FUJITV Inside Story〜フジテレビで働く人〜

情野 誠人

『コムドットって何?』
『FNS27時間テレビ』を
手掛ける
情野チーフプロデューサーに聞く…
テレビの新しい見られ方と、
“フジテレビDNA”の継承

Vol.02

情野 誠人Masato Seino

フジテレビで働く人の仕事への取り組みや思いをシリーズで描く『FUJITV Inside Story』。
第2弾は、人気YouTubeクリエイター・コムドットの初冠番組『コムドットって何?』(毎週月曜24時25分~ ※関東ローカル)や、4年ぶりに復活する『FNS27時間テレビ』(7月22日~23日)を担当する、編成制作局バラエティ制作センターの情野誠人チーフプロデューサー。人気YouTubeクリエイターと共に番組を制作することになった裏話や『FNS27時間テレビ』に懸ける思いを聞いた――。
(2023年6月21日掲載)

“YouTubeも見たことなかった”…
そんな情野CPが知った
コムドットの魅力

まずは『コムドットって何?』を情野さんが手掛けることになったきっかけを教えてください。
昨年(2022年)4月の『突然ですが占ってもいいですか?』(毎週月曜23時~)にコムドットさんが出てくださった時、その制作チームと意気投合し、今後はテレビもやっていきたいという話があったみたいで。そこで彼らと一緒にバラエティ番組を作るなら…ということで、私に話がきました。
では情野さんがコムドットさんのファンだったということではないのですか?
正直あまりYouTubeも見たことはありませんでした(笑)。だけど、彼らの動画を見て、まず純粋に面白かったですね。いろんなジャンルをYouTubeでやっているのだと驚きましたし、何よりこれを毎日アップしていることに一番びっくりして。コムドットさんはすごい人たちなんだと思いました。
情野 誠人
YouTubeは短尺が主流ですが、彼らの動画は1時間近くもあってテレビ番組みたいですよね。
だから当然、動画制作チームがあるのだろうと想像していたら、編集も全部自分たちでやっていると聞いて驚きました。彼らと打ち合わせをしていても感じるのですが、彼らは従来のテレビタレントとは違うタイプの“クリエイター”なんですよね。僕らと同じような目線で、どうやったら面白くなるか?どうやったら多くの方に見てもらえるのか?ということを常に意識しているので、そういう意味でもリスペクトしています。
番組を見ていると、YouTubeをそのままテレビに持ってきたような、自由な印象を受けます。
番組を立ち上げる際、作家の鈴木おさむさん、演出の渡辺剛さん、編成担当の春名剛生さんを交えて、「YouTubeクリエイターを無理矢理テレビの企画や枠組みにはめ込もうとすると、芸人さんには太刀打ちできなかったり、役者さんと比べてしまうと華がなかったりとか、そういう側面があるのでは?」と、冷静にリーダーのやまとさんと話す機会がありました。だからやるのであれば、コムドットの良さをそのままテレビに出すことを考えよう、と。背伸びをせずに、彼らがYouTubeでやっていることをテレビのタレントさんとの掛け算でやってみたらどうかなど、常に彼らの良さをどのようにテレビに持ってこられるのかを意識しています。

また彼ら自身も、日本一の五人組になる・1億2000万人に“刺さる”ためには、テレビに出る必要があると思っていてくれたみたいで、彼らはテレビの視聴者を、そして私たちはテレビ離れの若者を、それぞれ引き込みたいという意味では、「WIN-WIN」の関係になっているのかな、と思っています。
すでに超人気のYouTubeクリエイターである彼らですが、テレビ出演の効果や手ごたえは感じていますか。
最初の頃は一緒にロケに行っても、中高生は知っていますが、年配の方は知らないことが結構ありました。しかし最近では、年配の方たちから「『コムドットって何?』見ています!」とか声をかけていただきますし、これまでYouTubeでは得られなかったターゲットの広がりみたいなものは感じています。
情野 誠人
あと、私も彼らと一緒に仕事をしていて、羨ましいと思う瞬間があります。誰もが地元の幼馴染みと楽しい思い出があると思いますが、次第にそれぞれ別の道に行って連絡が途絶え、会えても年に一回となったりするのが普通じゃないですか。でも彼らは地元で仲が良かったやつとずっと同じことをして、それが仕事になっていく感じって、本当に羨ましいし、憧れたりもします。人気YouTubeクリエイターである彼らのスローガンは「地元ノリを全国へ」ですが、そうした「仲間や身内ノリ」みたいなものは、意外にテレビが「見ている人にわかりにくい」などの理由で、一時期、淘汰してきた部分でもあるんです。しかし今は、そうした地元ノリみたいなものが若い人たちの支持を得ていて、とても勉強になりますし、それをテレビで表現することで、視聴者から「コムドットの5人の関係が凄く面白い」などといった声も届いています。これからも、その辺りを大切にしていきたいし、もしかすると新しいエンタメを作り出す一つのきっかけになるのでは、とも思っています。
どんな見られ方・どんなプラットフォームで見て欲しいなどの希望はありますか。
未来のテレビの作り方とか、今後のフジテレビの番組の作り方のある種、変革期の入り口だと思って、この番組に取り組んでいます。
僕は入社から14年間編成部にいて、「視聴率が何よりも大事」というところで育ってきました。しかし、これだけプラットフォームが増える中で、絶対切ってはいけないのが配信だと思っています。この番組も正直言ったら、視聴率はそれほど高くはないですが、配信数では何十万回再生を記録しています。もちろん彼らのYouTubeと比べたら少ない数字かもしれないけど、「何十万人の方が見た」というリアルな数字が出て、自分たちが作ったものをこれだけ見てくれているのだとわかって嬉しいですし、社内でも評価してもらいました。この再生数が今後の商品価値になっていくとすると、本当に視聴率に頼らない新しいコンテンツが出てきていると感じています。なので、当然今後は再生数を増やす必要がありますし、番組スタッフ全員が、TVerでランキング上位を目指そうとか、再生数を相当意識して番組を作っています。

憧れの『FNS27時間テレビ』を
作る高揚感…
“フジテレビのDNA”を
引き継ぎたい!

話は変わって、7月に放送される『FNS27時間テレビ』も担当(チーフプロデューサー)されると伺いました。現在、どのような準備をしていますか。
もう正直、「これだけやることあるの?」というくらいあります(笑)。だけど僕は学生時代に見た『27時間テレビ』がきっかけでフジテレビに入社したいと思ったので、それに携われることができる高揚感みたいなものがありますね。これだけ長い時間の番組だと、関係する人が多くて、とてもじゃないけど自分一人だけでは回らない(笑)。だから改めて今、どのように人に頼っていくかとか、チームプレーによる番組作りの大切さを実感しています。
情野 誠人
『FNS27時間テレビ』はかなり久々の放送となります。
『FNS27時間テレビ』は4年ぶりで、完全生放送の形では7年ぶりなんですね。久々なので、過去経験された方の話を聞きながら、手探り状態でやっています。でも聞いていると、この『FNS27時間テレビ』には、フジテレビらしさがたくさん詰まっているのだと感じています。このフジテレビのDNAみたいなものをしっかりと自分が吸収して、引き継いでいけたら、と思っています。今リアルタイムでバラエティを見ることが少なくなってきていると思うので、リアルタイムで見るバラエティの面白さを『FNS27時間テレビ』でうまく引き出せたらと思っています。生放送ならではのテレビに釘付けになってしまう感じ、テレビを通じて日本中が繋がっているというか、日常に変化がある感じになっていくと、テレビの良さみたいなものが改めて視聴者に認知されるのでは、と思っています。

思い出の番組は
『ふなっしー探偵』…
“編成”をやっていたからこそ
できた番組

情野さんは入社してずっと編成部にいたと伺いましたが、編成部ってどのような部署なのですか。
僕も最初は全くわかっていなくて(笑)。簡単に言えばタイムテーブルを作る部署です。どうセールスするかとか、系列局のどこはネット枠でどこはローカル枠とか、その運営の難しさ、大変さを編成部で知りました。
番組を作るというより、企画することが多いのでしょうか。
自分で企画も出して台本も書いて編集もやるという人もいますし、一歩引いてポイントだけを的確に言う人もいますし、企画を出すのがとにかく好きで、出しまくっている人もいますし、やり方は人それぞれです。
情野さんが携わった番組で思い出の作品を教えてください。
『ふなっしー探偵』(2016年放送)というドラマですね。僕が『志村けんのバカ殿様』を担当していた時に、ふなっしーが出演してむちゃくちゃ面白くて。その後、『世界ベスト・オブ・映像ショー 頂上リサーチ』(2014年~2016年にかけて放送された単発バラエティ)で、南極へ行ってもらったり…。何をやっても話題になるので、その流れでふなっしーでドラマを作ったら面白いなと思って企画しました。『志村けんのバカ殿様』から始まって、いろんな番組を経て、最終的にドラマになって…。僕が編成をやっていたからこそできた番組なのでは、と思っていて、思い出深い番組ですね。
情野 誠人

もはや、職人芸? 年季の入った情野CPの「お詫び」

入社のきっかけは2004年の
『FNS27時間テレビ』…
面白くて!なんじゃこれは(笑)!!

では情野さんがフジテレビに入社するきっかけの番組を教えてください。
さきほどもちょっと触れましたが、めちゃイケメンバーと、中居正広さんが出演した2004年の『FNS27時間テレビ』(『FNS27時間テレビ めちゃ²オキてるッ! 楽しくなければテレビじゃないじゃ〜ん!!』)ですね。大学の同級生から「絶対面白いから見た方がいい!」と勧められて見たら、本当に面白くて。「なんじゃこれは!」って思いました(笑)。それがきっかけですね。
情野 誠人
情野さんが好きで見ている番組はありますか。
『世界の何だコレ!?ミステリー』(毎週水曜19時~)は、人の描き方がうまいなと、嫉妬しながら見ています(笑)。他にも『千鳥の鬼レンチャン』(毎週日曜20時~)は、出演者をあれだけイジってスターにする感じとか「すごいなぁ」と感心しています。
最後に、情野さんが今後作りたい番組などあったら教えてください。
“世界もの”を作りたいとずっと思っています。アフターコロナで、テレビを通して伝えられるものの一つに“知らなかった世界を見せる”というのがあると思っていて、“世界もの”の開発をしたいというのが直近の目標ですね。あと将来的には、コムドットさんもそうですが、テレビスターを生みたいと思っています。それはコムドットさんがテレビを通してさらに上のレベルにいけたらそれはすごく幸せですし、それとは別に、今くすぶっている芸人さんなのか、全く知られていない教授なのか、まだ分からないですが、今世に出てない人を見つけて、その人を描きながらテレビスターを輩出できたらいいなと思っています。

さわやかな笑顔で理路整然と質問に応じてくれた情野CP。インタビュアーをまっすぐに見据えるその瞳からは、番組作りへの強い信念と熱い思いが感じられた。フジテレビのDNAである“楽しい”を新しく塗り替えてくれそうな生粋のテレビマンのチャレンジに期待したい。

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