ジャンクSPORTS
制作部長室
内容は陸上競技に青春を捧げた高校生の物語なのですが、なにしろ競技シーンの描写がリアルでついつい引き込まれてしまいます。
陸上をやっている部活高校生の究極の目標がインターハイであり、そのインターハイに出場を果たす為にはどのように予選会を駆け上っていかなければならないのか…。
私も全く知らない世界でしたが、おそらく丹念に取材をされているらしくとてもリアルに描かれておりました。
そもそも、私自身は陸上競技の魅力(見るスポーツとしてではなく、やるスポーツとしてのものですが…)に関して今ひとつピンと来なかった面が、正直言ってありました。
"走る"行為自体にゲーム性や勝負論が足りないのではないか、等と誤解していたようなのです。
ところが、この『一瞬の風になれ』は中学までサッカーをやっていた主人公が高校から陸上競技に転じて、"もっと速く"走る事、"人と競争して"走る事、"綺麗なフォームで"走る事に目覚めていく訳です。
そこには私が今まで見落としていた陸上競技のゲーム性、勝負論が満載でした。
さらに、4人一組のリレー競技の描写はもうわくわくしながら一気に読み進んでしまいます。個人競技では経験する事の出来ないチームワークの大切さ、アスリートには不可避な怪我との戦い、友人の挫折を慮るチームメイトの友情、等々、バトンを繋いでゴールする事の尊さがひしひしと伝わってきて、心を打たれるのです。
百分の一秒を争う世界では、当たり前の事ですが体調、天候、心理状態も含めたコンディションが如何にレース結果を左右するか。
こうした諸条件を克服したものが真に強いアスリートとなりえる事を改めてこの作品は私に教えてくれました。
こうした本に接して陸上部の門を叩く高校生が増えれば作者の佐藤さんもきっと嬉しいだろうなと思います。
ちょっと気恥ずかしい話ですが、それは私が「ジャンクSPORTS」を通じてスポーツ文化の成熟に少しでも貢献出来ればと常々願っている部分と共鳴するところでもあります。
私と佐藤さんはテレビ番組と文学作品、それぞれ活動するジャンルは違いますが、ご自身の作品を通じてスポーツ文化に大きく貢献された佐藤さんに深く敬意を表したいと思います。
6月18日
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(C)フジテレビジョン