不毛地帯
- 第十六話 -
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近畿商事への圧力はさらに強まっていった。シンジケート・ローン認可の保留、近畿商事が輸入している豚肉に対する関税法違反の疑い、マニラの肥料工場に対する許可の取り消しなど、関係省庁がさまざまな形で近畿商事にプレッシャーをかけてきたのだ。さらに、壹岐がソ連と密接な関係にあるとする怪文書まで出回っていた。

大門のもとに最後の挨拶にやってきた里井は、近畿商事に対する一連の動きは壹岐の暴走が招いた結果だと言い放つ。そして里井は、いまに壹岐が大門を追い落とすことになる、と忠告し、近畿商事を去っていく。

壹岐は、京都に向かった。韓国・光星物産の会長を務める李錫源(榎木孝明)から、京都にいるから会えないかと電話があったのだ。
壹岐は、李に会う前に、秋津千里(小雪)の兄で、比叡山で修業をしている清輝(佐々木蔵之介)を訪ねる。その静かな雰囲気に、久しぶりに心の安らぎを感じた壹岐は、このような世界で生きることができたらと思うが、自分はこれからも汚れきった世界で生きて行くしかない、と清輝に言った。清輝は、そんな壹岐に、『世間の法に染まらざること、蓮華の水にあるが如し』という法華経の教えを話す。「蓮が、泥沼の中にあっても美しい花を咲かせるように、人は汚れた俗世間を生きていても、それに染まらず、清廉な生き方を貫くことができる、という意味です」。清輝は、そう壹岐に告げた。

その夜、壹岐は、李と食事を共にする。壹岐が、国際入札の件でバッシングを受けていることを知る李は、ある情報を壹岐に伝えた。それは、イラン国王に最も影響力を持つと思われる、ひとりの医師のことだった。李は、駐米大使をしているときに、イラン国王の側に、影のようにぴったりとついていたその男を見たことがあるのだという。しかもその男は、重要な席には必ず同席するのに、一般的なパーティーの席には決して顔を出さないというのだ。

李と別れた壹岐は、千里の家を訪ねた。そこで壹岐は、清輝に会ってきたことを伝えると、千里の仕事が落ち着いたら、直子(多部未華子)の家族と一緒に食事をしよう、と彼女に告げた。

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