拝啓、父上様
-トピックス-

『拝啓、父上様』のエンディングに登場するモノクロスティール写真は、役者や風景の一瞬を鋭く、そして温かく表現しています。

実は倉本聰先生の脚本を読むうちに、ユーモアたっぷりでコミカルな会話を笑った後に、ふと、人情や、心意気…という、今や日本人が失いかけている「たいせつなこと」が、じいんと胸に残り、家(料亭の建築)の変化と共に市井の人々の精神的な「時代の流れ」も描かれているように感じました。そうした間合いのような情感は、画像上では一旦電子信号に翻訳されるデジタルカメラでは省略されてしまう部分のような気がします。デジタル映像も銀塩写真も絵としては同じかもしれませんが、風情や響きのようなものが違うように思いませんか?フィルムは雑多な情報も潜像として取り込んでしまうのです。

アンセル・アダムスという有名な写真家の言葉に「ネガはスコア(楽譜)、プリンティング(引き延ばし)は演奏」という表現がありますが、まさしく撮った時に感じたままに、プリントすることもできます。例えば一平(二宮和也さん)の眼の動きが素敵だと思ったので、眼にポイントがくるように焼くとか、夢子さん(八千草薫さん)はほわっと温かい感じをだすように、また竜次さん(梅宮辰夫さん)はややハードボイルドにコントラストを高く暗めに…など、キャラクターをイメージしてプリントしています。銀塩写真は、カメラを変えたり、フィルムや現像の組み合わせ、プリントの工夫で、人間の気持ちにより近い写真を仕上げることができます。

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