◎インタビュアーの目
清水選手は、ソルトレイク以降の二年間、神様はこれほどまでに一人の人間に試練を与えるのかと思うほど苦しんできた。靴下もはけないほどの腰痛に苦しみ、左足の神経も部分的に麻痺した。神経が麻痺すると、いくらトレーニングしても脳からの指令(インパルス)が筋肉に伝達しないため、筋肉が鍛えられないのである。そのため、スピードスケーターの生命線でもある太腿の左右の太さが違ってしまった。普通ならここで競技を諦める。だが清水選手は、神経系を刺激する独自のトレーニング方法を考えだし、今は、怪我をする前に近い所まで身体を回復させた。同時期に、「29年の人生の中で最大」と言う人間関係の葛藤も味わった。精神的なダメージも大きかったため、アテネ五輪までは休養してもいいんじゃないかな、と傍目に思っていたところ、シーズンが始まると、スイッチを切り替えるようにまったく別人になっていたのである。「競技者の自分とプライベートの自分は違う」と言ってはいたものの、その切り替えの早さに、改めて、二人の自分を生かし切る強靭な精神力を見た思いだった。そんな清水選手の楽しみは、甥や姪に会うこと。3歳になる甥がスケートを始めたのが嬉しくて仕方ないらしい。「僕より筋がいいんですよ」。彼らのことを語る時は試合前でも、プライベートの顔になる。
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