Y:後遺症もないみたいですしね。身体の感覚も怪我の前と同じになりましたか。
T:メスを入れた後と前では、やっぱり感覚が少し変わってきます。二場所休んで幕下一枚目から始めたんですけど、身体が自分のものじゃないみたいになって、結局、負け越してしまったんです。いろんな人たちから、靭帯を一回切るような怪我をしたら、以前とは同じパフォーマンスは出せなくなると聞いていたし、復帰した場所でボロボロだったから、「こんなんではもうやっていけないのかもしれない」と、この時は本気で悩みました。でも、僕には目標があったんです。若の里関など、膝の靭帯を切るような怪我をしても見事に復活して活躍している人が身近にいたし、何より曙親方(相撲協会退職)の存在が大きかったですね。以前に、親方の膝に触らせてもらったんですけど、僕以上の酷い怪我だったことが、膝のゴリゴリした音からわかるんですよ。話を聞いてみると、半月盤を怪我してるわ、膝の骨折はしてるわ、そのほかにも満身創痍という言葉が似合うほど、いろんなところにダメージを負っているのに、横綱を張っていたんですからね。もちろん、そんなことは横綱を引退するまで、僕らにも一言も言わなかった。曙親方に比べれば、僕の怪我なんてそれほど深刻なものじゃない、と思えてきたんです。どうせ辞めるなら、怪我をしようがなにをしようが、相撲をとことんやり尽くしてから辞めるのでも遅くはないと、その時に考えられるようになった。そう開き直ったら、次の場所では、大勝することができました。
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