不毛地帯
- 第十二話 -
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八束は、調査団のラディを連れて販売店を訪れた。だが、見学を終えたラディは、突然、販売店以外の場所に行きたいと言いだし、八束に、中古車販売店や実際に千代田自動車の車を使っているタクシー会社を案内させる。千代田自動車の車は、どこに行っても不評だった。八束は、それを隠すために必死で嘘の内容をラディに通訳していた。だが、実はラディは、神戸生まれの神戸育ちで、八束がウソを言っていることなど最初からわかっていた。

秋津千里(小雪)は、壹岐の自宅に電話をする。壹岐と話がしたかったのだ。しかし壹岐はまだ帰宅しておらず、電話に出たのはメイドのハル江(吉行和子)だった。壹岐が仕事で忙しくしていることを知った千里は、名前も名乗らずに電話を切った。
同じ日、千里は、比叡山を訪れ、久しぶりに兄の清輝(佐々木蔵之介)に会った。千里は何も言わなかったが、そのようすから何か相談事があるではないかと察した清輝は、筆をとって「共生」<ともいき>という言葉を書いた。仏教の根本は、自分のためだけの生き方ではなく、自分の生き方が他者に感銘を与え、幸せをもたらすことができるという、自他共に生きる共生の心にある、という清輝。「自分の執着、執念だけで動けば、自分を縛すると同時に相手をも縛することになり、共生の世界を失い、修羅の世界に没することになる」。清輝の言葉が千里の心に響いた。

そんな折、里井は、自宅で再び発作を起こす。妻の勝枝(江波杏子)に付き添われて病院を訪れる里井。診断をした医師は、このまま入院するよう里井に勧めた。里井は、会社を休むことには応じたものの、フォーク調査団との会合が終わるまでは社の人間といつでも連絡が取れるよう、自宅療養にしてほしいと懇願する。
医師の了解を得た里井は、車イスに乗ったまま病院を後にした。だが、その姿を、たまたまある入院患者の見舞いでその病院を訪れていた東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)に見られていたことには気づかなかった。

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