フジテレビジュツの仕事
めざましテレビ(2023)
2023年3月27日〜
毎週月〜金曜日 5:55~8:00
- 美術プロデューサー
- 双川 正文
- アートコーディネーター
- 徳永 法子
- 大道具
- 裏隠居 徹/矢部 佳夏/松尾 茂毅
- 大道具操作
- 杉本 孝宏
- アクリル装飾
- 松本 健
- アクリル装飾操作
- 池澤 明徳
- 特殊装置
- 桑島 亮太/山崎 峰生
- 電飾
- 伊藤 伸朗/奥野 透
- 装飾
- 乾川 太志
- 生花装飾
- 小柳 幸絵
- 装飾人形
- 西村 怜子
- メイク
- 山田かつら
ビジュツのヒミツ①
新セットはCGとコラボレーション 緑はダメよ!?
![](photo/w2308n01/secret01_ph01.jpg)
30周年イヤーの新セットは、
朝の光が降り注ぐイメージでデザイン。
リアル&バーチャルがコラボレーションした空間です。
![](photo/w2308n01/secret01_ph02.jpg)
セットの中心には、
“リアルめざましくん”がいる「光のタワー」。
朝の光をシンボリックに表現しました。
![](photo/w2308n01/secret01_ph03.jpg)
タワーのフォルムを形づくるのは、色んな長さのアクリル。
白く塗った木材の土台に配置しました。
曲線部分には鉄骨を使用。
![](photo/w2308n01/secret01_ph04.jpg)
テープLEDなど電飾を効果的に仕込んで光を反射させます。
そこに柔らかな照明を当てるとご覧の通り。
![](photo/w2308n01/secret01_ph05.jpg)
まさに「光のカーテン」。
角度によってはオーロラっぽく見えたりして。
![](photo/w2308n01/secret01_ph06.jpg)
下手(しもて)のコーナーは、カラフルな積み木の世界。
2台のLEDモニターがはめ込まれていて、
流す映像によってはリアル&バーチャルが融け合う仕組みです。
![](photo/w2308n01/secret01_ph07.jpg)
上手(かみて)には、めざまし太陽の窓セット。
「リアルバージョン」なので、この前でプレゼンもできます。
![](photo/w2308n01/secret01_ph08.jpg)
緑のカーテンを閉めると、クロマキーバックに早変わり。
CGと合成した「バーチャルバージョン」として使えます。
なので、出演者の衣裳や持ち物に「緑」の使用はご法度ということに。
![](photo/w2308n01/secret01_ph09.jpg)
合成した映像はこんなカンジ。
背景のCGを変えれば、どんな世界にも飛んでいけるのです。
![](photo/w2308n01/secret01_ph10.jpg)
エンタメコーナーの美術セットは
リビングっぽい生活オブジェであふれたホッとできる空間。
“積み木”や“オーロラ”のニュアンスも少し加わっています。
![](photo/w2308n01/secret01_ph14.jpg)
今回のセットはフルリニューアルですが、
実は、前のセットにもいた仲間たちも引き続き活躍中。
季節感の演出として飾られています。
![](photo/w2308n01/secret01_ph15.jpg)
梅雨の季節は、カタツムリやてるてる坊主。
![](photo/w2308n01/secret01_ph16.jpg)
夏には、こんな仲間たちも登場。
ぜひ探してみてください。
2023年8月
ビジュツのヒミツ②
“バーチャルめざましくん”新登場
ゲームコントローラーで操作!?
![](photo/w2308n01/secret02_ph01.jpg)
『めざましテレビ』30周年改編の目玉の一つが
めざましくんのスタジオ生出演!
フジテレビ独自のバーチャル技術で実現しました。
![](photo/w2308n01/secret02_ph02.jpg)
この“バーチャルめざましくん”をリアルタイムで動かすツールは副調整室にあるタブレットとゲームコントローラー。
緑のクロマキーを使ってスタジオ映像と合成しています。
![](photo/w2308n01/secret02_ph03.jpg)
体の動きはゲームコントローラーで指示。
ボタンやレバーに動きのパターンが仕込まれているんです。
![](photo/w2308n01/secret02_ph04.jpg)
顔の表情はタブレットのカメラで読み取ります。
こんなふうに口を開けば、めざましくんも満面の笑み。
![](photo/w2308n01/secret02_ph05.jpg)
目をつぶって口をすぼめれば、こんな顔にもなります。
顔の動きに合わせて自由自在。
![](photo/w2308n01/secret02_ph06.jpg)
“バーチャルめざましくん”を作ったのは
CGデザインルームの新規開発スタッフです。
![](photo/w2308n01/secret02_ph07.jpg)
表情の読み取りにはiPhoneなどについている
AR開発用の機能「ARKit」を活用しました。
体の動きはゲームエンジンを使ってプログラミング。
![](photo/w2308n01/secret02_ph08.jpg)
ゲームコントローラーとの相性もよく
制作スタッフでも手軽に操作できるものになりました。
![](photo/w2308n01/secret02_ph09.jpg)
キャスターの隣で笑顔を振りまくめざましくん。
表情豊かに動き回ったり、元気におしゃべりしたり、
![](photo/w2308n01/secret02_ph10.jpg)
「スマイル・チャージ」のエクササイズも見事にこなします。
その裏ではコントローラーのボタンやレバーを動かしながら、
コメントに合わせて口をパクパク・・・
毎朝スタッフがめざましくんになりきっているんです。
![](photo/w2308n01/secret02_ph11.jpg)
『めざましテレビ』恒例のじゃんけんは必須の機能。
当初はグー、チョキ、パーを
コントローラーのボタン操作で選択するという設計でしたが…。
![](photo/w2308n01/secret02_ph12.jpg)
何せ生放送ですから、スタッフが慌てて出し間違える危険も。
アプリを立ち上げる時に選んでおくというスタイルに再設計
しました。
![](photo/w2308n01/secret02_ph13.jpg)
続いては出演者と一緒に“立ちセット”に移動。
“バーチャルめざましくん”もちゃんとカメラに映るように
「特製お立ち台」が用意されました。
![](photo/w2308n01/secret02_ph14.jpg)
横幅50cmほどの楕円形でめざましくんにぴったりサイズです。
![](photo/w2308n01/secret02_ph15.jpg)
とはいえ、何と言ってもめざましくんはバーチャルですから、
ほんのちょっとお世話が必要。
まずは、バーチャルカメラと合成するためのキャリブレーションを放送前に行います。
![](photo/w2308n01/secret02_ph16.jpg)
慎重に台の上にセットして定位置をメモリー。
さらに番組の進行に応じて、めざましくんの位置が変わるので
![](photo/w2308n01/secret02_ph17.jpg)
そのすべての位置を、コンピューターに記憶させていきます。
これで複数のカメラとリアルタイムで連動OK!
![](photo/w2308n01/secret02_ph18.jpg)
こういう作業を経て、やっと“バーチャルめざましくん”は
番組に欠かせない“出演者”になってくれたのでした。
ちなみに、この時“リアルめざましくん”はセットにいません。
お気づきでした?
2023年8月
CGのヒミツ
![](photo/w2308n01/tech_ph01.jpg)
インタビューに応じる落合信人さん
ー今回、めざましくんをなぜ動かすことになったんですか?
![](photo/w2308n01/tech_ph01.jpg)
インタビューに応じる落合信人さん
落合
僕は30年ぐらい前、大学生の時にCGを始めたんですが、新しい技術にワッと飛びついて技術の進歩とともに自分も成長してきました。ところが10年くらい前から、かなりリアルなCGが作れるようになってきたのに、世の中であまり騒がれなくなったんです。すごくよくできたCGを使った映画でも、あまりヒットしない。その時思ったのは「もうCGだけではみんな喜ばないんだ」ということ。その頃からプログラムの勉強を始めました。プログラムを使ってCGを動かすとか、新しいことをしたいなっていうのがまずあったんです。
それで思ったのは、テレビってリアルタイムですよね。プログラムがあれば、CGをリアルタイムで動かせるんじゃないのかなと。それが、キャラクターをリアルタイムで動かしてテレビに出すというアイディアにつながりました。
![](photo/w2308n01/tech_ph02.jpg)
バーチャルめざましくんの開発現場
![](photo/w2308n01/tech_ph03.jpg)
プログラムを使ってCG開発
ー今回面白いなと思ったのは制作スタッフがiPadとゲームコントローラーでCGを動かしていることです。なぜこのツールを使ったんですか?
今の技術を使えば、できることはすごく増えたんですけど、テレビでは安定的にエラーのないものを構築しなきゃいけないので、なかなか難しいことをやれないところがあります。じゃあ難しいことはやらなきゃいいのかっていうと、そういうわけではない。どれぐらいシステムを簡素化できるかトライして、今回うまくハマった感じはありますよね。結果論でいうと、iPadというモバイル端末でシステムを作ったのは良かった面が結構大きかったと。モバイルって、まずそんなに動かなくなることがないですよね。一日に何回も点けたり消したりしているわりには何年ももつってことは、かなりそのシステムは堅牢にできている。そう考えると、意外とバカにできないと思うんです。
![](photo/w2308n01/tech_ph04.jpg)
バーチャルめざましくんの開発画面
ーモバイル端末を放送用の機器として使うことは、あまりありませんでしたよね。
多分発想がなかったんじゃないですか。最近のものはスペックが高いので、いろんな分野で「もうiPhoneでいいんじゃないの」っていうことも多いですよね。例えば工事現場では、今はモバイル端末で測量したり、データを入れたりとか結構やってます。なぜかというと、それは通信もできるし、写真も撮れるし、音声も入れられる。実は、ものすごく高度なセンサーが付いた小さなパソコンっていう側面が結構強いんです。パソコンと比べると容量が小さいので、そこをちょっと気にしなきゃいけないぐらい。例えば今回は、めざましくんの顔の表情をiPadのカメラで撮りながら動かしてるんですけど、普通のパソコンを使おうとするとカメラが付いていなかったりします。別にカメラを購入して設置しなきゃいけない。そのカメラがまずどういうものがいいのか、どう接続してデータをどういうふうにパソコン内で使うかってこともプログラムで書かなきゃいけない。そんなことを考えると、オールインワンで入っているモバイル端末だとすごく開発がしやすいんです。
ーゲームコントローラーは?
外部からの情報の入力は、カメラの他にゲームコントローラーとかマウスやキーボードでできます。その中では、ゲームコントローラーがみんな使いやすいんじゃないかなっていうのがありました。というのもCGを動かす作業は、基本的に番組側に渡そうと思ってたんです。別の番組でも同じシステムを作ったら、2つの番組に顔を出さなければいけない。そんなにCGのスタッフはいないですからね。
それから現場の人たちが工夫して使ってくれるっていうのが、一番いいことだと思うんです。こちら側が手を出すと、制作側の自由な発想っていうか、自分たちでやってるっていう感覚が薄くなってくるんで、全部渡しちゃえば現場でワイワイやってくれる。実際そうなっていると思っています。システム上のエラーがないっていうのはよかったですね。結局エラーがあるとその度に現場に行かなきゃいけないし、制作側も「大丈夫か?」って感じになるので。
でもテレビの運用としては珍しいですよね。CGのスタッフゼロで、CGをずっと動かしてるって(笑)。よくよく考えると、他にはないかもしれない。
ー今回の開発で苦労したところありますか?
プログラム的には、カメラのフェイシャル連動が一番面倒でした。顔の動きを撮っているのは、元々iPadに入っている「キャラクターを顔で動かす機能」で、そのまま流用しています。あらかじめ52パターンの表情を取り込んでおいて、その表情をミックスしてふさわしい表情を作ります。これに合わせてめざましくんの表情を52パターン作ったんですが、まあまあ手間がかかりましたね。めざましくんって、人の顔とはちょっと違うじゃないですか。例えば、めざましくんには眉毛がないんですよ。人間だったら、眉毛を上げる時はそのようにモデリングをするんですけど、めざましくんの場合は、目の上の淵の部分をちょっと上げるようにしました。あとは、めざましくんって基本的に口が開いてるんです。普通、人間は閉じてるんですけどね(笑)。
![](photo/w2308n01/tech_ph05.jpg)
こちらがデフォルト状態、無表情のめざましくん 右側に顔のパーツのパラメータ
![](photo/w2308n01/tech_ph06.jpg)
眉がないめざましくん、眉を上げる表情は…左目に注目! パラメータは100%に
ー今後もプログラムが入ったCGを作っていこうと思いますか?
そうですね。僕はもうそっちをやった方がいいなあと思っています。CG業界的には、プログラムと関連のある領域がどんどん増えてるんです。新規開発の伸びしろってそういうところにあるんじゃないかなって。でもこれはCGだけの話じゃなくて、テレビ技術では照明にもプログラムが入ってきてますし、カメラも中身はほぼパソコンなんで。美術もデザインがそうですよね。実は世の中そのものがそっちに動いちゃってるんです。だからいろんなところで、プログラムをやらなきゃいけない時代に変わってきてると思ってます。今回プログラミングを使って、リアルタイムでめざましくんを動かしましたけど、例えばテレビのIP(知的財産権/Intellectual Property)をネットに持っていくこともCGとプログラムでできるので、そんなこともやりたいですね。メディア業界ではネットがどんどん伸びてますから、ネットとつながりを持つことは重要だと思います。新しい技術はAIでも何でもプログラムとつながっていますから、テレビのIPもプログラム分野と結びつくことで、どんどん発展していくんじゃないかと思います。
(2023年8月)
![](photo/w2308n01/tech_ph07.jpg)
思いっきり両目と口を動かすと…こんな感じに!
![](photo/w2308n01/tech_ph08.jpg)
思いっきり両目と口を動かして…動作はOK!
![](photo/w2308n01/tech_ph13.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph09.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph10.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph11.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph12.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph14.jpg)
![](photo/w2308n01/tech_ph15.jpg)