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エコアナ・藤村さおりリポート「江戸前の美味にも生物多様性が!」
エコアナリポート!!

エコアナ・藤村さおりリポート「江戸前の美味にも生物多様性が!」

[2008年4月17日更新分]


“江戸前”と言えば皆さんは何を思い浮かべますか?

私は海苔、穴子、ウナギかな。
その他にもヒラメ、テナガエビ、赤貝、シャコ、ハゼなどが代表選手ですが、そこに北米産の貝が新加入しつつあるというので、「これぞ食の生物多様性問題!」と、取材に出かけました。


朝の築地市場にその貝が出荷されていると聞き、まずは築地へ。一見ハマグリに似ている△形の白い貝。

ありました!味がハマグリに似ていることから以前一部で「白ハマグリ」と呼ばれたこともあるホンビノスガイ。

アサリやハマグリと比べると表面にかなりザラツキがあり、大ぶりで、1㎏あたり600円から700円と、国産のハマグリの三分の一以下の価格で2年ほど前から築地市場で取引されるようになったそうです。

そこで、東京湾で唯一漁獲高があるという千葉県船橋市漁協へ直行! 漁に同行させていただきました。


港から小船に乗って、沖へ3㎞。たった10分でポイントに到着。この船橋三番瀬は、見上げれば羽田空港から飛び立った飛行機が旋回しながらグングン上昇していて、周りには話題の大型ショッピングセンターが。

少し先には東京ディズニーランドも見渡せる場所で行われる漁に、まずは驚きました。私の生活圏とこんなに近い場所に漁場があるとは!ま、言ってみればこれぞ江戸前漁の醍醐味ですね。


漁の最中、漁師の大野さんにお話を伺いました。
ホンビノスガイが東京湾でみられるようになったのは今から10年ほど前。最初は「なんだろう、この貝は?」と得体の知れない貝を漁師さんたちが自分の家に持ち帰っては食べていたと言います。

しかし味は良いし年々カゴに入ってくる量が増えるしで、ならば卸に回せないかという機運となり、貝毒検査のお墨付きを経て販路が確立されたそうです。


ここで気になるのは生物多様性の問題。
そもそも北米・東海岸に生息するホンビノスガイが何故この東京湾で繁殖したのでしょう。貨物船などの船は普通、重心を安定させるために「バラスト水」と呼ばれる海水を船内タンクに入れるのですが、北米で積み込まれたバラスト水にホンビノスガイの稚貝が紛れ込み、それが東京湾に到着した際に吐き出され繁殖したと考えられています。大野さんの話しでは多くの外来魚介類はこうして日本にやって来るそうです。

この船橋三番瀬は、海水と江戸川の水が丁度良い塩梅に混ざり合う河口付近にあたるため、ホンビノスガイにとって住み心地のよいエリアになっているようです。


手前左があさり、右がはまぐり
奥の一番大きいのがホンビノスガイ
“外来種”と聞くとどうも既存の生態系を壊してしまうイメージがありますが、この貝はどうなのでしょう。

東京都内湾漁業環境整備協会によりますと、アサリなど在来種への影響も今のところなく上手く共存しているそうです。しかも、ホンビノスガイは在来種より海水の汚れや酸欠にも強く、水の浄化作用すらあるといいます。

さぁ、漁を始めて10分が経過し、カゴを上げてみると…なんと20個以上ものホンビノスガイが入っているではありませんか。しかもその一つ一つがとても大きく、立派で重量感があり、これでもか!というほどたっぷりとしています。結局この日は30分の漁で50個ものホンビノスガイが獲れ、大漁過ぎて魚篭(びく)が持ち上がらない程の釣果でした。



気になるお味の程は…
ホンビノスガイを「焼きハマ」ならぬ「焼きホン」にして食してみると、ハマグリに似たテイストですがより味が凝縮されて旨みが強く、ガツーンと訴えかけてくる濃厚さ!歯ごたえも、食べ応えもありました。

元々、ホンビノスガイは原産国の北米・東海岸ではクラムチャウダースープなどに用いられるということで広く親しまれている貝のようです。築地でも飲食店経営者など、この貝の味のよさを実感した人は二度三度とまた買って行くということでした。

今後、江戸前の新しい名物になる日が来るのか、引き続き注目していきたいところですが、エコアナとしては、もう一歩踏み込んで生物多様性に関して追加の取材を!

フジテレビの環境問題社内勉強会でも「生物多様性」をテーマにご指導いただいた、環境省にお話を伺いました。

【東京湾のホンビノスガイに関する、環境省野生生物課外来生物対策室のお話】
「北米に生息するホンビノスガイは、今のところ、国内では東京湾以外での生息情報はありません。諸外国では英国で導入され定着しています。在来貝との競合・交雑などの可能性は考えられますが、まだその実態はよくわかっていません。東京湾で獲る分にはよいとしても、国内で養殖などに利用することについては、手放しで推奨できません。利用する際には周りを囲うなど、影響について利用者に考えていただく必要があります。また、バラスト水の管理については、現在検討が行われています」

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