フジテレビジュツの仕事

    めざまし8

    2020年10月〜 
    毎週月〜金曜日 8:00~9:50

    • 美術プロデューサー
      古川 重人
    • アートコーディネーター
      石田 博己
    • 大道具
      宮路 博貴
    • 大道具操作
      石井 一之介
    • アクリル装飾
      犬塚 健
    • 電飾
      森 智
    • アートフレーム
      石井 智之
    • 装飾
      菊地 誠
    • 幕装飾
      中川 祐花

    「めざまし8」
    渡邊貴 チーフプロデューサー
    × 齋田崇史 美術デザイナー 対談

    ビジュツのヒミツ①

    シャープな白い直線世界に浮かぶ
    「8」を探せ!

    フジテレビの新しい朝の顔として放送中の番組。
    シンプルなフォルムに色が交錯する番組ロゴの世界観が、
    スタジオセットとして立ち上がりました。

    まず目に飛び込んでくるのは、
    シャープな直線が印象的な白いセットパネル。

    一つとして同じ形が存在しないユニークな造形は
    近くで見ると凹凸による立体感が際立っています。

    直線を感じる溝は合板の重ね技。照明や電飾の当て方によって、直線ラインが浮かび上がる仕掛けです。

    とある一面はグレーの塗料が。光を当てずとも効果が得られる「描いた影」も随所で活躍しています。

    白い世界に散らばる「色」の演出は、組み合わせとバランスが大事。布やオブジェで、全体の印象を少し和らげています。

    形が独創的なので、傾いた棚のオブジェも体勢維持が大変そう。

    “抜け”にチラッと見える吊り幕にも、さりげなくプリズム模様。
    色の選定にも気を遣いました。

    コメンテーター席の後ろの“抜け”も、裏に回れば立体的です。

    そして番組ロゴそのままに、カラフルな「8」オブジェを程よく配置。

    吊りものの中には「ダブルの8」も。

    恥ずかしそうにのぞき見しているような「8」もいます。

    プレゼン台も2つ合わせて上から見れば
    「8」に見えなくもない。

    もちろん、時計も8時を指すようにしておきましょう。

    2021年8月

    ビジュツのヒミツ②

    バーチャルCGは
    アナログミックス!?

    オープニングから情報満載のスタートダッシュ。
    MCの背景には、赤とオレンジで色分けされた
    巨大なランキングボードが登場します。

    出演者の映像ときれいに合成されていますが、
    テレビ通の皆さんにはおなじみの表現法ですね。
    ご存じ「クロマキー」と「バーチャルCG」。

    『めざまし8』のクロマキーボードは緑パネルが3枚です。
    きっちり効果を出すためには、均一の明るさで照らさなければNG。だから大道具製作でも、光が反射しない“艶消し”塗料で
    ムラなく塗って仕上げないと照明スタッフからNGが。

    オープニングでは、この3枚のボードにそれぞれ違うビジュアルを合成。センターのボードには番組ロゴやVTRがはめ込まれます。両脇にはランキングCG。

    この3つの画面はバーチャルカメラと連動しているので
    カメラの動きも自由自在。
    すべて、副調整室(サブ)にある1台のPCで制御しています。

    実は3つのクロマキーボードは、
    正確に15cmの間隔で建っています。
    そのわずかな隙間から美術セットがチラッと見えるのです。

    バミっているとはいえ、人の手による設置ですから、
    毎朝パネルの位置は微妙にずれてしまいます。
    なので、CGスタッフにとっては合成のための微調整が日課です。

    バーチャルCGには欠かせないのが、キャリブレーション作業。
    正確なデータを送らないと、不体裁な画面になってしまうことも。15cmの隙間の存在を、機械に覚え込ませるのです。

    人の手で設置して、人の手で調整する。
    このアナログな手作業のセッティングが、「クロマキーなのに奥行きを感じる」という表現を可能にしているのです。

    お天気コーナーでもこの3枚の緑パネルは大活躍。
    この時は、15cmの隙間はあけずにぴったりとくっつけて、
    大きなクロマキーパネルにします。もちろんこれも手作業。

    時には、出演者の前にかぶさるようにフロントCGが登場することも。背景には「クロマキーCG」、手前には「フロントCG」。
    サブにある送出PCがフル稼働です。

    毎朝、生放送中も送出作業のために張り付いているCGスタッフ。
    出演者のコメントに合わせて、色を変えたり、文字を出したり。
    こんなにテクノロジーが進化しても、ENTERボタンを押すタイミングは、やっぱり人力が一番正確だったりして。

    2021年8月

    デザインのヒミツ

    短冊クロマキー

    ー齋田さんはこれまでも朝の情報番組のセットデザインを担当してきましたが、今回のセットはどのようなコンセプトで?

    齋田 崇史

    齋田

    プロデューサーからはまず 、「番組ロゴをレインボーカラーにしたい」という話がありました。SDGsやLGBT等、「多様性、多面性」の意味合いも込められています。そこから、画面上に頻繁に出すレインボーのロゴが映えるように、セットの色は「白」に決まりました。
    そしてもう一つ、「8を象徴的に見せたい」という要望も受けました。それでセットの中に「8」をかたどったオブジェを置いています。一番わかりやすいのはセット中央の大きい棚で、もう一つは谷原キャスターの後ろにある「8」の棚です。飾り時計の針ももちろん8時を指しています。

    短冊クロマキー

    ー「レインボーカラー」と「8」以外にデザインに取り入れたものは?

    多面体ですね。番組のオープニングでは、レインボーの光がセンターの「8」に降り注いで放射線状に色付いていくのですが、その「8」のロゴが多面体にも見えて、そこからイメージを膨らませていきました。「多様性、多面性」というコンセプトを表現した形でもあります。セットはカウンターも背景も全て、多面体を集めたポリゴン造形で、素材はスチロールに見せたモク(木)です。「抜け」の部分にも、水色の多面体をあしらった幕をセットの奥に吊っています。

    お天気クロマキー(短冊を繋げる)

    解説モニタ

    ーセットイメージを一言で言うと?

    「アートミュージアム」です。谷原キャスターの知的なイメージから、セットに本棚を置きたいと思ったのですが、プロデューサーが求める“抽象的な感じ”を出すために、本棚を斜めに吊って、中の本が傾いてあえて整然としていない感じを出してみました。飾りにもアートっぽいものを置いて、トリックアート感のあるおしゃれな博物館、を思い描きながらデザインを進めました。

    ー特にこだわったところは?

    色の入れ方かな。白いセットに色を使う場合、ベタッと入れてしまうと白に対して強くなりすぎるし、奥行きも出なくなります。なので、布などの柔らかい素材で色を入れて白と交わりやすくしました。布以外にも、青い紐などのカラーロープや半透明の色の付いたアクリルを使ったり、さまざまな色の電飾をゆっくり動かしたりしています。緑も造葉で取り入れました。

    ーデザインで「遊んだ」部分はありますか?

    多面体の凹凸の加減でしょうか。多面体の大きさや面の傾斜の角度を変えることで、影の付き具合を調整して、場所によって色の入り方に変化を出しています。

    ー苦労した点は?

    白の強さの調整ですね。通常、白は光を飛ばして明るくなりすぎてしまうので、セットを白にすることは少ないんです。今回も、放送開始当初には「白が強すぎる」という意見があって、照明を落としたり、セットの壁や床にグレーの影を入れたりして、白を徐々に弱めていきました。その上でレインボーカラーを全面に入れていくので、通常のセットで気にするカメラの画角ごとの見え方以上に、セット全体に対しての色の入り方に非常に執着しました。セット丸ごとの統合感にここまで気を配ったのは初めてです。自分ではこの全体のバランス感にとても気持ち良さを感じています。

    (2021年7月)