Y:お父さんの偉大さに改めて気づかされた一件でしたね。
I:やっぱり僕には、父が生涯の師であると確信しました。一生頭が上がらない。だって、いつか僕が結婚して息子が生まれたとしても、父が僕に注いでくれたエネルギーを僕が息子に注ぎ込めるかどうかわからないですもん。父は今リハビリ中ですけど、良い試合をたくさんすることが親孝行かなと思っています。それが親父にとっても生きる活力になりますから、試合には必ず顔を出して欲しい。そもそも僕が5歳で柔道を始めたのは、父のカッコ良さに憧れ、僕も父のように強くなりたいと思ったからなんです。父は警察官で、マルボウ担当でした。たまに銭湯に行くと背中に絵を描いた人がいて、子供心に恐い人かなと思って父の背中に隠れていると、その人たちが父にペコペコしているんです。父の柔道の練習について行けば、父が大きな人たちをボンボン投げている。僕には、父に近づくことがイコール柔道をすることだった。
Y:井上選手は三人兄弟の末っ子。柔道を始めたのは末っ子が一番早い。
I:兄たちは、剣道をやっていましたから。でも、次男の智和は小学校低学年の頃に柔道に鞍替えしました。僕は小学校5年生の時に全国優勝し、それ以降、色んな大会でトロフィーを貰いましたけど、兄は遅咲きだった。子供の頃に「康生に比べ智和は……」と散々周囲から言われてきたらしいんですけど、よく腐らなかったと思いますね。僕なら絶対にいじけていた。兄はそれをバネに世界的なレベルの選手になりましたし、人間的に大きいのも2番目ですね。98年の全日本選抜柔道体重別選手権で、初めて兄弟対決をしました。僕が負けちゃいました。でも、2回目の対決になった2001年の同じ大会では、きちんとリベンジしましたけど。今は一勝一敗。でも、精神的なものでは、僕は完璧に助けられています。
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