奇跡の動物園2010
〜旭山動物園物語〜

◇あらすじ[2/2]

数日後、坂内は市議会に来ていた。エゾジカの新施設の構想を、議員たちに説明し、費用を捻出してもらうためだ。議員の中には「北海道の森を食いつくす問題のある動物であり、害獣であるエゾジカを良く見せる施設を作っていいのか」と反対意見をだす者もいた。さらには「そもそも、新しい施設って必要なの?」との意見も。議論は紛糾するが、坂内は「いま地球規模での環境破壊が進んでいます。自然の秩序を壊してしまったのは人間ですがそれを取り戻す行動が取れるのも人間だけ。それを、この新施設"エゾジカの森"で伝えていきたいんです。どうか、予算を出して下さい」と熱弁をふるい、深々と頭を下げる。そんな坂内を渋い表情で見つめる商工会の新田は、「地球を守ろうとか森を守ろうとか、言ってることが正しいのは分かる。でも、でっかい話すぎて、遠いんだよな」と言う。「こんな時代だから、みんな自分が生きるのに必死だからさ」との新田の言葉は妙に説得力があり、坂内は今自分がなすべきことは何なのか、考え込んでしまう。「自分がこだわっていることって本当に意味があるんだろうか?」そう思い悩む坂内に、牧原は言う。「ごちゃごちゃ言っているヒマがあったら、ジャングルでも何でも行って見てくりゃいいじゃないか」。その言葉に背中を押された気がした坂内は、休暇を申請するため園長の小野の所に行く。実は、マレーシアのボルネオで獣医をしている友人・長谷川勝人(吉田栄作)から坂内にボルネオに赴任してこないかという内容の葉書が来ていたのだった。ボルネオと聞いた園長は「中川も一緒に連れて行き、2人でじっくり話してこい」との条件つきで休暇願いを受理する。

中川とともにボルネオに旅立った坂内は、さっそくオランウータンリハビリセンターで働く長谷川を訪ねる。
坂内と中川は長谷川とともに熱帯雨林の川の中を疾走するボートに乗り込む。圧倒的な自然の力強さ、ダイナミックさに興奮し、いつしか笑顔になる2人。そんな2人を長谷川は一面ヤシの木が広がる広大なプランテーションへと案内し「アブラヤシの農園を作るために次々と森が伐採されて行き、野生動物たちはすみかを奪われ追いやられた。昔はあたり一面、熱帯雨林で深い森だったんだ」と過酷な現実を話して聞かせる。驚く2人に長谷川はさらに「人間の都合で、川の両側や小さくいくつもに別れてしまった森と森をつないで、動物たちが自由に移動できる道を復活させたい」と自身の夢を語り、坂内に「動物園で野生にこだわってきたお前自身を試すチャンスだ、お前の力を借りたい。どうだ、こっちに来ないか」と真剣な目で誘いをかける。そんな長谷川の言葉に坂内は「ここに来たおかげで、俺のやるべきことがはっきり分かった。早く旭山に帰り、ここで見たものを早くお客さんに伝えたい」と決心を伝えるのだった。中川も、ボルネオの大自然や本物の野生に感動しながらも早く動物園に帰って仕事をしたいと願っている自分に気づき、笑みを浮かべる。

旭山での瑛里は相変わらず誰とも心を開かない日々が続いていた。優しく話しかける佐和子に対しても「うざいよ」と冷たい言葉を投げつけるだけ。一方、「あざらし館」担当の中川は、アザラシの新たな展示方法を思いつく。毎年流氷に乗って北海道に来るアザラシの生態を、凍らせたプールで表現しようというのだ。「このまま温暖化が進んで流氷がなくなったら、アザラシはどうなってしまうのか。そんなことも考えてもらいたい」との思いも込められていた。坂内も「面白いな!」と大賛成。しかし、プールを凍らせることは至難の業だ。2人の挑戦の日々が始まり、飼育員たちも総出で手伝った結果、見事に成功したかに思えたが、ある致命的な欠点が発覚し、一同はがっくりと肩を落とす。そこへ瑛里がやってきて―。

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