#105 スタッフからのメッセージ
■日本で「グラタン」というと、どんなものを想像するでしょうか? 恐らく、小麦粉とバター、生クリームなどを練ってホワイトソースを作り、マカロニを入れて最後にチーズを乗せ、オーブンで焼いたもの。これが、基本的なグラタンのイメージだと思います。そして、そのグラタンはフランスで生まれたもの。グラタンで有名な地方に行けば、きっと、そんな料理が存在する。取材前、実は、そんな事を考えていました。
向かった場所は、アルプス山脈がすぐそこに見えるグルノーブル。アルプス産の牛乳と濃い生クリーム、近郊で作られる硬質チーズにも恵まれて、「グラタンの国」などとも呼ばれている地方です。ところが、驚く事に、この地方に、あのグラタンのイメージでもあるマカロニグラタンは、ほとんど存在していなかったのです。残念ながら、その理由などは分かりませんでしたが、確かに、リヨン周辺の一部の地域でマカロニグラタンは食べられているものの、フランス全土を考えても、マカロニを入れたグラタンは存在していなかったのです。そもそもグラタンとは、鍋にこびりついた食べ物の部分をいう言葉であり、これが転じて、19世紀以降、料理の表面に軽い焦げ目をつける調理方法と、できあがった料理そのものを「グラタン」と呼ぶようになったのだとか。当然、マカロニが入っていなくても、グラタンはグラタンなのです。「じゃあ、誰が何処でグラタンにマカロニを入れたんだ~」「日本で考えるグラタンのイメージはフランスのものではなかったのか~」と聞きたい所だったのですが、そこまで分からなかったのが、この取材のちょっと残念なところでした。どなたかご存知の方がいらっしゃったら教えてください。
さて、今回取材した「グラタン・ドーフィノワ」は、メイン料理の付け合わせとして、そしてお酒を飲むときなどの軽い食事として、この地方で人気の料理です。作り方は、非常に簡単で、ホワイトソースを作る手間も無く、ジャガイモをスライスし、ニンニクや塩・コショウ、ナツメグで味付けして、後は、たっぷりの生クリームと牛乳を加えてオーブンで焼くだけで出来上がります。これなら、家庭でも簡単に作れるだろうと思ったら、言うまでも無く、この地方の家庭でごく日常的に食卓に登場するメニューの一つなのだそうです。チーズを乗せず、ホワイトソースも入れないので、濃厚な味と言うよりも、むしろサラッとした味わいで、生クリームと牛乳に浸されたジャガイモの甘さが程よく口の中に広がってきます。この地方には、このようなグラタンの種類が数あるそうなので、他にも色々なグラタンを味わって見たい。そんな気にさせられました。
ちなみに、グラタン・ドーフィノワのドーフィヌという言葉は、グルノーブル近郊の昔の名称(今でも、この周辺をドーフィヌ地方と呼ぶ人がいるそうです)で、もともとはフランス王家直系の貴族の名前。この地方はフランス王の息子が統治していた場所だそうで、19世紀に、この料理は、ドルフィヌ地方の国料理だったという話もあります。今でこそ、料理の付け合わせと言うイメージが強いようですが、その付け合わせにも、しっかりとした歴史があるものなのですね。
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