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2008年度 社会貢献トピックス

『第20回 ヤングシナリオ大賞』

[2008年10月1日更新分]

「第20回ヤングシナリオ大賞の選考を終えて」
審査委員長 志牟田 徹 スペシャルコラム


本年のヤングシナリオ大賞は、最終選考の対象となった10編がどれも力ある作品が残ったため、選考のやり甲斐があった、というのが私の印象です。最終選考にあたっては、若手からベテランまで、およそ10人のプロデューサー、ディレクターが参集し、それぞれの作品をしっかり吟味していく形で、評価していきました。

ヤングシナリオ大賞は、もちろん公募ですから、プライズとしての意味は大きく、特に応募される方にしてみれば、この舞台で、華々しい賞を受け取ることが第一義だと思いますが、選ぶ現役のプロデューサー、ディレクター側にしてみれば、これから共に、ある意味、“戦友”として戦っていけるパートナーを探したい!!という意味合いの方がむしろ重要のような気がしています。今回も、その意義を主旨として、私は勿論、各選考委員も各作品に向き合いました。

選考の方向性としては、ヤングシナリオ大賞らしい(?)明るく伸びやかでポップな世界観を持ったものを評価するのは勿論ですが、やはり昨今の“格差社会”やそこから生まれる様々なひずみが浮き彫りになっている時代を反映してか、いわゆる社会派ものといっても過言ではないような意欲作もみられ、そうした「時代性」が選考にも反映された結果となりました。



大賞は、高橋幹子さんの「戦士の資格」。この作品は、現代の若者層が厳しい格差社会の中で、働くということが一体何なのか?ということに関心を向け始めた時代の空気をうまく掬いとった作品で、そこにチャレンジ精神を感じるとともに、その難しいテーマを、構成力でしっかりと持って行けている点がとても評価されえました。

余談ですが、今、小林多喜二の「蟹工船」がベストセラーになっています。昭和のプロレタリア文学の代表作にして、かなり政治色の強い作品である「蟹工船」。その「蟹工船」が、多喜二の苦悩に対して、一見、何の共感も持てないように思える現代の若者達に改めて訴えてかけているという現象に思わず感じてしまう何かが、我々、選ぶ側の脳裏で働いたのかもしれません。

いずれにしても、ドラマとはいえ、テレビメディアを通じて発信されるコンテンツであることは間違いなく、テレビである以上、やはり「時代性」というものから、テレビドラマに関わるクリエイターは目を背けてはならないものだと思います。この意味でも、この作品を大賞として選んだことは、間違っていないと思っております。

佳作としては以下の方々。


「パーフェクトゲーム」の黒岩 勉さんは、たまたまボーリング場という場所にあつまった一見何の関係もない5人の人物たちが繰り広げる奇跡の物語で、クローズドな空間の中で巧みに展開される台詞、構成力には引き込まれる力があります。


「アカッパラ島」の持地佑季子さんは、あの三宅島に帰島をゆるされた人々の群像劇を、一人の男の子の目線からみずみずしく情感豊かに、三宅島の風光明媚さも想像されるようなタッチで見事に描かれています。


「ママと彼女」の西田充春さんは、他界したハチャメチャな母親の霊魂が、主人公の彼女の体に宿るというコメディで、天性のコメディセンスを感じさせられました。このお三方も、大賞の高橋さんに負けず劣らず、素晴らしい筆力をお持ちの方々で、すぐにでも即戦力になれる方々です。

昨今、ドラマが不調・・・などといわれていますが、それを覆していけるだけの力を持ったライターさんを今回、発掘できたと思います。そして、野島伸司さん、坂元裕二さんを始め、多くの綺羅星のごときスター脚本家を生み出してきた「フジテレビヤングシナリオ大賞」ですが、今年もこうした方々に将来名を連ねることのできるであろう可能性を感じる新人ライターさんにスタート地点に立っていただくことができたと思います。

文:志牟田 徹(フジテレビ ドラマ制作センター)

ヤングシナリオ大賞

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