フジテレビジュツの仕事
モトカレマニア
2019年10月〜12月
毎週木曜日 22:00〜22:54
- 美術プロデュース
- 古川 重人、三竹 寛典
- アートコーディネーター
- 野宮 昌志、駒崎 拓也
- 大道具
- 宮路 博貴
- 大道具操作
- 黒川 兼一
- 装飾
- 千葉 ゆり
- 持道具
- 中田 瑛理
- 衣裳
- 丸山 佳奈
- メイク
- 二宮 雅子
- 建具
- 岸 久雄
- アクリル装飾
- 鈴木 竜
- 電飾
- 佐藤 信二
- 視覚効果
- 川上 勝大
- 生花装飾
- 小柳 幸絵
- 小道具印刷
- 佐藤 好治
- 植木装飾
- 後藤 健
ビジュツのヒミツ①
ビジュツも妄想について行きますぅ

モトカレマニア女子の現実と妄想。
フジテレビジュツのスタッフもその両方の世界を
行ったり来たりしております。

まずは、ユリカとマコチが勤める「チロリアン不動産」。
外観は、とある場所でのロケーション撮影。

2Fにも上がれる開放的なオフィスはセット撮影。
“ロケマッチ”できるように、ドアには全く同じ装飾が必要です。

こちらは、マコチが転がり込んでいる「高級マンション」。
アダルトなセンスでまとめました。

他にも“がんそば”の陳列が印象的な「ユリカの部屋」や、

みんなが集う「BARネコ目」などが現実の世界。
オリジナルコースターもデザインしちゃいました。

そして、毎回暴走するのがユリカの妄想シーン。
この牢屋も妄想のためだけにセットを建てました。
漁船の甲板や球場など、突然のぶっとびシチュエーションにも
ついて行かねばなりません。

極め付きは脳内会議。“イイ女ユリカ”に“弱気なユリカ”、
おっと“議長ユリカ”も忘れちゃいけません。
マコチバージョンも始まってしまったので、さあ大変。

衣裳とメイクで大変身した全キャラが一堂に会するということは・・・。考えるだけでクラクラしそうな苦労が詰まったシーンなのであります。
2019年11月
ビジュツのヒミツ②
ドラマスタジオの
“入れ込み”計画は綿密に

フジテレビジュツで“入れ込み”と呼ばれるこの図面。
大道具の操作スタッフにとって最重要の平面図なんです。

実はこのドラマでは、一つのスタジオに入りきらない
レギュラーセットがあります。
そこで場面ごとにセットごと入れ替える作業が発生するのです。

たとえば「ユリカの部屋」がスタジオに建っている時は、

スタジオに隣接する大道具倉庫に
「BARネコ目」のセットが次の出番を待っています。

その都度建てバラシをしなくていいように、
セットごと引き枠に載せてあるのが普通です。

コンパクトに保管できるように、倉庫への収納も計画的に。
サイズを確認するためパズルキットを作ることも。

装飾をそのままに移動することもあるので、割れ物の固定は必須です。

「BARネコ目」をスタジオに建てたときの“入れ込み”図が
コチラ。

ということで、ユリカのアパートは大道具倉庫に移動されます。
2019年11月
デザインのヒミツ

ーこのドラマはセットが多いですよね?
齋田
はい。主人公2人が勤めるオフィス、マコチのマンション、ユリカのアパート、ユリカの行きつけの「BARネコ目」、とレギュラーセット4杯を建てました。
ーそれぞれのセットデザインの制作過程ですが、まずメインセットは?
メインのセットはユリカとマコチが勤める「チロリアン不動産」です。不動産屋さんって、窓に物件情報がたくさん貼ってあるところが多いですよね。ですが、このドラマでは監督が“かわいらしい”要素を多く取り入れたいとのことだったので、出入口は、実在するポップな雰囲気の不動産屋さんの外観をお借りしてのロケ撮影に決まりました。その外観に合わせて、セットにも水色、レンガ、それに白木を加えるというイメージに落ち着きました。

それと、“かわいらしさ”のもう一つの要素として、会社のキャラクターを決めたらどうか、と提案しました。社長が会社で犬を飼っている設定なので、「チロリアン」という名前の犬のキャラクターにして、そのぬいぐるみをオフィスのあちこちに置くことにしました。仕上がりが間に合うかわからなかったので、私も粘土で小さな犬を作りました。美大で専攻が陶芸でしたから得意分野です(笑)。



ーマコチのマンションのイメージは?
「高層マンションの一室で、メゾネットのおしゃれな部屋」という設定です。マコチは小説家の家に居候していますが、カップルの同棲とは違うので、ドライな印象になるよう、共有スペースには温かみを出さない、どちらの個性も出さないことを心掛けました。たとえば、普通は手すりに手垢を付ける“汚し”をかけますが、一切しない。お揃いの物はなし。ソファにもカバーを掛けず、新品をそのまま置いてあるだけ。リビングのテーブルにもテレビのリモコンしか置いていない。殺風景な部屋です。
その分、各々の部屋は個性を前面に出しています。マコチの部屋は物件オタクっぽく、壁にたくさん物件情報を貼っているし、小説家の部屋には著作の文庫をズラリと揃えています。もちろん架空の小説ですが、12巻の一つ一つにそれぞれ違うカバーイラストも描いてもらっているんですよ。
あとは、高級マンションという設定上、広く見せる必要があるので、カメラの撮り口から見て斜めのアングルに部屋を配置して奥行きを出しています。それと、メゾネットの2階を強調するためにフロアの区切り部分に外側から横木を渡して、高さも見せています。メインセットでもないのに、スタジオではこれが一番幅をとってますね(笑)。

ーユリカのアパートについてはどのようにデザインを?
ラブコメのヒロインの部屋なので、色調を明るくしたいと思いました。でも実は、このセットは直しが一番多かったんです。新木優子さんのイメージでミントブルーをキーカラーにしたのですが、出来上がりの壁の色などがどう見ても水色で「チロリアン不動産」の色味に近くなってしまったので、壁紙の上からエメラルドグリーンに塗り直しました。木(モク)の色調もトーンを落として暗めの色合いにしました。それも不動産会社の白木と差別化するためです。

ー最も苦労した点は?
不動産会社のオフィスの柱でしょうか。社長室が2階にある設定なので階段を作ったのですが、実際に役者さんが上り下りするので、柱がないと支えられません。ところが画(え)的には邪魔になる。なので、邪魔にならず安全面でも大丈夫な位置を決めるのに一番苦労しました。結局、階段をセットとして必要な部分以上に奥まで伸ばして作った上で、奥の見えないところで上から吊り、下からも固定することで、映り込む位置に柱がないようにしました。
2階建てのセットは空間に広がりができるのが利点です。階段の上り下りの芝居も、2階から下、下から上に話しかける芝居もできる。役者さんが芝居できる幅を広げるのも、ロケ撮影ではできない、セットを建てる意味だと思っています。

ーこだわったポイントはありますか?
「BARネコ目」の装飾でしょうか。店のあちこちに“ネコ感”(笑)を出したくて、漫画原作に1回だけ出てきた猫の目のマークをヒントにして、最初に店名のロゴから決めました。コースターもデザインして小道具にしています。あとは、猫のひっかき棒をイメージした手すりを付けたり、欄間やステンドグラスを爪でひっかいたような模様にしたりと、至る所に猫を連想させるパーツを盛り込みました。特に見ていただきたいのは、柱の石模様の1つが肉球の形になっているのと、手すりに使っている爪とぎ用の麻縄。そういった細かい遊びの部分も見つけて楽しんでいただけると嬉しいですね。
(2019年11月)




