新ニューヨーク恋物語
田村正和さんインタビュー
Q.撮影は何日くらいかかったんですか?
A.20日間くらいでしょうか。そう言えば、おもしろい話があったんですよ、向こうで。今回、ずっと奥さんと一緒だったんですけど、僕たちが泊まっていたホテルに、宿泊客しか入れないクラブがあったんですよ。そんなに広くないんですけど、そこに奥さんと一緒に行って、向かい合って座ってたら、奥さんが笑ってるんですよ。で、笑いながら目で合図するんです。何かな、と思って後ろを振り返ったら、ピーター・フォークさんが座ってたんです。奥さんの目線から見たら、「古畑」と「刑事コロンボ」が並んでるわけ(笑)。僕も可笑しくなっちゃって、部屋に帰って、大笑いするやら、感激するやら…。あの広いニューヨークで、コロンボと古畑が出会うなんて…ね。
Q.16年前の撮影の時、ニューヨークに慣れるまでも時間がかかったそうですね。
A.ええ。あんなに活気のある街に行ったことがなかったですからね。行った当初は気持ち悪くなりましてね。騒音とか、人間の多さとか…。だから、スタッフとゴルフ場に行くのが楽しみで(笑)。マンハッタンから出るとホッとして、帰るときは「ああ、また戻るのか…」という感じだったわけですけど、しばらくするとそれが逆になりまして…。ゴルフ場から帰ってくると、「マンハッタンに戻ってきた!」という喜びに変わるようになって、その辺からニューヨークがすごく魅力的な街に見えて、好きになりましたね。
Q.9.11の同時多発テロなどの影響もあって、ニューヨークも変わってしまった部分もあるかと思いますが、田村さんから見て、ニューヨークという街の魅力は?
A.僕自身は、昔の方が魅力あったんですよね。特に今回の撮影は、セントラルパークの紅葉の季節だったこともあって、ツーリストが多くて、本来のニューヨークの姿じゃなかったかもしれないですね。観光客がほとんどで、かっこいいニューヨーカーが闊歩しているような光景はあまり見受けられなかったので…。グラウンドゼロにお線香を上げようと思って、お線香を用意していったんですけど、そういう感じじゃないんですよね。写真撮っている人がいたりして…。しょうがないことでしょうけど、お線香上げて、合掌しようという気にはなりませんでしたね。もっと静かに、お線香を上げることが出来るかと思ったのに…。
Q.では、田島にとってのニューヨークという街は、どういう意味があると思いますか?
A.田島に関しては…セリフにありましたね。自分には根っこがないと。家族もない、ちゃんとした家もない、そういう根っこがない人間でも、ニューヨークは受け入れてくれる街なんだ、という…。そういうことなんじゃないでしょうか。僕にとっては、ただロケーション現場で、それプラス観光地でもあるし。
Q.念願かなって田島をもう一度演じることが出来た、とおっしゃっていましたけど、今回の作品で、燃焼し切った、ということでしょうか?
A.久しぶりのラブストーリーですからねぇ。ずっとコメディーばっかりやっていましたから(笑)。ニューヨークにたどり着いたのはいいけど、入っていくのが難しいなとは思いましたね。やっぱり僕はコメディー俳優かな、と(笑)。同じプロデューサーで「過ぎし日のセレナーデ」というドラマがあって、これは神戸と東京を結ぶ話だったんですけど、この主人公も好きなんですよ。その男の場合は、ケリがついたんです。最後に死んでいったんですよ。でも、田島の場合は、こんなに波乱万丈の人生を送りながら、ケリがついていなかった。僕の気持ちの中では、あの後の人生がもっと面白いものになっているんじゃないか、というのがありましたから、是非やりたいと思っていたわけで…。
Q.では、田島が死ぬまでケリはつきませんか?
A.(笑)今回、ラストシーンは、気持ちの上でもかなり死に向かって歩き始めていますからね。ほぼケリがついているような気がしないでもないんですけど…。それに、「恋物語」ですからね(笑)。おばあさんと恋をしてもね(笑)。
Q.田村さんなら、10年後でも大丈夫だと思いますが…。
A.10年後? さらに10年後ですか? ありがとうございます。頑張ります(笑)。

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