#102 スタッフからのメッセージ
■この番組の取材を通して、たくさんのフランス人に会って来ましたが、今回訪れた農家の人達は、その中でも特に明るく陽気で、気さくで、非常に楽しい仕事となりました。
というのも、今まで会って来たフランス人は、物静かで落ち着いていて、ちょっと理屈をこねながらも淡々と話をする人が多く、いわゆる、これまで自分が勝手にフランス人に抱いていたイメージそのまま。親切で親しみやすい中にも、どこか紳士的に人に接しようという部分があったように思えます。ところが、今回、この農家に初めて伺ったとき、まず、上半身裸で現れたのにビックリ。大きな声で元気よく話し、取材前の打ち合わせでも、「大丈夫、何でも撮影に協力するから心配するな」「家族を集めたいんだったら何人でも集めてやるぞ」と、威勢良く取材OKの返事をくれたのです。この番組の前身「あつあつイタリアーナ」から取材をしている私は、思わず、久しぶりに陽気なイタリア系の人に会った気分にもさせられました。
さて、どうして、こんなに楽しい仕事になったのか? 改めて振り返ってみると、彼ら農家の家族が、自分達の生活を思う存分楽しんでいる姿を、素直にそのまま私達に見せてくれたからだと思います。彼らの生活は、毎朝3時に起きて朝市に出かける支度をし、朝7時にはリヨンの街に出て店を開く。そして昼過ぎまで野菜を売り、午後2時頃帰ってきて昼食をとる。その後、一休みして畑に出て野菜を収穫し、すぐさま採れた野菜を洗い、翌日の朝市の準備をする。これを週5日間繰り返す忙しい毎日を送っています。この時期、畑で実っている野菜は20種類以上。その野菜を育てるだけでも大変だと思うのに、大人達は、30度近い日差しを浴びたビニールハウスの中に上半身裸で入り、冗談を言いながら、和気藹々と野菜の収穫。その横では、畑の散水機をシャワー代わりに子供達が泥んこになって水遊び。本当にのどかな風景です。のんびりしているのかと思いきや、収穫したらすぐさま野菜を水洗いする事だけは忘れません。時には鼻歌が聞こえ、時には大きな笑い声が聞こえる、親兄弟、入り婿、入り嫁、息子に娘が入り混じって20人を超える大家族の生活は、見ているだけで楽しくなってきます。これなら、上半身裸で仕事をする生活を、人に見せたって恥ずかしい訳がない。自分達の生活に自信と誇りを持っているんだ。そんな気にもさせられました。思えば、この家族の生活サイクルの話をしていた時、「それじゃあ、いつも何時ごろに寝るんですか?」「何時間ぐらい寝ているんですか?」と質問したら「そんなものは決まってない。眠くなったら寝るだけだ」という答えが返ってきました。そう、そんな肩肘張らない、思うままの生活をしているからこそ、一見大変そうな生活も、こんなに楽しく過ごせるのかもしれません。撮影が終わり、撮影機材を片付けていると、「ワインを飲もう」と誘われました。それは、この家の畑で育った自慢の葡萄で作られた「ボジョレーワイン」。彼らは食事のときにも美味しそうに飲んでいましたが、撮影も終わって、もう一仕事終えてのワインの味。その味は、また格別だったに違いありません。
ちなみに、今回紹介した料理「ジャルディニエール」には「庭のもの」という意味があるそうです。この家族にとっての庭とは、いうまでもなく畑の事。畑で採れた野菜満載の料理の秘訣は水を使わず、素材の味をフルに生かすこと。本来は、肉料理などの付け合わせとして食べる事が多いのだそうですが、この家族の場合、夕食のメイン料理として食べていました。きっと昼食で、たらふくお肉を食べていたのではないでしょうか? そうでなければ、あんなに元気でいられるはずありませんからね。
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