不毛地帯
- 第六話 -
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ようやく仕事がひと段落ついた壹岐は、シベリア帰還者の支援を続けている谷川正治(橋爪功)のもとを訪れ、ひと時の安らぎを得る。その翌日、壹岐は、京都に向かった。結核を患いながら比叡山で修業を続けている兄・清輝(佐々木蔵之介)に下山の説得をしてほしい、という秋津千里(小雪)との約束を果たすためだった。
千里の案内で清輝の庵を訪れた壹岐は、彼に下山を勧めた。しかし清輝は、戦争中、自分を信じて死んでいった兵たちに代わり、生き残った自分がひとつの完成の道を極めなければならないという思いで天台宗の教えに入った、と下山を拒否する。
「何よりも、荒行のひとつひとつを修めることによって、多少なりとも心の平静が得られるのです。ルソン島で死んでいった部下たちに、一歩、一歩、近づけるような気がして…」。静かにそう話す清輝に、壹岐は何も返すことができなかった。
比叡山を後にして秋津家に立ち寄った壹岐は、千里の叔父・紀次(曽我廼家八十吉)に清輝のことを報告した。するとそこに、丹阿弥流の能楽師・丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)がやってくる。千里と泰夫は7年ほど前に見合いをしたが、当時はお互いに打ち込むものがあるという理由で結婚には至らなかったのだという。紀次は、千里に泰夫との結婚を勧めていた。
壹岐は、千里とともに、以前も案内された、町を一望できる場所を訪れた。この場所から見る夕日は美しい、と壹岐に話す千里。そこで千里は、「結婚を考えてみようかしら」とふいに言い出した。
あくる日、出社した壹岐は、大門を訪ねた。そこで壹岐は、戦標船の件を持ち出し、会社の体質に問題があるのか、自分の出世が感情的な対立を生んだのかわからないが、常務でない方が仕事ができると言い出す。戦略を立てても人事のこだわりでそれが迅速に実行できないのならば、情勢分析に当たるのは役職抜きか、副社長の権限を超えるものを持たなければならない、というのだ。それは、壹岐が事実上、近畿商事のナンバー2になることを意味していた。
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