第43回
新春かくし芸大会
2006
(←前へ)
<堺正章コメント>
〜「かくし芸」は表現者になれるところ〜
今回の演目は、自分が表現してなおかつ年を経たからこその見せ方で、インパクトがあって、技と構成力のあるもの。同じ芸をやってもシラけたり興がのってこなかったりというのがあるので、自分で流れをつくってみせていく順番をつくるというのが大切でした。
見ていただいたら分かるんですが、最初のうちは"雰囲気芸"なんですよ。"雰囲気芸"というのは一番ノリとかコンディションとかそういうのが大事になって、もちろん緻密な計算があるんですけれど、それをさも計算がないがごとく見せていく芸なんです。
イメージの中で演じたのはジョージ・カール(パフォーマー・2000年没)。会ったこともなければ、自伝を読んだ訳でもないんだけれど、30年前に10分から15分の芸をみて「こんな素敵な人がいるんだ、芸人として徹していて」と、ショックを受けた。それからその方の事が気になるというか…、全く自分が演じようなんて思っていませんでしたので、毎年かくし芸の頃になるとその人の事を思い出すという僕のカンフル剤だったんですよ。生き様とともにこの人の芸は僕の聖域。僕にとって共感というか驚異のところがあった。
今年もその映像をみて、数十年かけて作り上げてきた芸だけれど、この人の芸を記憶している人がどれくらいいるんだろうって思ってたんです。
芸選びの時に、VTRを100本ほど見てようやく最後にやる芸を決めたんですが、その芸がたった30秒で終わっちゃう芸だった。前がないんですよ。プロデューサーに「これだけで良い?」と言ったら、「それはまずい」と…(笑)。そこで、はたと考えて、「カールさんの真似は出来ない、どれくらい表現できるかはわからない」、けれど、あの"ペーソス"と、"おちゃめ感"、"リズム感"を、僭越だけれど表現したいと自分で言い出しました。今年に限ってこういう芸があってもいいんじゃないの?と思ったんです。カールさんの芸は30代ではやろうとは思わないし、それはできない。自分の手の届かない所にあった芸。それが加齢したことになって、それが今ちょうど良い状況になったのだと思う。
60歳を節目に、完璧な完成品にはならないと思うんですけれど、ある種自分の最終章に入っていく中で、あぁ堺の存在ってこういう感じだったんだという事をメッセージするのも大事かなと。もうちょっとタイトになって味をもうちょっと濃くしていきたいですね。
(→続き)
△サイトTOP
0.フジテレビTOP
(C)フジテレビジョン