山田太一ドラマスペシャル
『星ひとつの夜』
- ものがたり -
そして、廣治はもう一度大樹のマンションを訪ねた。今度は部屋に招き入れられ、少しの酒もご馳走になった。自分は決して金持ちではないという大樹だが、その部屋は、一人暮らしにしては広すぎる、全く生活感のない部屋で二人はぎこちない会話を交わし始める。
廣治と大樹。二人の間には、相手のことは気にかかるが自分のことは詮索されたくないという空気が漂っていた…。
大樹と知り合ってから、自分の心に微妙な変化を感じ始めていた廣治の前に、今度は大樹の恋人だという女性・宮下奈津(国仲涼子)が現れた。奈津は、大樹からのお礼の金(今度は1割分だけ)を廣治に渡しにきた。そして、自分は未だに大樹のマンションに入れてもらえないことの理由を問いただしたところ、部屋は海外に行った知り合いの留守番を頼まれているので、女は連れ込めないと言われたことを話した。
それからしばらくして、再び大樹の部屋を訪れた廣治は、奈津に嘘をついていることを指摘。大樹に、どこか普通でないものを察した廣治は、何か自分に助けを求めているのではないかと切り出した。すると大樹は、意を決したように隣室にある仕事部屋へと廣治を案内した。そこには数台のモニターと端末が。大樹は、デイ・トレーダーとして毎日モニターを睨み、数十億もの金を動かしていたのだ…。
自分の金に群がる人間への嫌悪と恐怖から自分をさらけ出すことを恐れ、人との交流を避けている日々。それが大樹の素性だった。
自らの秘密を廣治に打ち明け、次第に心を開いていく大樹。しかし廣治には大樹に知られたくない秘密があった…。
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