Y:自分の身体をコントロールしているという感覚はありますか。
I:コントロールしてみたいです。頭の先から指の先まで、すべての神経をコントロールしてみたい。それが出来たら、凄いだろうなとは思いますが、まだないですね。逆に、僕が柔道を通して求めているのは、その域に到達することなのかも知れない。だから、オリンピックで金メダルを獲っても、世界選手権でチャンピオンになっても、全日本を連覇してもまだ満足できないのは、自己支配をしたいのにまだ出来ていない違和感からくるものだと思います。でも、それに近い感覚は、2003年4月に行われた全日本選手権の決勝戦で体験しましたよ。対戦相手は、その3週間ほど前の体重別選手権で敗れた鈴木桂治選手だったんですけど、「あ、今だ」と思った瞬間にはもう勝手に身体が動いていて、内股を仕掛けていた。タイミング、パワー、スピードが一瞬のピンポイントで一致してあの技が生まれたんです。加えて全日本選手権という大舞台で出たので、これこそ本当の柔道の技なんだと思いました。でも、自分をコントロールして内股を仕掛けられたのかといったらそうじゃないです。パッと閃いた時には、自分の能力がすべて出ていたという感じかな。でも時々、そんな感じの試合はあります。それが意識的に出来るようになったら本物だとは思いますけど。
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