FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

奥村 直輝

『FIVB パリ五輪予選/
ワールドカップバレー2023』の
奥村チーフディレクターに聞く…
大会にかける意気込みと
フジテレビバレー中継の“伝統技”

Vol.05

奥村 直輝Naoki Okumura

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第5弾は、9月16日から日本で開催される『FIVB パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023』を担当するスポーツ制作センター・奥村直輝チーフディレクター。来年夏に開催されるパリ五輪の出場権がかかり盛り上がりが大いに期待される今大会へ向けてどんな準備を進めているのか、また長年バレーボールを放送してきたフジテレビだからこその中継のノウハウを聞いた――。
(2023年8月8日掲載)

男子バレー石川祐希選手の
イタリア取材で実家へ“里帰り” /
日本代表の魅力とは?

奥村ディレクターは「ワールドカップバレー」でどんな役割を担っていますか?
チーフディレクターとして、まずは中継全体の方向性やテーマを決めることが大きな役割です。そしてその実現に向け、多彩な技術も活かしながらどのように演出していくのか、また選手をどうやって視聴者のみなさんに覚えてもらうかも検討していて、多岐に渡っていますね。
いつ頃からどんな準備をしていますか?
2年ほど前にワールドカップバレーの担当になりましたが、まず選手の魅力をどう引き出すかという取材からスタートしました。取材ってやっぱり長くやればやるほど味が出るというか、選手のいろんな側面を知ることができるので、2年前からそうした準備を進めてきました。
奥村 直輝

石川祐希選手とミラノにて

海外でも取材したのでしょうか?
今年2月にミラノでプレーしている石川祐希選手と、パドヴァでプレーしている髙橋藍選手の取材に行きました。実はたまたま僕はイタリア出身で、里帰りもできてすごく嬉しかったですね(笑)。
石川選手がプレーしているチームが実家のすぐ近くだったので、自分が育ったところで本人の取材ができたというのは感慨深いものがありました。
大会注目の選手を教えてください。
まず、女子の注目は古賀紗理那選手ですね。日本代表女子のキャプテンで、昨年末に男子バレーの西田有志選手と結婚しました。だから夫婦揃ってパリオリンピックを目指して二人で頑張る姿は見どころなのかなって思います。また古賀選手はリオオリンピックでは代表に落選してしまうなどの挫折を経て、今回キャプテンとなってチームを牽引しているところもドラマがあって注目ですよね。そして石川真佑選手です。こちらはお兄さんが石川祐希選手で、兄妹でパリオリンピックを目指すことになります。石川真佑選手は非常に力強いスパイクを打てる選手なので、そこも魅力ですね。
男子選手の注目も教えてください。
男子もタレントが揃っていて、中でも石川祐希選手、西田有志選手、髙橋藍選手、この3選手が注目ですね。特に石川祐希選手は世界最高峰と言われるイタリアのリーグで8シーズンも活躍している選手で、プレーの一つ一つが世界最高レベルです。こんな選手は今後もなかなか現れないと思いますし、本当に多くの方に見ていただきたいですね。
奥村 直輝

開幕50日前イベントにて

男女共にどんなチームなのか、特徴などはありますか?
女子はまずサーブで相手を崩すことを大きな目標の一つにしています。サーブと言ってもただ打つだけではなくて、相手選手を狙ったり、選手の間を狙って打ったりと、いろんな狙いがあって、そこに注目するのが面白いのかなと思います。男子に関しては、攻撃の際にどこから誰が打つのかわからないくらい多くの選手が攻撃に関わるので、そこが強みですし、見ていて本当に楽しいです。

スパイクの高さと速さを数字化…
フジテレビだからこその
中継ノウハウ

ではフジテレビのバレーボール中継ついて、見せ方など工夫はありますか?
スパイクを打った高さや速さを瞬時に数字化して出すことを今回も実施する予定です。バレーを生で見る凄さの一つに“高さ”というものがあるんですね。「ここまで飛ぶんだ!」っていう。そうしたバレー選手の凄さを一つでも多く知ってもらうために、高さや速さを数字で見せることができたらと思っています。
また、日本代表もすごく進化しているので、日本代表がやりたいバレーとか、何を目指しているのかということも視聴者にわかってもらえると、また違った目線でバレーボールの中継を楽しんでもらえるのでは、と思っています。そのためにどのような演出をするか、現在イメージを膨らませながら準備を進めています。
今回の中継で新しく導入する技術もありますか?
新たに天井に吊るすカメラを投入する予定です。2021年の東京オリンピックではやったことがありますが、オリンピック予選ではまだなく、コートの上空を移動するカメラで、臨場感溢れる映像をお届けするということを考えています。それ以外にも今回は20台ぐらいのカメラを入れて、いろんな角度から選手たちを撮ろうと思っています。例えばネットの中にカメラを仕込んで、まさに目の前で選手たちのプレーが展開されている様子などを味わってもらうとか、そういったさまざまな手法を考えていますよ。
奥村 直輝
フジテレビは「春高バレー」も放送していますし、バレー中継と言えばフジテレビというイメージがあります。バレーを“魅せる”ノウハウなどはあるのでしょうか?
一つは、スポーツ局だけでなく、会社全体で盛り上げていることでしょうか。まずは、情報や報道番組はもちろん、事前にバラエティ番組とコラボして選手に出演していただくなど、視聴者に選手たちのより多くの魅力を知ってもらうお手伝いをする。そして実際に試合の中継が始まったら、選手たちのプレーで視聴者を魅了しさらに応援したくなるような「スター選手」を生み出す。そうしたバレー選手のスターを生み出すサポートをするノウハウは、フジテレビがこれまで培ってきたことではないかと思いますね。あとは先ほども言ったように、数字化でバレーの凄さを知ってもらうという「データの出し方」もフジテレビ独自の見せ方だと思っています。さらにスローモーション一つをとっても、そのカメラマンさんの撮り方だったり、出し方だったり、そういう細部へのこだわりもやっぱりフジテレビで引き継がれている「伝統技」なのかなと感じています。

入社のきっかけは
「マンデーフットボール」/
チームで戦い抜いた東京五輪中継

話は変わって、奥村さんがフジテレビに入社したきっかけを教えてください。
僕は親の仕事の関係で、イタリアのミラノで生まれたのですが、そこでサッカーをずっとやっていてスポーツに携わる仕事ができたらいいなと思っていました。それで日本の大学へ進学したのですが、フジテレビの深夜にやっていた番組の「MONDAY FOOTBALL」という海外サッカーのコーナーを見て、そのパッケージも含めて、「見せ方」が格好良くて、大好きになりました。それが入社した一つのきっかけですね。あと、アスリートが試合に臨むにあたって、どのような思いを持って準備をしているのか、そうした密着取材の番組も作ってみたいとの思いもありましたね。
奥村 直輝

海外での取材もお手の物

2011年の入社後ずっとスポーツ局に在籍し、海外取材も数多く経験したと。
2年目でサッカー班になってから、「チャンピオンズリーグ」の取材など本当に海外出張が多くて、またディレクターとして参戦した「リオオリンピック」の取材なども含めると、20数カ国、出張に行かせてもらっています。4年に一度のオリンピックやサッカーワールドカップなど世界中から注目を集める大会にも携わることができて、多くの事を学べてありがたく感じていますし、かけがえのない思い出にもなっています。
奥村 直輝

リオ五輪のフジテレビ中継ブースにて

では、これまでで一番楽しかった取材は?
楽しい取材はいろいろと経験させてもらいましたが、強いて「一番」をあげるとすると意外かもしれないのですが、2015年のカナダで行われた女子ワールドカップサッカーですね。なでしこジャパンが前大会で優勝してその4年後の大会だったのですが、その時は一人でディレクターとして現地へ赴きました。なでしこが勝ち進んで決勝戦に近づいていくに連れて日本国内も盛り上がりを見せてきて・・。本社からいろんな取材のリクエストも増えて仕事は本当に大変でしたが、そうやって日本中が注目している大会の最前線に自分がいて、その魅力や今起きていることを日本へ伝えられることができたことは、大変だったけど楽しかったですね。
では一番大変だった現場とは?
2021年の東京オリンピックですね。東京で行われるオリンピックに自分が関われるなんて、これ以上ない幸せを感じながら中継していました。僕が担当した競技は卓球で、混合ダブルスで金メダルを獲得した試合の中継も担当させてもらい、めちゃくちゃ嬉しかった記憶があります。一方で、とにかく放送面積(放送する種目と時間)がものすごく大きくて、朝から夕方まで何十時間も中継しなければならず、一つの中継が終わったらまた次の準備、翌日もまた試合があってというように、「繰り返し」がすごく大変でしたね。あとはやっぱりコロナ渦の時期だったので、感染対策にも気をつけなくてはなりませんでしたし、本当にチーム一丸となって辛い時期を戦い抜いてやり遂げた中継でした。楽しかったけど一番大変、それだけに最終的には達成感に満ちた仕事だったと感じています。
奥村 直輝
またスポーツ中継には、ハプニングがつきものですが?
そうですね。やはりスポーツ中継にはハプニングがよく起きるので、イメージトレーニングと言いますか、「こうなったらこうなって・・」というのを何パターンも考えておくなど、事前の準備は入念に行っています。そういう意味では、スポーツ中継を担当している人には「心配症」の人が多いのかもしれませんね。とは言え、瞬時の判断を必要とされるような“追い込まれた時”に最後に物を言うのは、「どれだけ腹を括って決断するか」だと思っています。
奥村 直輝
では最後に、スポーツ中継で最も大切なこととは?
やはりチームワークですよね。本当に「生」なので、全てのことをみんなで準備して、現場にいる人も本社にいる人も、編成の人を始め全員で考え方を共有して同じ方向に一気に向かっていかなければならないので、チームワークは本当に大事だと感じています。
今回のワールドカップの中継でも、先ほどもお話ししましたが、事前の番組に関しては、報道や情報、そしてバラエティなどいろんな部署の方が協力してくださっています。また、広報局はポスター制作などで知恵を出してくれていますし、若手のディレクターを中心にSNSを活用して選手たちの認知度をさらに上げる取り組みなども進めていて、本当にフジテレビ全体で作り上げていく中継だと、改めて伝統の重みを実感していますし、それがしっかりと結果に繋がるよう努めていきたいと思っています。

バレーボールの魅力や中継の“神髄”を曇りのない目で生き生きと語ってくれた奥村チーフディレクター。「スポーツ中継で最後に物を言うのは『如何に腹を括って決断するか』」と勝負師の顔も覗かせた。パリ五輪の出場権獲得に向け、男女ともに魅力的なチームの仕上がった日本代表。伝える側も、奥村チーフディレクターの若いエネルギーを原動力の一つに、チーム一丸となって大会の醍醐味を余すことなく視聴者に届け、しっかりと選手たちの背中を押してくれそうだ!

Page Top