライバーズのタイトルを手に入れることができた。レース界の頂点F1の舞台へ向けて、大きな一歩を踏み出せる可能性を秘めた大一番だった。だが、星野一義率いる「インパル」(IMPUL)の同僚、ブノワ・トレルイエに敗れ、タイトルを逃してしまう。ランキング1位との差は、わずか1ポイントにすぎない。つまり、トレルイエが彼に勝利を譲っていれば、昨季の王者は井出になっていたわけだ。
覆水盆に返らずという。ポールポジションからスタートした昨季開幕戦で、抜かれた後続車に井出の血が騒いだ。逆に抜き返そうと攻めの姿勢を見せた結果、追突してポイントを失ったのだった。このときリタイアしていなければ、井出の「チャンピオン」はほぼ約束されていたのかもしれない。
鈴鹿サーキットでの第9戦終了後、号泣する彼の姿を遠目に見やりながら、星野監督は強く言ったものだ。
「優勝は力で勝ち取るものです。井出はこの1年ですごく成長しました。来年はスーパーなチャンピオンになってくれると思いますよ」
R:昨季はリチャード・ライアンとアンドレ・ロッテラーに優勝を譲ってしまいました。たった1ポイントの差だったんですが、ここでタイトルを奪っていれば、F1への夢は確実に開けたんでしょうか。
I:もちろん「チャンピオン」っていう肩書きは大きいと思います。でも、単なる「チャンピオン」ではなくて、圧倒的な速さで勝つなど、インパクトのあるタイトルの獲り方をすることが大事です。フォーミュラ・ニッポンでチャンピオンを獲っても、F1への道のりの厳しさは、あまり変わりませんからね。
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