FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

平田 靖典

スポーツ局・
平田靖典ディレクター聞く―
SPフィールドキャスター
本田真凜さんの魅力
35歳の“新人D”としての奮闘ぶり・
制作にかける思いとは?

Vol.16

平田 靖典Yasunori Hirata

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第16弾は、昨年夏にスポーツ局に異動してきた35歳の“新人ディレクター”で、精力的に取材現場を駆け回っている平田靖典さん。3月18日からカナダ・モントリオールで開幕する「世界フィギュアスケート選手権2024」も、大会でSPフィールドキャスターを務める本田真凜さんの担当ディレクターとして現地で取材する。そんな平田Dに、本田真凜さんの魅力や大会の見どころ、そして取材での奮闘ぶりやこれからの目標などについて聞いた――
(2024年03月18日掲載)

本田真凜キャスターの魅力と
大会の見どころ
営業局からスポーツ局へ…
“転職したみたい(笑)”
その戸惑いと奮闘ぶりとは?

平田ディレクターは、現在、本田真凜さんと一緒に仕事をされていると伺いました。
そうですね。僕はスケート班の一員として、フジテレビ系のフィギュアスケートのスペシャルフィールドキャスターに就任された本田真凜さんの担当ディレクターをしています。今回、カナダのモントリオールで開かれる「世界フィギュア」でも一緒に取材をさせていただきます。今は、「世界フィギュア」に出場する選手たちの仕上がり具合や準備状況などを、各地で取材して、実は今日も本田さんと神戸で、坂本花織選手を取材してきました。
世界Jr.フィギィアスケート選手権2024で出場選手にインタビュー

世界Jr.フィギィアスケート選手権2024で出場選手にインタビュー

その本田真凜さんですが、最初にお会いした時の印象はどうでしたか?
僕を含め周りのみなさんに対して、にこやかに挨拶されていたので、とても明るくて、すごくかわいらしい女性という印象でした。ご一緒させていただくようになってまだ日は浅いのですが、今年2月に台湾で開催された世界ジュニア選手権など、これまでの取材を通じて、本田さんのフィールドキャスターとしての魅力も直に感じてきました。注目度の高い今回の「世界フィギュア」でも、本田さんのそうした魅力を引き出せるよう「気合い十分」なのですが、一方で自分にその任が務まるのか、ちょっとプレッシャーも感じています。
平田 靖典
本田さんのフィールドキャスターとしての具体的な魅力とは、どんな点でしょうか?
やはり本田さん自身が直近まで現役の選手だったので、選手の気持ちを“自分のこと”として理解しているところだと思います。特に取材対象が女性選手の場合は、ライバルであり仲間でもあったので、そうした“独自の”立場から選手の気持ちを引き出していただきたいと思っています。また彼女の明るさとか天真爛漫さも、選手から本音を引き出す上での、大きな“武器”になりますよね。例えば、今日、取材をしてきた坂本花織選手とは関係値もあるので、二人ともすごくリラックスされていて、やはり「本田さんだから言ってくれる本音」みたいなところも見受けられました。
本田さんは「スペシャルフィールドキャスター」という立場ですが、それはアナウンサーでも解説者でもなく、フィールド上で、つまり選手に近い距離感で、キャスターを務めていただくことだと認識しています。だから僕らディレクターとか、あるいはアナウンサーですら聞き出せないような選手の想いなどを、是非、インタビューという形や自らの言葉で、視聴者のみなさんに届けていただければ、と思っています。もちろん、本田さんにお任せするだけではなく、僕も一緒にやっていかなければなりません。そのためにも、まずは日頃の仕事を通じて、本田さんから十分な信頼を得ることが大切だと、自らに言い聞かせています。
本田さんを撮影するカメラの操作も上達の兆し…?

本田さんを撮影するカメラの操作も上達の兆し…?

昨年の夏、営業局からスポーツ局へ異動したということですが・・・
全く別の世界というか、もう「転職したんじゃないか!」ってくらいですね(笑)。生活リズムももちろん違いますし、普段、使っている制作用語もそうですし、競技に関する用語も分からないことがたくさんありました。そうしたことは、今でも取材を進める中で、ちょっと苦労している点ですね。
結構な重さなんです・・・

結構な重さなんです・・・

フィギュアスケートという競技は、特に難しい面もありそうですが・・・
技の名前やジャンプの種類も数多くありますし、点数のつけ方も、演技構成点と呼ばれる芸術的な要素もあったりするので、確かに難しく感じることもあります。ただ、一方でそれだけに「奥深さ」もあるのかな、とも思っています。
“難しさ”を克服するために、これまでどんなことをやってきましたか?
まずは、これまでの大会の中継映像をたくさん見るようにしました。「今のジャンプはアクセルなんだ…」と技の名前をチェックしたり、そういう基本的なことを一から地道に積み重ねてきました。最近は、取材から帰ってきて、選手の演技動画を何度も見直して、「これは何回、跳んでいるんだろう?」などと確認しながら、取材ノートにメモしたりしています。あと、取材に臨む上では「誰かに言われたことは、一回で覚えるよう」に心掛けています。それは上の人に言われようが、年下のADさんに教えてもらおうが、同じです。ですから、取材のメモ用とは別のノートを持ち歩いて、教わったことや取材での反省点などを毎回こまめに記入して、次の取材に活かせるようにしています。
テレビ越しではなく、生で見るフィギュアスケートはどんな印象ですか?
リンクサイドで選手の練習を見させていただくこともあるのですが、スピード感とか、跳んだり止まったりする時のスケート靴のエッジの音とかは、間近で見聞きしていてすごく迫力があって、圧巻ですね。また会場に響き渡る音楽に合わせて、選手たち一人一人が、それぞれ自分を表現している姿はやはり心に迫るものがあります。また、今年2月に中国・上海で開催された四大陸選手権に取材に行かせてもらった時もそうだったのですが、海外での会場では、いつも以上に日本選手を応援したくなる気持ちが強くなって、ちょっと熱くなったりしましたね。そうした演技のスピード感や迫力、会場の盛り上がりなどを、本田さんの言葉やテレビ画面の映像を通して、お伝えできればと思っています。
中国・上海で四大陸フィギィアスケート選手権2024を取材

中国・上海で四大陸フィギィアスケート選手権2024を取材

フジテレビは長年フィギュアスケートを中継していますが、その中で培われてきたものは何だと感じていますか?
新人の僕が言うのも何ですが、やはり歴史的にも長いので、選手や協会との関係値が深いのかなと思っています。また取材の面でも、多くのディレクターさんがシーズンに入る前の夏頃から、ずっと選手を追いかけていたりもするので、そういう「取材の厚み」はフジテレビのストロングポイントと思っています。あとは 「アイスコープ」という、 リアルタイムでジャンプの「飛距離」「高さ」「着氷速度」を計測するシステムは、フジテレビならではの技術で、演技の素晴らしさを具体的な数値で視聴者にお伝えするうえで、強力な“武器”だと思い、感心しています。
では、「世界フィギュアスケート選手権2024」の見どころを教えてください。
一番の見どころはなんと言っても、宇野昌磨選手と坂本花織選手が三連覇という大偉業を成し遂げることができるか、という点です。男子は、鍵山優真選手などの若手選手もすごく頑張っていますし、“4回転の神”こと、アメリカのイリア・マリニン選手など世界のライバル達と王者・宇野選手との戦いが注目されます。女子も有望な日本の若手選手が揃っていますし、海外勢にも将来が楽しみな選手がいますので、坂本選手がそうしたチャレンジを受ける中で三連覇を達成できるか、という点に注目していただけたら、と思っています。
平田 靖典

営業局で学んだことは、
自分の「ベース」
「転換点」となった関西支社時
「人とのつながり」をこれからも大切に…

話は変わりますが、平田さんは入社後10年ほど営業局の仕事に携わったと伺いました。
そうですね。入社してスポット営業部に2年、関西支社に5年、そしてネット営業部で4年間、営業の仕事に携わり、12年目の昨年の夏、スポーツ局へ異動しました。
営業局では、特にどんな仕事が印象に残っていますか?
印象に残っている仕事はたくさんありますが、中でも、関西支社で働けたことは、自分にとって一つの「転換点」だったとの思いがあります。同じ営業局なので、仕事の中身自体は、東京とほとんど変わりません。ただ、接していただいたスポンサーさんや広告代理店さんも関西の方となると、よりノリがいいというか、“距離感が近い”という印象でしたね。もちろんそういう“関係性”はいい面ばかりではないのかもしれませんが、僕は神戸出身ということもあってか、そうした風土が自分に合っていたようで、支社のみなさんの支えもあって、大きなやり甲斐を持って、とても楽しく仕事することができたと思っています。
2017年 関西支社のみなさんと

2017年 関西支社のみなさんと

あと、昨年、「お台場冒険王」が久しぶりの“フル”での開催に向け動き出した際、スポンサーさんに企画を持っていったのですが、コロナ禍のこともあり、なかなか以前と同じようには扱っていただけませんでした。だけど、粘り強くこちらの意図を丁寧にご説明し続けた結果、とてもありがたいことに、大きなスポンサーさんに協賛していただくことができました。それが営業局での最後の仕事になったこともあり、自分の中では特に印象に残っていますね。
平田 靖典
では、営業局で学んだこととはどんなことでしょうか?
先輩方からいろんなことを教えていただきましたし、学ぶこともたくさんありました。
ひとつ挙げるとしたら、これは営業の仕事に限ったことではないのかもしれませんが、やはり「人と人のつながり」で、自分としても特に大切にしてきました。営業のスタイルって「十人十色」の面があって、人によってそのスタイルの向き・不向きもあるのでは、とも思っています。僕の場合は、スポンサーさんや代理店さんに「寄り添う」こと、と言うとおこがましいですが、「一緒に頑張っていく」ことを第一に心がけていました。ただ、もちろん、状況によっては「強気な姿勢」も必要な場合もあります。こうした点に関して僕は先輩から、「ちょっと迫力に欠けるよなぁ~」って冗談交じりにいじられたこともありましたが(笑)、無理に背伸びすることなく、逆にそれが自分の良さ・スタイルだと信じて、仕事と向き合ってきました。
10年あまりの営業局での「学び」は、僕の社会人としての「ベース」であり、これからも大切にしていたいと思っています。
その後、昨年の夏にスポーツ局へ異動しました。
異動の内示を受けた時は、いろんな面で「半々」の思いがありました。すごくうれしい反面、とても不安な気持ち…。「こんなに年を取った僕を現場に出してくれてありがとうございます」と上司や同僚のみなさんへの感謝の想いが募った一方、志望がかなった安堵感もあってか、「もうちょっと早く出してくれよ」という“わがまま”な気持ちも、一瞬、芽生えてしまいました(笑)。
先ほどもお話ししましたが、実際にスポーツ局に異動してみると、生活のリズムとかも含めて、想像していた以上に「大変だな」という印象ですね。大きな大会の期間中などは、朝から晩まで編集をやり続けるとか、ものすごい集中力、そして体力が必要とされる日もあったりしますので、まだ仕事に慣れていないこともあり、そういった大変さは感じていますね。営業局でもいろんなことを学ばせてもらったのですが、スポーツ局の仕事も知れば知るほど奥が深いというか…。「中継って、技術さん達を含めこんなにすごい規模の人数でしっかりと意思統一してやっていたんだ」とか、今は勉強の毎日で、落ちこぼれないよう、必死に食らい付いている状況です。
平田 靖典

「一度は制作現場に
チャレンジしてみたい」反面、
「キツいかな?」との葛藤も
今、与えられている役割を
しっかりと果たすことが至上命題!

大学時代は野球に打ち込んでいたと伺いました。
4年間、野球部の寮からグランドに通い、野球漬けの毎日でした。でも、残念ながら試合には全く出場することができず、いつもスタンドからチームを応援していました。
「好きだから」とは言え、試合に出ることができない状況の中で、4年間、練習を続けることはなかなか苦しい面もあって、それなりの忍耐力が必要だったと思います。「一緒に頑張っていこう」と励まし合ってくれたチームメートの存在もあって、本気で「辞めてやる」みたいなことはなかったのですが、特に1~2年生の時は、生活環境の面でも本当に苦しい時期がありましたね。それを何とか頑張って乗り越えたのは「一つの強み」として、今も自分の中に「結晶」として残っているのかなとも思っています。ただ、大学生の頃にタイムマシンで戻れるとしたら、野球には一切目も触れず、思う存分、学生生活をエンジョイしたいと思います!笑
大学時代は野球漬けの毎日

大学時代は野球漬けの毎日

入社後は、仕事として「スポーツ」に関わってみたいとの思いがあったのですか?
スポーツに限らず、やっぱりテレビ局へ入ったからには、一度、制作の現場を体験してみたいという気持ちはずっとありました。一方で、入社12年目、30歳半ばで、制作現場に初めて行くのは、正直「きついかな」っていう葛藤も自分の中にありました。ただ、今のままでは自分の知っている“領域”だけというか、もちろん、その道を極めることも「全然あり!」という思いもあり迷いましたが、「一度、チャレンジしてみたい」との思いを捨てきれずに、ずっとスポーツ局を志望させていただいていたっていう感じです。
平田 靖典
では最後に、これからの目標を教えてください。
やはり、ディレクターとしてまだまだ半人前以下なので、まずはしっかりと取材者として一人前になることですね。そしてその先には、プログラムディレクターとか、番組全体を考える立場を目指してみたいと思っています。また、これは完全に個人的な思いなのですが、やはりいずれは、子どもの頃から親しみ、打ち込んできた「野球」に、何らかの形で携わってみたいとの気持ちもあります。
ただもちろん、まずは目前に迫った「世界フィギュア」で、自分に与えられた役割をしっかりと果たすことが「至上命題」だと思っています。
平田 靖典

「新人ディレクターの僕なんかがフィギュアスケートのことなどを語ってもいいのでしょうか?」と困惑した表情を見せながらも、丁寧にインタビューに答えてくれた平田D。
温和で物腰も柔らく「近所の優しいお兄ちゃん」といった印象のその奥には「スポーツに携わりたい!」という強い思いも伺えた。まだまだ“半人前以下”と謙遜する彼だが、その人柄と熱意で、これからのフジテレビのスポーツ放送に大きく貢献することが期待されそうだ!

Page Top