FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

岡田 翔太

『東京リベンジャーズ』の
岡田プロデューサーに聞く…
大ヒットのカギは“逆張り”?
映画作りのこだわりと
その原点を探る

Vol.03

岡田 翔太Shota Okada

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第3弾は、北村匠海主演の映画『東京リベンジャーズ』を手掛けた、編成制作局ドラマ・映画制作センターの岡田翔太プロデューサー。今作は2021年に第1弾が公開されると、同年の劇場用実写映画でナンバー1ヒットを記録。2023年4月にその続編の2部作前編として『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-』が、また6月末に後編として『-決戦-』が、それぞれ公開された。今作に懸ける思い、また映画づくりへのこだわりや苦労を聞いた――。
(2023年7月7日掲載)

電子書籍は5000冊!
“漫画好き”だからこその
実写映画『東京リベンジャーズ』
へのこだわり

まずは『東京リベンジャーズ』を制作するきっかけを教えてください。
『東京リベンジャーズ』をやろうと思ったのは2019年頃です。僕はいつも企画を考えるとき “逆張り”というか、今の市場にないものはないかな?と思って案を練っているのですが、その当時はいわゆる“キラキラもの“と呼ばれるラブコメディが全盛期で、もっと違うものが何かないか探していたんです。で、『クローズ』や『ROOKIES』のような若い男子が躍動するような熱い作品が最近少ないと感じていたところ、連載当初から読んでいた『東京リベンジャーズ』が頭に浮かび、「これだ!」と思ったのがきっかけです。
岡田プロデューサーは原作漫画が好きだったのですか。
原作の漫画が好きというのは当然ですし、テレビ局に勤めているのにこんなことを言うのも何ですが、漫画がとにかく好きなんですね(笑)。今、スマホの電子書籍に5000冊以上入っているくらい漫画オタクなんです。
では、漫画好きの岡田プロデューサーが今回の実写映画を手掛ける上で、意識して変えた部分や、敢えて変えなかった部分などはありますか。
漫画やアニメが好きな人たちの中には、実写化されるのが嫌な人も結構いると思うんですよね。僕自身も漫画好きで原作信者みたいなところがあるので(笑)、「出来るだけ原作に忠実に!」を心がけています。また改変せざる得ない場合でも作品の根幹に関わることは絶対に対象としないと決めています。『東京リベンジャーズ』でいうと、キャラクターのかっこよさ、ビジュアルも含めて、髪型とかをできるだけリアルに再現したいと思っていました。そこで、地毛でやった方がいいと思う人はほぼみんな地毛でやってもらいましたし、カツラを使うにしても、予算をしっかりとかけて最新技術のものを使ったりしました。一方、改変したのは年齢ですね。原作では、主人公達は中学生の設定ですが、人の生死が関わるストーリーでもあるので、原作者の方々と丁寧に話をして、高校生の世代に変更しました。それ以外は基本的に変更せず、原作のままです。
岡田 翔太
若い俳優さんたちが画面の中でとても生き生きしている印象を受けますが、キャスティングで意識されたところはありますか。
まず原作のイメージに限りなく近いところでキャスティングをしたいということがあります。そして若い世代の方が多く出演し、友情がテーマの一つでもあるので、俳優さんたち同士の、役の枠を越えた絆みたいなものを映像に反映させたいと思いました。だからもちろんそればかりではないのですが、共演経験があるとか、そういう繋がりも意識しながらキャスティングしていきました。
その役柄だけではない“絆”みたいなものは、映画を観て特に感じました。
スタッフも含めてみんなの年齢が近かったので、切磋琢磨というか、すごく一体感がありましたね。俳優さんの中での上下関係もないし、本当に仲間たちと一つの目標に向かって部活をやっているみたいな。カメラが止まると、みんなで無駄話したり筋トレしたりするんですね。だからそうしたいい雰囲気が映像に溢れ出たのかなと思います。
岡田 翔太

主演・北村匠海さんと 富山のロケ現場にて

『東京リベンジャーズ』の
大規模な“こだわりのシーン”と、
岡田Pが“最も感動した場面”

今作の撮影で特にこだわった場面は。
前編のラストと後編で“廃車場”を舞台にしたシーンがありますが、実はあそこは、1台も車はない場所だったです。超巨大な廃工場を半年ぐらい借り切って、そこに廃車を100台以上買ってきて積み上げて、自分たちで“廃車場”をゼロから作りあげました。当然ですが、本物の廃車場って別に人が乗って暴れたりするために作られているわけじゃないので凄く危険なんですよ。今回の廃車場セットは画面ではわからないんですけど、車が崩れないように中が固定されていたり、怪我をしないように車の表面がフカフカになったりしています。後編の大半が廃車場のシーンになるので、これは完全再現しなければと思って、多分日本の映画でもやったことがない規模のスケールで、準備に1年以上もかかりましたね。
岡田 翔太

ゼロから作り上げた“壮大な”廃車場セット

今回の映像化で一番感動した場面はありますか。
時にプロデューサーは、完成するまで本編を10回とか見るんですね。だからどんなに良い話だったとしても、4回目ぐらいからだんだん泣けなくなってくるんです。分析的に観てしまうというか。だけど、今回(後編)は10回見ても、毎回泣いちゃうんです。特にラスト15分のお芝居はみんな神がかっていて…。脚本を遥かに凌駕しているというか、本当にみんなすごいお芝居をしていて、スタッフも含めてみんなの力が結集して、期待していたものをさらに超えてきたと実感しています。
今後作りたいもの、構想などはありますか。
数年後にお客さんが求めそうなものを考えるのが好きなので、中身はちょっと申し上げられませんが、今流行っているものではないものを考えています。『東京リベンジャーズ』も今流行っていないものと思って企画したので、常に“逆張り”の企画をやりたいと思っていますね。

バラエティ志望だった岡田Pが
映画制作に傾注したきっかけ、
現在の糧となっている苦労話とは。

岡田 翔太
では話は変わって、フジテレビに入社したきっかけを教えてください。
僕はアメリカの大学に通っていましたが、ずっと漫画と同じくらい日本のお笑いが大好きで、中でも『ダウンタウンのごっつええ感じ』(1991年~1997年)に夢中でした。DVDは全部持っていましたし、松本人志さんの本も全部読んでいました。
だからシンプルに、こんな面白いものを作っている人たちは、スタッフさんも含め面白いに違いなくて、「そんな面白い人たちと是非、一緒に仕事がしたい!」と思ったのがフジテレビに入社したきっかけですね。
ではバラエティ志望だったのに、映画部に配属されたわけですが、戸惑いはありましたか。
もちろん戸惑いはありましたが、ちょうど僕が配属された時に、『踊る大捜査線』のファイナル(『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』2012年)が公開されて、新人研修でその完成披露試写会に連れていってもらいました。2000人超の収容を誇る国際フォーラムに、“踊る”の誰もが知っているあの曲が流れて、キャストのみなさんが登場したとき、それを後ろから見守るプロデューサー陣を見て「超カッコいい!」と、自分が希望した部署に行けなかった悔しさとか悲しさとかが一瞬でかき消されましたね(笑)。エンタメのキラキラとした面白さみたいなものがいっぱいこの部署にはあるんだなって思って、そこからすぐに順応しました。
これまで映画制作に携わって大変だった現場はありますか。
『真夏の方程式』(2013年)で制作進行(現場をサポートするADのような仕事)を担当したのですが、福山雅治さんが演じる湯川先生が少年とペットボトルロケットを飛ばしに行く途中で、二人がルーズ(広めの絵)でビーチを歩くシーンがあったんです。その時、西谷(弘)監督から「この海岸を手付かずの自然にしてくれ」って言われたんです。「え?どこまでですか?」って聞いたら、画面に映るところ全部という感じで(笑)。だから朝日が出る前に制作部全員で起きて、海岸をほぼ1キロぐらいに渡って、落ちているゴミを全て拾いました。その後、自分たちの足跡も全部消して…と。撮影は本当に楽しかったですが、その仕事をやっているときは「俺今、何やってんだろな…」って、ほんのちょっとだけ思いましたね(笑)。ただ、今から思えば、「細部にこだわる大切さ」を身をもって学んだ貴重な経験とも思っています。
岡田 翔太
岡田プロデューサーがよく見ているテレビ番組を教えてください。
テレビを見るときはバラエティ番組ばっかりですね。コントが好きなので『新しいカギ』(毎週土曜よる8時~)は大好きですし、最近始まった『まつもtoなかい』(毎週日曜よる9時~)も毎週見ています!
志望だったバラエティ番組を見て、自分も作りたいなとは思わないですか。
バラエティ番組を作りたいというのはもうありませんが、コメディー映画を作って大ヒットさせたいというのはありますね。だから、自分のできる形でお笑いをいつかやりたいなって思っています。

漫画が好き、役者が好き、スタッフが好き、テレビが好き、そして映画がこよなく好き。 「好きこそ物の上手なれ」・・・この言葉を体現し続けている岡田プロデューサー。 これからもテレビ局だからこそできる映画作りで、新たなムーブメントを巻き起こしてくれそうだ。

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