#96 スタッフからのメッセージ
■山羊のチーズというと、一般的にはかなりクセのあるブルーチーズのイメージですが、このペラルドン・チーズは直径約6センチ厚さ約2センチで、丸いお餅を連想させる、白くてクセの少ないチーズです。『ペラルドン』の名前の由来はラングドック地方の方言で、比較的小さな山羊(シェーブル)のことをそう呼ぶところから名前がついたと言われています。熟成の期間は11日以上。アルピーヌ(alpinne)という、中央高地からピレネー山脈にかけて生息する山羊の乳を使い、その期間きちんと熟成したチーズでなければペラルドンと名乗ることはできません。
キャンピスという地区にあり、20年前に脱サラしてパリから移り住んだというソヴプランヌさん夫妻の自宅は、「本当にこの道でいいのだろうか?」と不安になりながら、電話線だけを頼りに山道を上がっていかなければならない場所にありました。しかし、着いてからあたりを見回すと、「なんて静かで美しい景色なんだ!」と思わず叫びたくなるような景色のところで、その場所でチーズが作られているということだけで、「美味しいチーズに違いない」と勝手に想像してしまうほど、空気の澄んだ緑多い地区です。
残念だったのはロケの日が雨だったこと。晴れていれば広い緑の中でのびのびと草を食む山羊たちを撮ることができたのですが、その日は山羊舎の中でしか撮影がでなかったのです。搾乳は朝と夕方の1日2回。搾乳専用の部屋のドアをご主人が開けると、餌を食べながら搾乳されることに慣れている山羊たちは、順番に餌のある器の中に首を突っ込んでいき、抜け出さないように首を固定する鍵が「かちゃりかちゃり」と順番に掛けられていくのでした。勝手に首を突っ込んでいく山羊たちを見て、「面白いですね」とご主人に言うと、「入ってくる順番も決まっているんだよ」と教えてくれました。これも好奇心旺盛な(ご主人談)アルピーヌならではなのかもしれません。
サラダに使われていたドレッシングは、奥さんのオリジナルで、醤油を使っていなのには少し驚きました。どんな理由でパリからこの地に移り住み、チーズ作りをすることになったのかという詳しい事情を聞くことはできませんでしたが、20年以上前とのことですから、日本でも脱サラして田舎暮らしをする人が多くいたときのような気もしますから、彼らも同じように都会の暮らしに愛想を尽かしたのかもしれません。山羊と暮らしその恩恵で生計を立てていく二人の美味しいチーズが、この先何年も作られて行く事を願いたいと思います。
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