お台場の大海原を遊覧してからはや半年。お正月気分もすっかり抜け、寒に入ってからの東京はひとしお寒さが厳しくなってきた。初冬のパリの街路を思わせる景色も少しずつ落ち着き始め、穏やかな季節が僕のココロの危機感を遠ざけていった…。
半年前、留学先での経験を生かしたA子は村山デザイン事務所に働き始め、僕は順調に本間出版社の仕事をこなしていた。本間社長は相変わらず資金繰りに追われ、現金払いから手形払いに変更をお願いする電話で1日が終わる毎日を過ごしていた。
この時期A子とは週末に都内を中心とした、無難で洒落たアーバンデートが続いていた。
この頃はまだよかった。
1ヶ月たち、2ヶ月たち、徐々にA子は残業や会社の胡散臭い連中との飲み会が多くなり、次第にメールを送っても、電話をしても「ごめんね。今日は忙しいからまたね…」とケンモホロロに断られる毎日が続いた。いつの間にか僕らは2週間に一度ぐらいしか会わなくなっていった。
彼女の意思を尊重し、応援してあげるのが恋人としての優しさなんだと思っていたが、ある日僕をして最大の危機となる未曾有の大事件が起こった。
A子と大喧嘩をしてしまったのだ。
A子は僕に内緒で合コンに行ってしまったのだった…。僕は初めてA子を精一杯叱責した。
「ひどいぜ!A子!あんまりだぜ」
「なによ!私だって疲れてるのよ!」
「それじゃあ、せつないぜ!」
言葉の往復ビンタが交互に行き交い、お互いのハートが犇き合った。
胡散臭い男達と山手線ゲームで盛り上がっている場面を想像すると耐えようのないジェラシーが込み上げ、彼女が急に遠くの方へ行ってしまった気がした。僕の heart と Head がガチンコしてリンパ管を素通りし、ドローとなっていった。
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