#87 スタッフからのメッセージ
■フランス語の「Auberge」という言葉を辞書で引くと、「1.小さなホテル、2.地方色豊かなレストラン」と書いてあります。実際、そのほとんどは都市の中心から離れた緑豊かな場所にあり、その土地の風情を残す古い建物を中だけ改築した小さなの宿、もしくは、その土地の食材を使った郷土料理が食べられるレストランとなっています。日本で例えるなら、民宿やペンション、そして地方の食堂という感じ…と言えば、何となくイメージしてもらえるのではないでしょうか。この「Auberge/オーベルジュ」の嬉しいところは、その多くが農場や農園、果樹園などを併設している家族が経営していて、その家で採れた新鮮な食材を使った料理を家庭の味でもてなしてくれる事。食卓には、いつも暖かな家庭の雰囲気が漂い、季節ごとの旬の料理を味わえるので、フランスを旅していて、地方の家庭料理を味わいたいなら、打って付けの場所といって良いかもしれません。 今回取材させて頂いたレストランも、この「Auberge」のひとつ。正確には「Ferme Auberge」と言い、店の周りには牧草地が広がり、豚や鶏、ガチョウ、馬などを飼育しながら、週末だけレストランを開くという家族経営のお店です。週末だけしかレストランを開かないのは、店の主、ボーサンベルジェさんが、平日は農場の仕事をしているため。店の建物自体も、改築すれば充分民宿にするほどの広さがあるのですが、「規模だけ大きくしても、来てくれるお客様に十分な心配りが出来ないから…」という理由で、現在の週末だけのレストランという形を選んだのだそうです。レストランで出されるのは、基本的に、この農場の食材をフル活用した郷土料理のコースメニュー。農場で飼育されている牧畜の肉を使った料理をメインに、その肉で作った自家製のハムやソーセージ、サラミなどを味わい、食後は、ロレーヌ地方のチーズに果物を使ったデザートと、ボーサンベルジェさん自慢の家庭料理で締めくくります。今回紹介した料理「パテ・ロラン」は、勿論、この地方で食べられている郷土料理のひとつ。一般的に「パテ」というと、肉などのミンチを香辛料などと混ぜ、そのまま型に入れてオーブンで焼き上げますが、この「パテ・ロラン」は、そのミンチをタルト生地とパイ生地で包んでから焼き上げるのが特徴といえます。こうする事で、肉汁や肉の旨味を逃すことなく、暖かい前菜として食べる事が出来るのです。 普段は、こうした農場の料理を楽しみに、家族や友人との食事会で利用する客が多いそうですが、時には、この場所で結婚式が開かれる事もあるとのこと。そんな町の人たちのために、週末厨房に立って料理を作るボーサンベルジェさんの姿は、本当に楽しそうでした。

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