#114 スタッフからのメッセージ

■ダチョウというと皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか? ほとんどの方は「大きい鳥」とか「大草原で走っていそう」など、野生的なイメージがあると思います。まさかフランスで、それもパリの近郊でダチョウがいるとは夢にも思わないですよね。私も取材前はそう思っていました。ところが、そのダチョウがいるという牧場へ案内されるとまさに「広大」と言うに相応しい一面の麦畑を越えた先にいるではありませんか! ダチョウ、ダチョウ、ダチョウ……。そこで、牧場を経営しているボントゥールさんに中を案内していただいて、早速ダチョウと対面することになりました。よく見ると、大きな潤んだ瞳に落ち着きのない首の動きが妙に可愛らしく、想像より人懐っこい印象を受けました。しかし、調子に乗って触ろうとするとご主人に止められ、「ダチョウはいつまでも野生の性質だから危ないよ」と言われました。お話を聞くと、なんとダチョウの蹴る力は400キロあるのだとか。そんな力で蹴られたら……と考えただけで怖くなってしまいました。
そんなダチョウに囲まれて生活しているボントゥールさん。もともとは穀物を作っている農家をやっていたのですが12年前に読んだ雑誌にアフリカの記事が載っていたのがキッカケでダチョウ飼育を始めたのだといいます。「フランスで誰もやっていないダチョウの飼育をしてみよう!」と。最初は周りの人々に猛反対されたそうですが、ボントゥールさんは信念を貫き、ダチョウを育て続けました。そして今ではフランス中のレストランやお肉屋さんにダチョウの肉を卸しているのです。
ここの農場ではダチョウを卵から大切に育てているのですが、丁度取材に伺った時に卵からヒナが孵る瞬間に立ち会うことができました。真っ暗にした部屋の中で卵にライトを当て、クチバシの影が見えたらもう生まれる合図。ダチョウの卵の殻は堅いので、ここでは人間が卵にヒビを入れて出るのを少し手伝ってやるのだそうです。すると中から震えながらヒナが顔を覗かせ、一生懸命卵から出ようとするのです。そのまま半日くらいで完全に卵から出て立つようになるのだそうです。まさに生命の神秘!
ボントゥールさんにダチョウを育てる中で一番大変なことを聞くと、「きちんと真っ直ぐに育つこと」とおっしゃいました。ダチョウはとても成長が早い生き物で、特に骨は生まれてから2、3ヶ月の間でぐんぐん伸びます。筋肉はその成長に追いつけず、ヘタをすると関節が曲がってしまい、死んでしまうのだそうです。だから、1羽1羽大切に大人になるまで育てるんだ、とボントゥールさんは教えてくれました。彼のダチョウに対する愛情はこれからも、変わることはないのだと思います。

[0]もどる

(C)フジテレビジョン