◎インタビュアーの目
高橋は小学校3年生の時、交通事故に遭った。下校途中に黄色が点滅した横断歩道を走って渡ろうとして車に撥ね飛ばされたのである。高橋は宙を舞った。舞いながら「あ、街路樹のてっぺんはこうなっているんだ」と考えたという。多分、5メートル近くは飛んだはずだ。目撃者の誰もが大惨事を覚悟した。高橋は宙でみんなの悲鳴も聞いた。だが、空中で瞬時に態勢を整え、クラウチングスタイルで着地に成功。そのまま何事もなかったように走り去ったという。高橋は「車を運転している人から家に送ると言われたんですけど、断った。そんなことより、バレーの練習に遅れると気が気じゃなかった」という。このエピソードは、高橋の性格をそのまま具現化している。難しいプレイをさも簡単にこなし、みんなが心配する場面でも、一人ニコニコしている。本能で動いているようでも、実は冷静に判断している。そして猫のような運動神経。この選手は、どこまでプレイの幅を広げていくのかなという密かな楽しみを抱かせるのだ。高橋は、交通事故という究極の場面でその潜在能力を発揮したように、こういうタイプの選手は、後がないほどに追い込まれないとその能力を披瀝しない。オリンピックがそのチャンス。アテネでは、また別の顔を見せてくれるはずである。
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