奇跡の動物園2010
〜旭山動物園物語〜
◇あらすじ[1/2]
北海道旭川市にある最北の動物園、旭山動物園。新しい展示施設「オオカミの森」も評判をよび、連日大勢の来園者の歓声が響きわたっていた。
ある日、坂内(山口智充)は、世界遺産に指定された貴重な動植物の宝庫である知床に来ていた。雄大な自然の風景に、しばし言葉を失う坂内。そこへ銃声とともに「あぶない!」との声がかかる。知床では植生を回復するため、増えすぎた野生のエゾジカを銃で駆除する試みがなされていたのだ。よく見ると、金網をめぐらせたイチイの木の網目のすき間から樹皮が巧みにかじり取られている。「シカの食害です。金網で守ってもこのありさまで、エゾキスゲやエゾノシシドウの群落までがそのために姿を消しているんですよ」との説明に納得する坂内だが、弾がそれ、シカに命中しないとどこかほっとするのも事実だった。そんな坂内の様子に、猟師は「生きるために必死で食べているだけのシカを撃つのはかわいそうな気もする。けれど、これだけは確実に言える。この森は、いつか消えてしまう。私たちがこのまま何もしなければ確実に」という言葉に坂内は「…僕たちにできることって何なんでしょうね」とポツリとつぶやく。自らに問いかけるように―。そして、次の大型展示は、エゾジカでいこうとひそかに心に決める。
そんな折、旭山動物園に本州からアミメキリンがやってくることになり、佐和子(戸田恵梨香)はじめ飼育係たちは到着を待ちわびていた。二泊三日の旅を経て、コンテナを運転してきたのは動物専門業者の茅野。そして、なぜか娘の瑛里(水沢エレナ)も助手席に同乗していた。瑛里は矢部(利重剛)のめいだが、派手な装い、濃い目の化粧、人と会話もせずに携帯電話をもてあそび続けており、動物にも旭山にも全く無関心な様子。そんな娘を茅野は、キリンとともに旭山に託し、帰途についてしまう。
同じころ、「あざらし館」の責任者に任命された中川(小出恵介)は人気施設にさらなる展示の工夫をしようと張り切っていた。そして、水辺でえさをやっている時、アザラシがジャンプしてそのえさに食いつくのを見た中川は、もっとえさを高く掲げてみると、さらに高いジャンプをすることに感動し、「あざらしのジャンプ」と題した新しい展示方法を考えつく。空中につられたえさをめがけて高いジャンプを見せるアザラシに観客たちは大喜び。連日大好評を博すが、「アザラシって自然ではジャンプしてエサ食べるんだ」「すごいね〜」という親子連れの無邪気な会話を耳にした坂内は、心のうちにひっかかりを覚えはじめる。そして、そのあざらしジャンプが好評につき午前午後の二回行われることが決まった時、キリン担当の佐々木(荒川良々)がポツリとつぶやく。「でもあれって微妙なとこあるよな」と。そこへ坂内の一言が響く。「本当にいいのかな」。思わず坂内の方へ向き直る一同。「俺も同じことを考えてた。あのジャンプは、本当にアザラシの行動をお客さんに見てもらってると言えるんだろうか、と。野生ではアザラシが水中からジャンプして魚をキャッチすることはないだろう? それを考えたら、どうしてもショーのように見えてしまう」。その言葉に中川は激高する。議論は白熱するが、なかなか答えはまとまらない。最後に坂内は「アザラシのジャンプは中止すべきと思う」と結論を下す。「野生にない行動でお客さんに人気が出ても意味がない」と理由を説明する坂内に、納得できない中川は食って掛かる。「野生、野生ってえらそうに言うけど、何なんですか野生って。俺ら誰一人、野生の中でなんて暮らしてない。坂内さんだってそうでしょ、南極行ったことあるんですか、ジャングル見たことあるんですか、本物の野生なんて知らないでしょ!」そしてさらにとどめをさす。「それで野生ではこうだなんて言われても納得できませんよ!」。その一言に衝撃を受ける坂内。たしかに、自分は、知識の上での野生しか知らない、ここにいる動物たちが生きている場所に行ったことすらない、と。なんとなく気まずい坂内と中川。そんな2人を、園長の小野(津川雅彦)と牧原(伊東四朗)は心なしか心配そうに見守る。
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