◎インタビュアーの目
日本人F1ドライバー7人目の琢磨は、これまでの選手たちとは匂いが異質である。他の6人はF1の世界でどこか“控えめ”な感じがしたが、琢磨は完璧な住人に成り切っている。走行中のマシンの接触などのトラブルで、審査室に呼び出されても、自分の言いたいことはハッキリ言い、自分の正当性を認めさせてしまうほど弁も立つ。取材したこの日は、上海GPのフリー走行でエンジンブローした直後だった。スーパーポジティブシンキングを身上とする琢磨も、さすがに「へこんでいます」と笑顔に陰りがある。しかし、今置かれている環境を冷静に見つめ、ダントツの速さを誇るフェラーリに肩を並べるには何をすべきかを緻密に分析するあたりに、欧州のモータースポーツ界で揉まれ、這い上がってきたセルフマネージメント能力の高さを見せられた思いだった。F1は、日本ではまだブームに流される脆弱さがある。その基盤を確固たるものにするためは、琢磨はF1伝道師としての責務も負っている。
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