不毛地帯
- 第十八話 -
[1/3]

石油開発に乗り出した近畿商事は、アメリカの独立系石油開発会社オリオン・オイル社と組んでイランのサルベスタン鉱区を落札した。日本石油公社の支援を得た近畿商事は、東京商事からも5%の出資を受け、石油の掘削工事を開始した。

落札から3年8ヵ月後、副社長となった壹岐正(唐沢寿明)は、アメリカ近畿商事時代の部下・塙四郎(袴田吉彦)を呼び寄せて秘書にする。人事、総務、業務、海外事業の四部門を掌握した壹岐は、事実上、近畿商事の経営全般を指揮する権限を有するようになっていた。一方、石油部長だった兵頭信一良(竹野内豊)は、石油、ガスなどを統括するエネルギー部門の担当常務に昇進していた。

サルベスタンではすでに3本の井戸を掘っていたが、石油は一滴も出なかった。現在、四号井<よんごうせい>の掘削を進めているものの、これまでに合計50億円もの掘削費が泡と消えていた。

その矢先、四号井が深さ4750フィートで逸泥を起こし、いつ暴噴するかわからない危険な状態に陥っているとの連絡が入る。逸泥とは、坑井内の循環泥水が地層中の空洞や亀裂、浸透性の高い地層などによって失われる現象をいい、坑壁の崩壊や掘管の噴出といった重大なトラブルを引き起こす。ただちに現地に向かった兵頭は、石油があると思われる深度5000〜8000フィートまで掘り進める方法を模索した。だが、これ以上掘るのは不可能だという現場責任者の判断から、兵頭も四号井の廃坑を決断するほかはなかった。

四号井の廃坑を受け、日本石油公社の山下総裁(矢島健一)は近畿商事に対する支援の打ち切りを決定する。壹岐は、四号井で良好な貯留層の存在が認められたことから、社長の大門一三(原田芳雄)に五号井の掘削を願い出た。しかし大門は、公社が手を引いた以上資金繰りができないとして、サルベスタンから撤退すると言い出す。壹岐は、かつての大門なら五号井を掘るといったはずだ、と返した。その言葉に激怒した大門は、自分の正当性ばかり主張して現実から目をそらすな、と怒鳴った。

[次へ]

もどる
0.不毛地帯 TOP

(C)フジテレビジョン