山田太一ドラマスペシャル
『星ひとつの夜』
- ものがたり -

あるコンサートホール。コンサート終了後の客席を数名の清掃員たちが黙々と清掃している。野々山廣治(渡辺謙)は担当エリアのひとつの椅子を清掃中、男物のコートの忘れ物を発見。忘れ主の手がかりを求めて探ったポケットの中にダイレクトメールとむき出しのまま突っ込まれた50万もの大金を見つけた。とその時、同僚の池尾憲一(笹野高史)が背後から声をかけてきた。もちろんこのまま自分の懐に入れるつもりなど毛頭なかったが、一瞬ドキリとする廣治。
そして仕事を終えた廣治は、この大金を持ち主に返すため、ダイレクトメールの住所へと向かった。コートの持ち主は、岩崎大樹(玉木宏)。豪華なマンションに住む大金の落とし主は廣治が想像していたよりはるかに若い青年だった。そして、コートを届けた廣治に、お礼だと約半分、つまり20万円以上の札束をこともなげに差し出してきた。そんなことは全く予想していなかった廣治は、金持ちの息子かなにか知らないがバカにするなと礼金を拒否し、その場を立ち去った。
翌日、大樹が廣治を訪ねてコンサートホールにやってきた。
昨晩の失礼を詫び、そしてお礼の金をいらないと断った廣治に対して"オーラのようなものを感じる"と切り出す大樹。廣治は戸惑いを感じながらも、大樹を振り切った。
数日後、廣治は内藤彰介(井川比佐志)の元を訪れた。実は廣治は3ケ月前に刑務所から仮出所したばかりで、内藤は廣治の保護司を務めていた。他人との関わりを避け、孤独に生きる廣治がこの年で清掃員として働く自分に興味を持つ大樹の話をすると、内藤も妻・文子(赤座美代子)も若い人とはつきあった方がいいと言うのだった。

[次へ]

0.星ひとつの夜TOP

(C)フジテレビジョン