フジテレビジュツの仕事

    新しいカギ

    毎週土曜日20:00~21:00

    • 美術プロデューサー
      平井 秀樹
    • アートコーディネーター
      椛田 学/徳永 法子
    • 大道具
      裏隠居 徹
    • 大道具操作
      柏木 優輝/石橋 星香
    • アクリル装飾
      堀内 重彰/田形 渚
    • 特殊装置
      桑島 亮太
    • 特殊装置操作
      加藤 直
    • 植木装飾
      小笠原 了平
    • 装飾
      高祖 朋代
    • ファイバーワーク
      中川 祐花
    • 視覚効果
      倉谷 美奈絵
    • アートフレーム
      石井 智之
    • 衣裳
      林 春来
    • 持道具
      若林 瑞帆
    • メイク
      大友 麻衣子
    • かつら
      寒郡 千恵

    週間フジテレビ批評『新しいカギ』特集より
    永井達也 美術デザイナー インタビュー

    ビジュツのヒミツ①

    ユニットパネルが大活躍

    フジテレビのコント番組の伝統をしっかり受け継ぎつつ
    新しい笑いを追求している「新しいカギ」。
    様々な設定で、強烈キャラが大暴れします。

    フジテレビジュツでは
    コントごとに別の美術セットを用意します。
    ということで、2つのスタジオには所狭しと
    コントセットが並ぶことに。

    たとえばこちらの「しんかぎ幼稚園」。
    ゲストのゴリエさんも童心に帰ってやんちゃしてました。

    さりげなく「カギ」マークもデザインされています。

    コントでは“それっぽさ”が重要。
    手早く、安価に、安全に
    “それっぽい”セットを建てねばなりません。
    そこで力を発揮するのが、ユニットパネルなんです。

    フジテレビ倉庫では使い勝手のいい
    ユニットパネルを保管しています。
    レンガ風の壁紙を張った「赤レンガ」や
    大理石風の「マーブル」など。

    こちらは「ブロック塀」。
    基本は使いやすい定型サイズで作られています。
    「サブロク(3×6尺)」とか「ロクキュー(6×9尺)」とか

    ユニット柱の種類も豊富。
    尺柱(1尺角)や半柱(半尺角)、長さも9尺や12尺などなど。

    実は、持ち運びしやすいように、空洞になっています。

    ユニット管理台帳には、あらゆる要望に応えられるよう
    様々な情報を写真付きでファイリング。

    ですがこの台帳、かなりの年代物になってしまったので
    最近では、WEB上で管理しています。

    これらに、平台箱馬を組み合わせ
    人形で固定して鎮を置けば、“それっぽい”セットの完成。

    たっぱのあるパネルは「鉄人形」でしっかり支えます。

    でも収録の度に、穴をあけられたり、
    塗り替えられたりするのがユニットパネルの運命。

    ということで、専用の「修理工場」もあるんです。

    この回では
    「力見なんでもセンター」が水のトラブルに挑みました。

    スタジオ設備の給水栓から延びるホース、
    しっかりと防水処置された床。
    特殊効果のスタッフが何かを企んでいるようです。

    さらにイントレの上には、業種を超えて美術スタッフが集結。
    何やら大変なことが起こる予感。

    ことほどさように、一見何の変哲もない美術セットに
    意外な仕掛けが潜んでいるのもコント番組ならでは。
    仕掛けの裏側については動画コレクションを是非ご覧ください。

    2021年11月

    ビジュツのヒミツ②

    コントを支える
    かつら・衣裳・持道具

    コントの美術はシチュエーションとキャラクターが命。
    このバックヤードスペースに集うのは…
    そう、おなじみ“ビジュアル系”の面々です。

    出演者をコントキャラに変身させるビジュツの技。
    スタジオ前室やセット裏には
    コントの数だけアイテムが並びます。
    設定に合わせた衣裳の数々。

    ジャラジャラ系・モフモフ系などの装身具や履物は、
    持道具の担当です。

    そして、やっぱりコレ。
    かつらを被った瞬間にスイッチが入る出演者も多いとか。

    担当は「床山」スタッフです。
    ドラマと違いコントでは、思い付きで急発注が多いので
    仕込みも大変。一から作る時間がないので、倉庫の在りモノを
    急いでアレンジします。

    こ人毛を表す「G」や化学繊維の「K」など、
    謎の記号で分類された棚。
    「L」はロング、「S」はショートなので
    「CKS」は「CX(フジテレビ)用の化繊のショート」という意味

    前アミ」とは
    前面の生え際がネット(網)仕様になっているもの。

    ネットに植毛すればこんなカンジに。

    他にも「ネット散切」や「ゴマ」など、
    かつらの専門用語がズラリ。

    時には、
    “マジックハンド付リーゼント”なんて発注もあるらしい。

    添木と針金で固定しないといけないので、
    ほとんど工作作業です。

    “ビジュアル系”コントでは、
    「色物」の引き出しにあった在りモノをベースにしました。

    中は伸びるネットなので、フィット感は抜群です。

    みの」と呼ばれる付け毛でアレンジすることも。

    美容師さんよろしく鏡の前で仕上げます。

    結いぼうず」と呼ばれる台座の表面には、滑らないように
    シリコンが。床山スタッフごとに“マイ結いぼうず”があって、
    素材が違うとのこと。

    仕込みが終わったら、
    置きぼうず」や「筒ぼうず」にのせて準備完了。

    “ビジュアル系”のチェックのため、
    スタッフが被ったり身に着けたりしてみました。
    衣裳はちょっとおしゃれなフェイクレザーのジャンパーで。

    ジャラジャラとメタル系の小物とともに、“鼻輪”も装着。
    かつらを被ったらひとまずチェックOK。

    スイッチが入ったかどうかは別として、
    持道具チーフもまんざらでもない様子。

    もちろんメイクアップスタッフも大活躍。
    その奮闘ぶりは番組公式YouTubeチャンネルで。

    2021年11月

    デザインのヒミツ

    新しいカギ

    ーバラエティー番組の中でも、とりわけコント番組はセットを数多く作ると思いますが、担当となった時に思ったことは?

    永井 達也

    永井

    コント番組はこれまでにも『ただ今、コント中。』『Do8』『ウケメン』などいくつか受け持ったことはありました。でもゴールデン帯の、しかもレギュラーでコント番組を担当するのはこの番組が初めてです。この機会がもらえたことは率直に嬉しかったですね。同時に、気を引き締めて臨まないといけないなという気持ちでした。

    新しいカギ

    ーコントのセットデザインでは、他のバラエティーやドラマと違うところはありますか?

    クイズや歌番組などよりは現実の世界観を取り入れますし、一方でドラマほどはリアル過ぎない作り、とバラエティーとドラマの中間を狙おうと意識しています。
    例えば「サカガミくんとオオタくん」のセットですが、ドラマで作る幼稚園のセットに比べると、かなりリアリティーを欠いています(笑)。ドラマであれば、実際の幼稚園のように部屋の壁をグレー系などの落ち着いた色にするところですが、「しんかぎ幼稚園」は部屋の壁3面を全て違う模様の壁紙にしました。とにかく明るくポップになるように、色数もかなり多くして、幼稚園っぽさを誇張しています。リアルでこんな幼稚園があったらきついと思うくらい(笑)、わざとらしく、うるさい絵柄ですね。

    新しいカギ
    新しいカギ

    ー最も苦労したセットは?

    初回放送の一発目、崩れる屋台のセットです。「屋台崩し」はドリフの時代からの往年の伝統芸ですが、崩す時の力加減が微妙で、実際にやってみないとわからないんです。ミスすると出演者がけがをするし、事故になるので、安全面でのプレッシャーが一番大きいですね。あまり何度もシミュレーションするとセットが壊れてしまいますが、繰り返し試して確認しないと危険です。ベテランの大道具スタッフに教えを乞いながら、特に慎重に進めたセットです。

    ー収録中に、出演者の動きに合わせてデザインを変えていくこともありますか?

    あります。例えば「力見引越しセンター」というコントですね。チョコレートプラネットの長田さんが扮する力見力(りきみりき)というキャラクターが、力み過ぎて物を破壊してしまうという内容なのですが、初めてそのコントをした時に、美術が作った発泡スチロールのベッドを、予想以上に素晴らしくダイナミックに壊してくれまして(笑)。それからは、「こういう構造にしておけば、長田さんはきっととてつもない壊し方をしてくれる」と、スタッフ一同、勝手な期待を込めて作っております。そして実際、いつも期待を上回る壊し方を見せてくれるんです。そうやって出演者の熱意がセットを介して伝わってくると、携わるこちらも美術冥利に尽きますね。

    新しいカギ

    ー番組でこれまでにデザインしたコントのセットの数は?

    おそらく100は超えているかと……。120杯くらいでしょうか。

    ーそれだけ多く作ったセットが一瞬で壊されてしまうところにもったいなさも感じますが、デザイナーとしてはいかがですか?

    ちゃんともったいないと思っています(笑)。ですので、他のコントセットを一部仕上げだけ変えて使い回したりもして、少しでも制作費を節約できるように努力していますよ(笑)。

    新しいカギ

    ー他のコント番組では見られない、『新しいカギ』ならではのセットはありますか?

    発泡スチロールで作った壁や物をたくさん壊したり、落とし穴に落としたり、大きなプールを組んだり、屋台崩しをしたりと、スケールが大きいセットを多く作らせてもらっているのは『新しいカギ』ならではかと思います。

    新しいカギ

    ーデザインで遊んだところはありますか?

    ライブハウスのドリンクコーナーのカウンターに、小道具のチラシをたくさん貼ったのですが、その一枚一枚に出演者やスタッフの写真や名前を密かに入れ込んで、よく見ると笑えるようなものを作ったりしています。
    美術チームも楽しんで作っていますので、視聴者の方々にも、何も考えずに楽しんで見ていただけると嬉しいです。

    新しいカギ

    (2021年10月)

    新しいカギ