Y:レース中の時間の感覚というのは、日常の時間の刻み方とは違ってくる。だから、本山選手の親友だった加藤大治郎さんのような不幸も突然つきつけられる。
M:レースって簡単に人が死んじゃうんだな、と思いました。大治郎は親友というより兄弟みたいな存在だったので、現実を受け入れるのは辛かったですね。いや、まだ受け止め切れていない部分はあります。アイツが3歳ぐらいの頃からずっと一緒でしたから。事故があったのは鈴鹿で行われたMotoGPの開幕戦。息を引き取るまで2週間ぐらい付き添っていました。でも、レースって振りかえる間もなく続いていってしまうんですね。お互いレースのことはあまり話さなかった。10のうち1ぐらいの割合かな。あとはプライベートの話ばかり。ただ、二輪と四輪では走り方が違うし、マシンの操作も違うけど、基本的なスタイルは一緒でした。感覚が似ていたんでしょうね。ライバル意識ではないけど、お互いの分野でどれだけ活躍しているのか、そういうのは競っていたかな。収入の面でも負けたくないと思ってしたし、大治郎の存在はいい刺激になっていました。でも向こうは世界チャンピオン。250ccで2001年の覇者ですから。ヨーロッパでは知名度抜群でしょ。でも、日本では2人でどこかに行くと、僕のほうが声をかけられる率が高かった。大治郎にはそれが悔しかったみたいですよ。そんなことが引き金になって、これまでは自分が好きだからレースをやっていたのに、もっと有名になって二輪レースを普及させるんだと意気込んでいたんです。その矢先の不幸でした。
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