◎インタビュアーの目
高見盛に実際会うまでは、一握りの疑念を持っていた。身体を張った勝負の世界で、あれだけひたむきで、人の良さ、暖かさがあり、ひいては、純朴な少女を形容する「可憐」というような言葉まで似合いそうな競技者は、まず存在しないと思っていたからだ。もしかしたらあの態度は、巧妙に計算されたパフォーマンスかもしれないと疑っていた。しかし、目の前に座った巨漢の男は、身体を縮め、俯きながら、自信なさげ気な言葉を重ねる。どんなにこちらが盛り上げようとしても「…でも、僕は弱いですから」「…しかし、先のことはやってみないとわかりません」「…それでも簡単に落ちちゃうかもしれないし」と必ず最後には、否定用語を並べてしまうのだ。高見盛と話をしながら思った。人間なんてもともと弱いもの。弱いからこそ虚勢を張りたくなる。虚勢を現実だと思い込もうとする。実は、自分の弱さをさらけ出す勇気を持っている高見盛こそ、強靭な精神を持った人間なのではないかと思ったのである。ファンには「ロボコップ」と親しまれ、仲間たちには「かとちゃん」と愛され、最近では若い女性たちにも「タカミン」という愛称で熱い視線を注がれているのは、はかなさに魅入られているのではなく、強さに対する憧憬なのかもしれないと思い直した。
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