#86 スタッフからのメッセージ
■シェフであれば、 今までの常識にはとらわれないオリジナルの料理をいつかは完成させようと、 誰もが思っているのではないでしょうか。 しかし、 その反面、 今まで築き上げられた歴史ある料理の伝統も大切にしなければなりません。 そんな思いを抱きながら店の厨房に立ち、 新しいフランス料理、 ヌーベル ・キュイジーヌに取り組んでいるのが、 32歳のシェフ、 フィリップ・ラリュエルさん。 彼は、 今も、 毎日が勉強の日々を送っています。 フィリップさんがこの道の第一歩を踏み出したのは17歳の時でした。 彼は、 フランス料理の聖地であるパリに乗り込み、 2つ星、 3つ星レストランで厳しい修行を積むと、 フレンチの世界で名高いロブションやアラン・デュカスの店で働き、 現在の自分自身の基礎を作り上げたのです。 そして、 既にこの地で父親が開いていたレストランに戻ってきたのが24歳の頃。 そして5年後には父が引退し、 一家の主としてこの店を任されていたのです。 そんなフィリップさんが常々考えていたこと。 それは、 こってりと重たいイメージのあるロレーヌ地方の料理を、 その伝統を活かしながらもシンプルに進化させたいということでした。 そんなある日、 店の裏の山を散歩していると、 ふと気になったのが、 子どもの頃を思い出させてくれる干草の匂い。 この干草の香りを料理に活かす方法はないだろうか? そう考えた彼は、 昔から、 この地方で作られていたハム作りを思い出したといいます。 それは、 肉を干草に包んで作っていたもの。 これを何とか応用すれば料理にも活かす方法を編み出したのです。 素材に選んだのは、 この地方の食材として有名なソートレの地鶏とマンスターのフレッシュチーズ。 あくまでも伝統を大切にしながら新しい料理を作り上げる。 そのこだわりを貫きながら自分の思いを現実にした…それが、 今回紹介した料理だったという訳です。
フィリップさんのレストランがある町は、 ドイツとの国境近くにある山の中。 山と山に挟まれ、 その間に小河が流れる小さな町。 こんな場所のレストランで、 と言ったら失礼かもしれませんが、 シェフの腕を最大限に利用したヌーベル・キュイジーヌが食べられるとは、 恐らく、 店を訪ねたお客も思ってはいなかったと思います。 2m近くもある大きな身体で、 故郷を大切にし、 子どもの頃の懐かしい味わいを大切にするフィリップさんの料理への思い。 そんなことに思いを馳せると、 今度は是非、 取材で慌ただしくというのではなく、 ゆっくりと味わってみたいという気がします。
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