フジテレビジュツの仕事

    ポップUP!

    2022年4月〜 
    毎週月〜金曜日 11:45~14:45

    • 美術プロデューサー
      古川 重人
    • アートコーディネーター
      三上 貴子/中村 秀美/石田 博己/堀内 信武/林 勇/
      鈴木 あみ/平山 雄大/小野 秀樹/谷元 沙紀/大村 光之
    • 大道具
      岩崎 隆史
    • 大道具操作
      渡辺 桃加
    • 装飾
      門間 誠
    • メイク
      山田かつら
    • 電飾
      石井 誠
    • アクリル装飾
      加藤 徳格
    • 生花装飾
      小柳 幸絵
    • マルチ
      斎藤 淳之介

    ビジュツのヒミツ①

    不思議な青空マーケットには
    何がある!?

    お昼のフジテレビは、気分が自然とUPするPOPな世界。
    スタジオセットも「ワクワク」「ドキドキ」を意識しました。

    「気になる話題なら何でもミーハー心全開で」。
    そんな番組コンセプトを“青空マーケット”空間で表現。何があるか行ってみないとわからない、どこかの街の不思議な市場です。

    もちろんそこはいつでも青空。
    屋外を感じさせる天幕も配置しました。
    その下では、種々雑多な品を扱うお店が営業しております。

    一番上手(かみて)は、異空間へ誘う「ランプ屋さん」。

    後ろに見えるのは、
    電飾スタッフが作り出す“マジカル水路”です。

    南国の「フルーツ屋さん」は、鳥が群がっても気にしない様子。

    怪しい「スパイス屋さん」では、
    香辛料以外に謎の石や粉を扱っているという噂です。

    他にも、何でもござれの「布屋さん」や

    クセのある珍種も揃えた「花屋さん」などなど。
    変なものも混じっていますが、きっと掘り出し物も見つかるはずです。

    どの店が出演者の背景で映っても「ドキドキ」「ワクワク」が
    表現できているか?装飾スタッフの小物集めは、物量的にも
    センス的にも過酷でした。

    そんな彼らが「遊んでいいよ」と任されたのが
    「古道具屋さん」。
    とりあえず今はこんなカンジですが、
    いつの間にか品揃えが変わっているかもしれません。

    2022年10月

    ビジュツのヒミツ②

    大道具スタッフが作り出す
    “曲芸的陳列”

    通常のテレビ美術では、大道具スタッフが「建て込んだ」セットに、装飾スタッフが「飾り込む」のが手順。
    でも今回は、大道具スタッフも“繊細なディスプレイ”で
    その技を披露しています。

    こちらは、飛び出す絵本(pop-up book)が目を引く
    「本屋さん」。装飾スタッフが数ページずつ丸めて作った
    本のオブジェもあります。そして

    「一体どうやって手に取るんだ!」と突っ込みたくなるのが
    コレ。アーチに積まれた“本の曲芸的ディスプレイ”。
    この部分は大道具スタッフの手による仕事です。

    毎日使うセットなので、
    強度も考え鉄の芯を通して支えています。

    こちらのヘンテコ「食器屋さん」でも、コップや皿がありえない陳列に。

    不思議で不安定なディスプレイで、番組の目指す
    “躍動感”や“ワクワク・ドキドキ感”を演出しました。

    さらに、「オープニングCGで弾け飛ぶカラフルボールが、
    スタジオに飛び出して跳ね回ったら」という発想から
    セットのあちこちを「放物線」や「矢印」が横切るデザインに。
    弾けるようなポジティブな“躍動感”をイメージしました。

    実は、下手(しもて)に作ったポップコーンは、
    リアルとバーチャルをつなぐ不思議なオブジェ。

    そこからは、弾け飛ぶポップコーンに混じって
    CGのパーツが飛び出ているという説があるとかないとか。

    猫も注目しています。

    2022年10月

    デザインのヒミツ

    ー今回の美術セットのコンセプト・イメージは?

    安部 彩

    安部

    様々な情報を扱う番組の特色を、いろんな物が行き交う“青空マーケット”で表現しています。そこはカルチャーが交差する場所で、とにかく活気があって何もかもが動き出しそうな世界をイメージしています。不思議なスパイスも加えたいので、アラジンの世界というかちょっと魔法めいたニュアンスも意識しています。たとえば下手にあるポップコーンの入った容器の中や、壁に浮かぶ雲状のオブジェの裏などにテープLEDが仕込んであるのですが、その色味もエキゾチックにしています。LEDの特徴として色はもちろん調光も自由自在なので、明るさを変化させたり色を回したりといった電飾の技を使って、動き出しそうな雰囲気を狙いました。

    ー確かにポップコーンは印象的ですね。

    あのポップコーンは、大道具スタッフが一つ一つスチロールを削り出して作った労作なんです。たとえば空中に飛び出したあの大きな一粒については、私からは「七寸角くらいで」と大きさの指示を出しただけ。その後は、大道具スタッフが本物の小さなポップコーンを前に集まり、こっちから見たりあっちから見たりと徹底的に観察してから、カッターなどを使って手作業で削っていったと聞きました。最近はレーザーカッターや3Dプリンターも進化して、プログラミングでできる作業も増えたのですが、手彫りの出来栄えが勝ることもあるんです。

    ー他にこだわった部分はありますか。

    天幕でしょうか。タイトショットが多い情報系の番組では珍しく「ポップUP!」は、全体が見えるルーズショットを撮ることがあるんです。美術デザイナーとしては嬉しいことで、その時に映るホリゾントの青空がのっぺり見えないように、天幕を張ることにしました。この素材選びにひと苦労。結局、少し伸びる布を数か所から引っ張るというやり方が、一番いいラインが出るのですが、素材の布に色のバリエーションがない。染めるのか、塗るのかなど試行錯誤の末、布に“出力する”ことで微妙な色合いのニュアンスを出すことに成功しました。イメージしたものを実際に作り上げるために、業種を超えて美術スタッフが知恵を出し合ってくれるので心強いです。
    あとは、今はやはりどうしてもコロナ禍の影響で、出演者同士のディスタンスを保つ配置が求められるので、横広のセットになりがちです。マーケットの店が並んでいたり、矢印や球が弾んでいるオブジェを作ったりして、横へ広がる世界でも動きのある空間づくりを心掛けました。もちろんアクリルの遮蔽版も番組専用のものです。

    (2021年7月)