シエラレオネ共和国を訪問して
 
photo シエラレオネ共和国は「世界でもっとも貧しい国」と言われている。
移動も、空港から首都フリータウンへ行くにはヘリコプターに乗らなければならない。つまり道がないということなのだが、皆さんはここまで聞いてどういう国を想像するだろうか?
正直私も、皆目見当もつかず、もしかしてビルや電話、車もないかも…なんて思っていた。
しかし到着して驚いた。
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みんな携帯電話を持っているし、信号はないものの中古の日本車がバンバン走り回り、おまけに渋滞も…。マーケットにも活気がある。これが世界最貧国? 何をもって貧困というんだろうか。この国をどう取材していくのだろうか…。これが私の抱いた最初の思いだ。
しかし、私が感じたもの、見たものは単なる表層の印象に過ぎなかった。数日後、われわれ取材陣はシエラレオネの本当の問題に直面することになるのだ。
 
photo まずは街を歩いてみる。強烈な日差しにクラクラする。軽く32℃くらいはあるかもしれない。
カメラを向けると、街の人たちが騒ぎ、怒り、何やら罵倒するように声を荒げる。最初は気付かなかったが、その理由がすぐ分かった。
一人の青年に声をかけた。彼は20歳で仕事は道に露店を出し洋服を売ること。売り上げは微々たるもので1ヶ月1500円にしかならないという。彼は伏し目がちに取材にこたえてくれた。
「俺たちはもうジャーナリストやカメラマンに何も期待していないんだ。名前聞いて、勝手に写真を撮って、『これが世界の貧乏国だ。これが可哀そうな子供たちだ』って言われていることに腹が立つ。俺たちは見せものじゃない。お前たちだって話を聞くだけ聞いて、大げさに伝えるだろう。世界中の笑い物にされて、それでいて生活は何も変わらない。今だってカメラを向けられていい気はしないよ」
正直な意見だった。

世界最貧という「肩書き」は、シエラレオネへ各国のメディアを呼び集めたようだ。あのデヴィッド・ベッカムも訪れたという。シエラレオネの人々は期待に胸を膨らませたが、結局、生活は変わらないままだった。そして学習した。「あいつらは俺たちを、ただ可哀想と哀れんで撮っているだけだ」と。
シエラレオネに来たばかりの私にとって、彼の言葉はショックだった。でも出来る限り誠意ある取材をしようと思ったのは彼のおかげでもあった。この国には外からは見えない何かがある。貧困だけではない心の深い闇を抱えた人がたくさんいるのかもしれない。
 
今回の取材期間は12日。その中で3人の子供たちに出会ったほか、多くの人の思いを聞くことができた。すべてのストーリーをここに記したいが、この報告書では私が一番考えさせられ、そして貧困というテーマに直面することになった「病院取材」に触れたいと思う。

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