#111 スタッフからのメッセージ

■「すぐり」という実は日本では長野や北海道などの山間に多く自生しているそうですが、フランスではあらゆる所で見かけることができます。市場や八百屋さんでも色鮮やかなすぐりの実が箱詰めになって売られていたりしていました。その中で、取材したバール・ル・デュックのすぐりは土地に石灰分を含んでいるので実がしっかりしているとのこと。それが煮崩れすることなく、実の形が残ったままジャムにできるので、この地で「すぐりのジャム」が作られ始めたそうです。その歴史は番組でも紹介したように遡ること1339年。あまり知られてはいませんが、フランス最古のジャムなのです。その歴史の裏には地元の主婦たちの努力があり、町の人々の協力があってこそ今まで残ってきたという経緯があります。というのも、一時期は副業の主婦やすぐりの生産農家が少なくなり、消滅の危機にあったのです。それが今では何とか町の人々の努力で回復の傾向にあるとのこと。
何といっても大変なのは小さなすぐりの実から一粒ずつ種を取り出していく作業。手馴れた主婦で1時間、350グラムできるかできないか……。しかも、粒の小さいもののほうが香りが高く、ジャム向きというのですから、かなりの手間がかかるに違いありません。ガチョウの羽の先を切ったオリジナルの道具で横から入れて抉り取るという感じで取り除いていきます。そこで、私もチャレンジさせていただきました。……よくあるパターンですが、見ていると簡単そうなのにこれが難しい!「一回すぐりの実に羽の先を入れたら1回で全部の種を取り出さねばならないのよ。」と教えられ、やってはみたものの、小さな粒に20個も入っている更に小さな種を取り出すことはできず……。つくづく大変さを実感したのでした。それなら1瓶15ユーロ(約2000円)も頷けるな……と。まさにフランスのキャビアの名に相応しいものだと思いました。
さて、ここのすぐりジャムには3種類のジャムがあります。それは赤、白、ローズの3種類。それぞれ味も微妙に違って、赤は甘く、白はきりっとした甘さ、そしてローズはその中間といった感じで、まさにワインと同じ。ジャムにしてもその味の違いが楽しめます。
取材時は残念ながら小雨が降ってしましましたが、地元の子供達も一緒に一生懸命すぐりを摘んでくれて、種取りも一生懸命にやってくれたのが印象的でした。この子達が将来このバール・ル・デュックのすぐりジャムを支えていくのかもしれないなぁと思いました。 (子供達の方がすぐりの種取りがとてもうまかった……流石です。)

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(C)フジテレビジョン