FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

深田 梨沙

制作現場の“力”を最大限活かして!
SNS広報部の
深田梨沙さんに聞く――
“伸びしろ大”
SNSを活用した
広報の特性ややりがい、
これからの可能性・将来像とは?

Vol.20

深田 梨沙 Risa Fukada

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第20弾は広報局SNS広報部の深田梨沙さん。この部署は昨年7月に新設され、SNSを活用したプロモーション活動を企画、運用している。日々、どんな考えやこだわりを持って仕事に向き合っているのか、SNS広報の特徴や可能性、これからの目標なども含めて聞いた――。
(2024年05月10日掲載)

“新設” SNS広報部のお仕事とは
各プラットフォームの特性も活かして
SNSに適した映像の“構成”とは・・・

まずSNS広報部のお仕事について教えてください。
この部署は昨年の7月に新設されました。それまでは編成部のメディア推進班(現メディア戦略班)がSNSを担当していましたが、SNSをさらに有効に活用していこうという方針のもと、このSNS広報部が立ち上がりました。主な業務の一つは、フジテレビの公式SNSアカウントの戦略や企画の立案とその運営です。また、ドラマのSNSの企画と運営、そしてドラマ以外の番組に関しても、SNSアカウントの立ち上げから軌道に乗せるまでをフォローしたり、アカウントをSNS最適化するためのアドバイスを行なったりしています。そうした仕事の中で、現在、私は「ドラマのSNS」に関する業務を主に担当しています。
「ドラマのSNS」は、どのような流れで運用しているのでしょうか?
運用の流れとしては、まずは「一報出し(“最初のお知らせ”)」に合わせて、SNSのアカウントを立ち上げます。番組の方針を伺った上で、SNSのトーン&マナーを検討し、大まかな運用スケジュールやSNS企画案を策定し、番組の制作チームと協議して”アカウントの方向性”を固めます。その後、方向性に沿った形でユーザー名やプロフィールを考えたり、ヘッダーやアイコンを作るなどの作業を行います。そして番組の進行に応じて、例えば、①番組がスタートするまで、②第一話に向けて、③無料配信される第一話から第三話ぐらいまでに向けて、④最後に最終話に向けて、などといったそれぞれの段階毎に、どのように番組を盛り上げていくのか、戦略を立てて実行に移していきます。また、SNSはファンのみなさんとの大切なコミュニケーションの場だと考えているので、SNS上でのコメントや反応を見ながら企画を検討していきます。
深田 梨沙
具体的にはどういった作業をしているのでしょうか?
まず、最初の「一報出し」からクランクインまでの期間は、出せる情報や写真や動画などの素材が限られているので、最初の知恵の出しどころです。実際に投稿文を作成し投稿作業を行なってくださる投稿担当スタッフや、ドラマの撮影現場でSNS用の写真や動画を撮影して下さる撮影担当スタッフなど、SNS経験豊富な外部パートナーさんと共にチームで動いているのですが、みなさんのお知恵もお借りしながら、案を出していきます。また、ドラマの制作チームのみなさんも日頃からユーモアに溢れた案を提案してくれます。
『いちばんすきな花』の時は、ドラマ制作チームからのアイデアで、出演者を発表する直前に、視聴者のみなさんにちょっとワクワクしてもらおうと、子役の写真を出して、「大人になったら誰になるでしょう?」といったクイズを出したりしました。
第一話の放送を迎えたあたりでは、出演者のみなさんの関係性が少しずつ“温まってくる”ので、オフショットのメイキングの素材が充実し始めます。NGシーンなどを含め、そうした撮影の裏側の様子が見たいとのお声をいただくことが多いので、素材が揃い始めた段階で喜んで貰えそうな投稿を増やします。また、ドラマ本編の切り抜きなども「どのシーンを出すか」など、投稿担当さんや撮影担当さんや制作チームと戦略を練って、投稿を進めます。このようにドラマの進行に合わせて、それぞれの段階に適した作業を、ワンクール続けていくという感じですね。
現在、担当されている月9『366日』では、どのような準備をしたのですか?
タイトルが『366日』で、放送する今年がちょうど閏年だったので、2月29日を立てた形で、ドラマの雰囲気に合わせたオリジナル壁紙を配布しました。喜んでいただけたので、この取り組みはその後も、台本のデザインと同じ写真で作成した「次話放送をカウントダウンする火曜日始まりの1週間カレンダー」として続いています。そして何より、出演者の写真や動画を求める声が多いので、撮影の合間にお邪魔して突撃動画を撮ったり、SNSで集めたコメントにアンサーしていただく動画を撮影したりしました。こうした取り組みが成りたつのも、出演者のみなさんや制作チームのご協力のおかげです。
深田 梨沙
深田さんも撮影現場へ行くのですね。
毎回ではないのですが、クランクインやクランクアップ時を始め、撮影のポイントポイントで現場にお邪魔しています。また、コメントをいただきたい時などは、現場のご都合もあると思いますので、「今、撮れるよ」というタイミングを上手く見計らって対応している感じですね。
SNSといっても「X」や「Instagram」など様々ありますが、プラットフォームによって特性や違いはありますか?
その辺はすごく難しく、またあくまで個人的な受け止めですが、やはり「X」は話題量を増やすのに適している印象があるので、「話題提供の場」「情報提供の場」として捉えています。一方、「Instagram」に関してはビジュアル訴求で、ドラマの世界観を伝えるのに一番適しているイメージがありますし、メイキングなどが伸びやすいとも感じています。また「TikTok」は番組のターゲットにもよりますが、既にフォローしてくれている方や、意識して検索して来てくれる方以外にも、「おすすめ」から新たに番組等の情報に触れてもらいやすいプラットフォームなので、タッチポイント(顧客接点)を作るのに向いているのでは、とも考えて運用しています。
どのプラットフォームに力を入れているか、局によって違いがあったりするのですか?
そうですね。局によって違いがあると認識していますが、いずれにしても、それぞれのプラットフォームの持つ特性を十分に活かせるよう対処できたらと思っています。
小池部長からは笑顔でアドバイスも!

小池部長からは笑顔でアドバイスも!

SNSは投稿内容など気を遣う部分が多くあって大変なこともたくさんありそうですね。
「X」は文章がすごく“前に出る”ので、作品の世界観にしっかり合っていること、そして人を傷つけない言葉を選ぶことをみんなで確認しながら作業していますね。また、絵文字の選び方一つでも、出演者のファンのみなさんに喜んでいただけることがあるので、工夫して投稿しています。
あと最近、”縦動画”が出てきましたが、テレビの人が作る映像とSNSで“伸びる“映像は、結構、構成が違う面があると感じています。テレビの映像はある程度、間があったり、緩急があったりして、それが「良さ」でもあるのですが、SNS上でのショート動画の場合は、冒頭から見せたいものを一度先に見せてしまったり、見る人を離さないように見せたい部分だけを凝縮させるみたいなことを、より強く意識している印象があります。SNSで情報を発信する際は、制作側と広報側の番組に携わる全員が、そうした「違い」をしっかりと認識して、十分にすり合わせた上で対応していくことが大切だと考えています。その点、制作のみなさんの理解の深さや柔軟なものの考え方、さらにしっかりとした協力体制を整えて下さっていることに救われることがとても多く、大変ありがたく思っています。
深田 梨沙

制作現場と密にタッグを
組むことが大事
好きなことを仕事にできる
喜びを感じながら・・・

これまでのSNS運用で、印象深いものはありますか?
『いちばんすきな花』では、”男女の友情は成立するか”というとても身近なテーマがありました。だからそれだけでもしっかり「フックポイント」になると思って、ドラマのタイトルや出演者が公表される「一報出し」の前に、「男女の友情は成立するか?」という言葉だけを書いた画像を投稿して、「どんな番組だろう?」「誰が出演するのだろう?」と期待して待っていただくという仕掛けを用意しました。まだ何も情報が出ていないタイミングで初めての投稿だったので、どんな反応があるのか緊張しながら反応を見守っていたのですが、ドラマ『silent』のファンの方々やフジテレビ公式アカウントのフォロワーのみなさんなどを中心に期待の声をいただけて、ホッとしました。
深田 梨沙
また、とても印象に残っているのが、「YouTube」に投稿するドラマ告知映像に関する“工夫”です。外部のSNSコンサルティングの方のアドバイスを受けて、途中から「タイトル」や「概要欄」、「サムネイル」などの最適化をおこなったのですが、そうしたちょっとした“工夫”によって、初速の再生回数が倍程に伸びたこともありました。この時は、この会社の仕事に活かせる「SNSの領域」って、まだ開拓できていない部分もたくさんあって、伸びしろがすごく大きいなって感じて、ワクワクしましたね。
広報宣伝部との連携も重要ですよね。
やはり広報宣伝部とタッグがうまく組めると、より効果的なPR活動をすごくスムーズに進行することができます。例えば、イベントや屋外広告、リリースなどをどのタイミングで実施するかなど、細かく情報共有ができていると、SNS上でも同時に発信を行なっていくことができますし、広報宣伝部のみなさんは世の中に事象を広げていくPRのプロなので、SNSにおいても素敵なアイデアを出してくれます。だから、広報宣伝部や制作の方と密にタッグを組むことがすごく大事なんだなと実感していますし、今後もそうした連携に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
深田さんは普段から、SNSでアンテナを張っているのでしょうか?
私に限らず、SNS広報部の他のメンバーも各プラットフォームに複数のアカウントを持っていたり、SNSを頻繁にチェックしている人が多いですね。私自身もSNSは好きですし、結構見ています。とはいえ、トレンドはすぐに移り変わるので、遅れることなくついていくのはすごく大変ですね。先日、ある中学校にワークショップでお邪魔させてもらった時、「これ流行っているけど、知ってる?」って、中学生に質問をされたのですが、正直、知らないものも少なからずあって…。「私の”おすすめ”には出てこない」みたいな(笑)。だから今は、自分より下の世代のYouTuberの方の動画や、今人気のある方のファンのみなさんのアカウントなどもチェックしたりと、アンテナをさまざまな角度に張り巡らせて、いろんな情報をキャッチアップするように心がけています。
深田 梨沙
これまで親しんできたSNSに、現在、仕事として携わっているのですね?
この部署に入る前に少しだけ編成部のメディア推進班(現メディア戦略班)でSNSに関する業務を行なっていたので、SNSに対してすごく可能性を感じていました。だから、部署ができて配属が決まった時は、嬉しかったですね。私は日頃から、SNSに高い関心を持っていますし、実際に利用している方なので、「仕事のために、ガリガリと一生懸命勉強する」というより、「好きなことがそのまま勉強になっていく」という感じで、「無理することなく、自然に」仕事と向き合えている状況なので、とてもありがたく感じていますね。
深田 梨沙

制作現場の発想力を上手く活かして
“伸びしろ大”のSNS広報で、
さまざまな挑戦を!

話は変わって、これまで携わってきた業務について教えてください。
入社して最初は編成局のドラマ部に配属されて『ルパンの娘』や『隣の家族は青く見える』などの番組のADやAPを担当しました。そこから編成部の報道局や情報制作局との連絡役や番組の担当などを経て、その後、編成局のメディア戦略部という部署で配信やSNS周りの仕事を担当しました。その流れでそのまま今の部署に来たという感じですね。
ドラマの制作現場は大変なことも多い印象ですが、思い出の現場はありますか?
『隣の家族は青く見える』というドラマですね。この作品はいろんな境遇のキャラクターが登場するのですが、そこでドラマで使用する婚姻届を書いたり、結婚情報誌を初めて買ったりと、当時人生で踏んでいなかったステップを先にドラマを通して踏むことになりました(笑)。このドラマに限らず、時には政治について調べたり、時には銀行員のお仕事について学んだり、女子高生の流行りを調べたり…自分とは違う境遇の人々について、ドラマを通して学んでいくことにとても面白さを感じていました。
深田 梨沙
ドラマなどの制作現場と、編成や広報では何か違いみたいなものは感じましたか?
ドラマの制作現場を経て、編成や広報を担当してみると「人気のある作品は、作品自体が面白いというだけではなく、様々な人の取り組み・工夫もあって世間に届いている」ということに気が付きました。一方で、制作現場のアイデアや発想力の凄さも改めて実感し、「制作現場あっての編成や広報」という思いも新たにしました。だから、SNS広報部としては「制作現場の発想力・意見をいかにしっかりくみ取って、それをより効果的な形で広げていくかが何よりも大事」だと自ら肝に命じていますね。
では、具体的に現在の業務に役立っていることはありますか?
私は制作現場、そして調整役の面もある編成や広報局を経験させていただいたので、現在、SNS広報の立場として実際に現場のみなさんとコミュニケーションを取る際、「こういう言い方をされたら嫌だろうな」とか、「こう進めた方が、負担が少なくすむだろうな」とか、その辺は自分が両方の立場を経験しているからこそ想像できる部分もあるのでは?と思っています。逆に、制作現場にいた時に、SNSでの情報発信について「こういう風に出せばよかったのに」などと感じていたこともあったので、そうした経験も現在の仕事に活かせているのかなと思っています。
深田 梨沙
それではフジテレビに入社したきっかけを教えてください。
私はドラマや映画が昔からすごく好きで、中学生の時から、岩井俊二監督の大ファンでした。いわゆる思春期のその頃、何かと難しいこともある中で、岩井監督の作品に出会って心がすっと楽になるような感覚があったんです。それから中高生が主役の作品をよく見るようになって、その中で『リップスティック』というドラマに出会いました。そこからさらにドラマが好きになっていった感じですね。それからもドラマや映画をずっと見ていく生活が続いたのですが、大学生になって、さっきのSNSもそうなんですが、「好きなことが仕事としての勉強になるのは最高だな」って思って、それで就職先の選択肢としてテレビ業界を考えるようになりました。
フジテレビへ入社しての印象はどうでしたか。
現在フジテレビは、SNSの活用に力を入れていますが、それはまだ、SNSという分野に未開拓の領域が結構あって、今後の対応次第で大きなチャンスを掴むことが期待できる、大きな伸びしろがあるからだとも思っています。そうした時代の趨勢に合わせて、臨機応変に対応していく面もありますし、「こんな企画やりたい」と思った時にもチャレンジしやすい環境、風土だと思っています。
SNSの運用は「いつでも、どこでも」的なイメージもありますが、働き方についてはどうですか?
基本的にSNSの運用は、必ずしも社内にいなくても、どこにいてもスマホとパソコンさえあれば対応できます。ただもちろん、対面でコミュニケーションをとることも重要ですよね。ですから状況に応じて、制作現場に頻繁にお邪魔することもありますし、出社した際は、関係各所と十分にコミュニケーションを図るよう心がけています。
深田 梨沙
SNS広報担当として、ドラマの放送中はSNSの反応が気になりますよね。
OA当日は、やはりリアルタイムの反応を見たいので、結構テレビにぴったり張り付いて、視聴者のみなさんのコメントなどの反応を横目でチェックしながら放送を見ていますね。
では最後に、今後やりたいこと、挑戦したいことなどを教えてください。
私はテレビ局のSNSにおいては“縦型動画”に可能性を感じています。ただ、先ほどもお話ししたように“縦型動画”やSNSで反応してもらえる動画づくりは、まだ十分に浸透していない面もあると思います。今あるフジテレビの素材を活かして“縦型動画”の文脈に沿った投稿をして、公式アカウントや公式チャンネルに触れていただく機会を増やしていくことが、今、私のやりたいことですね!
深田 梨沙
仕事仲間からひとこと
視聴者とメディア・コンテンツとの関係性が多様化してきたなか、「SNS広報部」が発足し、これから我々でどのようなことができるか・すべきか…それを少人数で検討してかなければならない、そのような中で深田さんは我が部の中堅メンバーとして活躍しています。彼女は主にドラマSNSの運用担当をしていますが、元来ドラマ自体が大好きということ、そしてソーシャルメディアに対しても非常に高いモチベーションを持っているのでまさに適任、と思ったものの、いざ実際に業務としてSNSの“中の人”と制作現場や編成・広報担当との連携を取りつつ、SNSを上手く運用していくのは大変なようで、日々、視聴者との良好なコミュニケーションを構築するために力戦奮闘しています。
今は道なき道を暗中模索で進んでいきつつ、突然発生するトラブルの対応をしたり、目まぐるしく変わっていくSNSのトレンドを掴みながら順応していったりと、連日、困難なことばかりですが、彼女がいま一生懸命悩みながらも前進し植え続けている種が、やがて芽を出し、素敵な花が咲いてくれることを期待しています。 SNS広報部 小池 一洋

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