◎インタビュアーの独り言
吉田選手が総合格闘技へ転身を決めた時、私は少なからず違和感を持った。あくまで私の総合格闘技への知識の無さからだったが、予定調和や出来レースという懸念が拭いきれず、人間の一瞬の隙を突く柔道とは、違うパラダイムの競技だと思っていたからだ。だが、PRIDEを見に行って自分の無知さを恥じた。リングに上がった吉田選手の表情は、五輪や世界選手権に向かう時と同じようにピーキングをコントロールしようとしているようだった。それだけPRIDE は、レベルが高く難しい競技の証とも言える。吉田選手は、総合格闘技という闘争本能を満たす舞台を見つけたが、しかしそれ以上に、リング外での闘いを強いられている。歴史に裏打ちされた柔道界のシステムを、現代に即したものに変えていきたいという途方もない闘いである。その根底にあるのは、柔道に対する強烈な愛着。柔道に見切りをつけて総合格闘技に転身したのではなく、柔道界が抱える問題を関係者に突きつけるために、自らリトマス試験紙になる覚悟が見える。24時間闘う男は、普段着でも輝いていた。
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