フジテレビジュツの仕事

    ラジエーションハウス
    ~放射線科の診断レポート~

    2019年4月〜6月 
    毎週月曜日 21:00〜21:54

    • 美術プロデュース:三竹 寛典
    • アートコーディネーター:森田 誠之、駒崎 拓也
    • 大道具:浅見 大
    • 大道具操作:坂井 貴浩
    • 建具:岸 久雄
    • 装飾:千葉 ゆり
    • 持道具:植田 えりこ
    • 衣裳:高橋 志織
    • メイク:外山 隼人
    • 視覚効果:大里 健太
    • 電飾:佐藤 信二
    • アクリル装飾:二瓶 実咲
    • 小道具印刷:佐藤 好治
    • 植木装飾:後藤 健
    • 生花装飾:小柳 幸絵
    • アートフレーム:曽根原 潤

    ビジュツのヒミツ①

    放射線科の主役、
    大型検査機器に注目!

    放射線科が舞台とあって、
    今回は通常の医療ドラマと一味違います。
    手術ではなく、とにかく検査・撮影シーンがメイン。
    美術セットも検査室がズラリと並んでいます。

    当然、主役は大型検査機器。
    どの部屋にも、MRI、CT、マンモグラフィなどが鎮座まします。

    ベッドの上下動も電動操作。
    計器も光るし、トンネルの中へもスムーズにスライド。
    それもそのはず、これらの機器はほとんど本物の
    “モックアップ”なんです。

    さすがに放射線や磁気は出ませんが、操作手順は本物と同じ。
    ドラマのリアリティーに影響するので、
    役者には、機器メーカーのスタッフがきっちり伝授しています。

    ドラマの空間づくりにはロケハンが極めて重要。
    実際の病院での配置を参考にして、技師たちが作業する
    この長い廊下のスペースがデザインされました。

    ストレッチャーが入る大型エレベーターから続く
    廊下を進むカメラ。
    印象的なワンカットのドリーショットが生きる空間です。

    とはいえテレビならではの工夫もあります。
    “抜け”に映る検査機器で状況を表現するため、実際にはない
    場所にガラス窓をつくったり、ドアが開いた時に映る光景を計算したり。

    魅力的な映像を演出するため、
    すばやく道具を移動できるのがスタジオのメリット。
    ロケーション撮影ではかなり手間がかかります。
    スタジオではおなじみの“引き枠”が活躍するのですが…。

    今回の機器はかなりの重量級。
    「そこのMRIをちょっと上手に動かして」と、
    簡単に言われましても。
    結局、機器用に頑丈な引き枠を用意したので、床面が全て
    5寸高くなったのでした。

    ビジュツのヒミツ②

    日が当たらなくても頑張る
    放射線科の空間づくり

    「医師のオーダーがなければ何もできない」
    放射線科という縁の下のヒーローたちの奮闘を描く
    今回のドラマ。
    病院の中でもちょっと日の当たらない存在という設定です。

    「甘春総合病院」にはどうも新館と旧館があるらしく、
    近代的なロビーの新館とは違って、
    彼らの働く旧館は、壁の色合いもちょっとレトロ?

    コンクリート壁や配管がむき出しのところもあります。
    大道具スタッフの“エイジング”の技で表現する
    「日陰の世界」です。

    この階段を境に手前が旧館、
    エレベーターがある向こう側は新館。
    新館の廊下には絵画も。
    患者との面談室や、院長室も新館にあるということですね。

    こちらが旧館の奥の奥、「ラジハ」のスタッフ控室。
    横一列に並ぶデスクなので、カップラーメンをすすったり、
    前髪をいじったり、それぞれのキャラクターの個性が
    際立ちます。

    技師長のデスクには、さりげなく競馬新聞が。
    席の後ろにはお馬ちゃんの人形も。
    装飾スタッフの“飾り”で、
    各キャラクターの役作りをサポートします。

    グラフィックデザインもドラマのリアリティーを支えています。
    病院のロゴやパンフレットを見ただけで、
    どういうクラスの病院か、イメージできませんか?

    病院PCのデータ画面もそれっぽく。

    そして度々登場するのが、放射線医が画像診断する「読影室」。
    今回のドラマでは“写真”や“診断画像”が主役なので、
    画像加工作業を担当するCG部門は大忙し。
    病気原因の表現ですから、
    もちろん専門家の監修は必須であります。

    ビジュツのヒミツ③

    アレもコレも!
    細部に宿るリアリティー

    画面の中に映るモノは、役者以外ほとんどがビジュツの担当。
    なので、映り込む可能性があるモノは細かいところまで
    神経を使います。

    ドラマのリアリティーを壊しては台無し。
    あるべきものはそこになければなりません。
    放射線を扱うエリアにあるべき注意書き。

    病院など大きな建物には必ずあるアレもコレも置いてあります。
    消防法の観点からも、火災報知器やスプリンクラーはこのくらいの間隔で設置しなければならない。もちろん消火器や消火栓も
    必要です。

    医療スタッフの連絡用回線のアンテナもあるはず。

    やっぱりAEDも必要ですよね。

    さらには、使用中に検査室入口の表示は光らなけばなりませんし、エレベーターのボタンを押したら、点灯しなけばおかしい。

    けれどもここはスタジオ。美術セットは何もない空間に
    建てるので、電気系統も一から構築します。ということで、
    セット裏には電気関係のケーブルがひしめき合っております。

    手洗いエリアでは水も出なければいけないので、
    特殊効果のスタッフが引き込んでいます。
    液体石鹸も要りますね。

    あ、これは待合スペースによくあるマガジンラック。
    そこにある雑誌にもビジュツの技が。
    女性の患者さんは「WOMAN」を読むということですか。ん?
    「東経WOMAN」? ありそうでないものですね。

    デザインのヒミツ

    ーセットデザイン制作にはどのように取り掛かりましたか?

    アベ木 陽次

    アベ木 陽次

    デザインするにあたってまず、病院の放射線科に監督と取材に行きました。
    5つの病院を見たのですが、そのうちの4つに共通していたのが、ワンフロアにCTやマンモグラフィなど各種の放射線検査室がまとめられていて、それぞれの部屋の前に画像診断ができるデスクが置いてある構造でした。
    それぞれの検査室の間の距離も近くて、オープンスペースの廊下で技師同士が画像を見ながら会話をするんです。連携してやっている、という印象でした。そのリアルな構造をそのまま取り入れたのがこのデザインです。

    ー技師控室デスクの横一列の配置が印象的ですが、デザインの意図は?

    実際の病院では、技師達のデスクは普通のオフィス同様、向き合った配置です。
    セットではそもそもスペースの事情から、6人のデスクをどう入れるかで悩みまして。
    どうしても横長の配置になるなぁ、と思案していた時に、監督と雑談していて、いっそのこと横一列にしてみるか、という話が出て、試しに図面に描き入れてみたら意外と面白いデザインになったんです。
    横並びだと、カメラで左から右へ撮っていった時に、一人一人が全然違うことをしている様子がわかりやすくて、それぞれのキャラクターの個性を表現しやすいんです。
    逆に、カメラを引いた所から6人を撮ると、全員がこちらを向いている一体感、チーム感を出せます。

    ラジエーションハウス デスク割り

    デスク割り

    ー他の医療ドラマにはない、病院内のデザインはありますか?

    大抵の医療ドラマの病院は、都会にあってきれいか田舎にあって古くて小さいかのどちらかです。
    ですがこのドラマでは、1つの病院の中で、エリートであるドクターと、診療の表舞台には出ずに陰で支える技師達、という二者の対照的な構図がモチーフなので、ドクターがいる建物は新しい本館、技師達がいる建物は旧館、という設定にしています。セリフでは一言も出てこないのですが。
    ドクターが降りて来るエレベーターがある廊下までは本館で、壁は白と薄茶色の木目、手すりも白、部屋のドアには絵も掛けてあって、清潔感と上品さを出しています。そしてエレベーター前の階段を下りて技師達のエリアに入った途端、壁は雑なコンクリート仕上げと昔のタイル、手すりも灰色がかった水色、とレトロ感を漂わせています。

    ー実際の病院ではあり得ない、演出上のデザインはありますか?

    1つは読影室の場所。技師が撮影した画像をドクターが見て診断する部屋です。
    実際の病院では読影室はX線検査室から離れた所にあるのですが、セットでは「撮影する技師」と「診断する医師」の両者の世界を交わらせたくて、あえてすぐ近くに置いています。まあ、もしスタジオの広さが今の1.5倍ぐらいあったら、渡り廊下でつないだりして、もっとリアルに近づけたかもしれませんが(笑)。
    あとは窓ですね。実際の病院では、PCで画像を見る場所に窓は一切ありません。
    外光で画面が見にくくなりますから。ドラマでは、窓は朝昼晩を光で表現する重要なアイテムなので、技師控室の奥に細い窓を作っています。リアルっぽくするために、そこにわざわざ遮光カーテンを付けて、カーテンの隙間から漏れる光で「朝」を見せる。“演出で作り出すリアル”を感じてもらえると嬉しいですね。

    (2019年4月)

    ラジエーションハウス スタジオ平面図

    スタジオ平面図