サマヨイザクラ
-今井弁護士コラム-

【今井秀智 プロフィール】

91年検察官となり、97年弁護士登録(東京弁護士会所属)。
04年國學院大學法科大学院助教授、06年同教授。
09年木村晋介法律事務所の支所・恵比寿今井弁護士事務所開設。
「弁護士実務シリーズ刑法編」共著、「ざこ検事件簿」小学館文庫ほか。
現在、「ジキルとハイドと裁判員」(小学館ビックコミックスペリオール連載中)の法律監修

年明け早々に、東宝プロデューサーの窪田さんから、「これをドラマにしたいので法律監修をお願いしたい」と言われて、手渡された漫画『サマヨイザクラ』。これまでにも幾つか裁判員制度の企画に参加させてもらいましたが、制度の本質を鋭く突いた『サマヨイザクラ』にびっくり。しかも、制度が始まる1年以上も前から、このような作品の連載を始めていたとは、作者の郷田マモラさんはスゴイ! いったい何者? と正直思いました。
市民が法律のプロと一緒に裁判に参加する裁判員制度。この制度は、間違いなくこれからの日本の司法、そして社会の仕組みを変えていくと思っています。導入には未だに賛否両論ありますが、ボクはこの裁判員制度に大いに期待しています。市民に正しい判断が下せるか、裁判官より良い判断ができるか、といった視点で考えていると答えは堂々巡り。だって、"正しい"とか、"良い"というのは実際のところ誰も分らない。
人間は誰しも間違いを犯す。裁判だって同じ。しかし、たとえ神のみぞ知る真実と違った判断をしたとしても、イヤでも強制的に実現させられてしまうのが裁判というもの。となれば、間違っても強制されてしまう判断を、ひと握りの法律エリートに委ねてはならないから、必然的に市民が裁判に参加すべきだと理屈づけられる。自分たちの権利義務を最終的に決めるのは自分たちにしかできない。しかも、このドラマ、サマヨイザクラでもお分かりのとおり、市民の叡智は素晴らしく、決して侮れない。それぞれ生きてきた人生をバックに存分に議論すればいいし、十分やれる。
ただ思うのは、「裁く」って言う言葉は辞めた方がいいですね。ボクだって、"あなたは人を裁けますか?"って言われたら尻込みしてしまう。裁判は決して神の裁きじゃない。証拠に基づき自己の良心に従って「判断」し、争いを「解決」することだから。。

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