フジテレビジュツの仕事

    黄昏流星群

    2018年10月〜12月 
    毎週木曜日 22:00〜22:54

    • 美術プロデュース
      三竹寛典、古川重人
    • アートコーディネーター
      村上和央
    • 大道具
      内海靖之
    • 大道具操作
      吉田精正
    • 建具
      岸久雄
    • 装飾
      佐々木慎吾、坂東一城、宮原千枝
    • 持道具
      佐々木ちほ
    • 衣裳
      嶋崎槇人
    • 小道具
      深沢杏
    • メイク
      佐藤美和、市川友理恵、田上広美、酒井啓介、在間亜希子
    • 視覚効果
      猪俣悟
    • アクリル装飾
      二瓶美咲
    • 植木装飾
      後藤健
    • 電飾
      寺田豊
    • 小道具印刷
      石橋誉礼
    • 生花装飾
      牧島美穂
    • フードコーディネーター
      佐川啓子

    ビジュツのヒミツ①

    リアルな装飾+撮影の為の基本技

    久々の大人の恋愛ドラマ。
    セットも生活感のあるリアルなものを目指しました。

    主人公夫婦の家は、年収もそれなりの銀行マンらしく、
    なかなかの暮らしぶり。

    一方、不倫相手の部屋はこぢんまりと。
    古ぼけた住まいなので、いいカンジの“汚し”で経年を表現。
    大道具が誇る“塗り師”たちの「エイジング」技術が光ります。

    ドラマでは、キャラクターの性格に合わせた装飾も重要。
    置いてある本、使っている家電を見ると、
    どんな人かが透けてくる。
    美術スタッフは、そんな風に演出をサポートしているんです。

    日本家屋の場合、縁の下の分だけ床は高くなっています。
    演技に影響が出るので、裏庭との段差もリアルに。
    カメラで撮影しやすい高さに仕上げました。

    “尺上げ”するには、「平台」と「箱馬」を駆使します。
    舞台美術から伝わる、丈夫で手軽なオールマイティーアイテム。
    寸法が決まっているので、パズルも楽ちんです。

    平台の上に箱馬をこっち向きに置いて、平台を重ねると、
    あっという間に、2尺高くなりました。
    大道具スタッフの基本技、
    なぐりによる“斜め打ち”で釘固定します。

    セットとセットの間は、カメラが通れるスペースを確保。
    通路沿いの壁は、引き枠や移動できるパネルになっています。

    そのシーンが終わると、すばやく壁を運んで元どおりに。
    鎮(しず)で固定して、ハイできあがり。

    2018年11月

    ビジュツのヒミツ②

    相手は生き物!植木装飾の世界

    庭に茂る木々は“植木装飾”スタッフの担当。
    時代や季節はもちろんのこと、
    「南側は葉が多く、北側はそうでもなく」など、
    設定上の方角も考慮しながら建て込んでいきます。

    一般家庭とはいえ、庭石や水場もあって、
    ちょっとした造園作業。
    演技に直接関係する“生活導線”を意識して、植木のサイズ選びやアイテムの配置には、かなり神経を使います。

    床に敷いたパンチカーペットに水で固まる土などを散らして、
    それっぽく見せる技です。時には土に色を付けることも。

    スタジオの床は土ではないので、直接植えるわけには
    いきません。ので、撮影上映らない壁の向こうはこんなカンジ。
    スタッフが動かしやすいように台車に載せてあります。

    鉢植えもありますが、
    大きなものはビニールシートなどで「根巻」をします。

    季節違いの木も用意できなければなりませんし
    葉っぱのツヤも気にしなければいけません。
    常に生き物と向き合う仕事なので、スタッフの知識も重要です。

    秋ドラマなので紅葉も。
    今回は、夏でも赤い「ノムラモミジ」を使いました。
    “濃紫”が名前の由来だという説も。

    湾岸スタジオの一角にある、憩いの緑の空間。
    ではなくて、ここは植木装飾の倉庫スペース。
    特殊な植物が必要になってもすぐ出せるように、
    冷暖房完備の温室もあります。

    ベストな状況にするために、
    何カ月も前から準備しなければならないのが、植木装飾の世界。
    生き物相手の業種なので、早め早めの発注をお願いしま~す。

    2018年11月

    ビジュツのヒミツ③

    経験値がものを言う。持道具の仕事

    ほとんどのドラマでは、スタジオ前室にスチール棚があります。
    役名を書いた貼り紙の奥には、いろんな小物が。
    俗に「持道具棚」と呼ばれています。

    メイクをして衣裳を身に着けた役者さんの、最後の身づくろい。
    靴や時計、眼鏡、鞄、帽子など、
    その日の収録に合わせて「持道具棚」に並ぶものは変化します。

    どんなモノを用意するか?
    持道具スタッフはとにかく台本を熟読し、
    登場人物の生い立ち、家族構成、趣味、職業、生活レベルなどをその感性で読み取っていきます。

    一口に持道具と言っても、その守備範囲の広さは相当なもの。
    現代劇の場合、アクセサリーや時計、傘など
    協力してくれるお店や企業と交渉して集めることも。

    今回は設定上、冬のシーンが多いので、
    撮影時期に冬物をスタンバイするのに苦労しました。
    山登りやゴルフのシーンが加われば、
    持ち道具も増えていきます。

    倉庫では、時代設定に合うレアアイテムを中心に保管。

    使い込んだトランクや下駄も、各種取り揃えてあります。
    警察官の制服や軍服、スポーツ用具も持道具の範疇なんです。

    大勢のエキストラが出るシーンがあると、かなり大変。
    同じ種類のものを大量に用意しなければなりません。
    靴や帽子などサイズも気にしなければいけないアイテムも。

    ドラマでの役柄やシチュエーションに合わせた小物選びには、
    持道具スタッフの経験値がものを言う。
    専門スタッフの頭の中には、
    無数のアイテムがインプットされているのです。

    2018年11月

    デザインのヒミツ

    瀧沢家

    瀧沢家

    ーセットデザインにあたってはどのような依頼を受けましたか?

    柳川

    主人公夫婦の家について、プロデューサーからの要望は「普通の家にしたい」でした。普通でありながら、一点の輝きを見たい、と。テレビのセットをデザインする上で、“普通”ほど難しいことはありません。試行錯誤の末、目を引くような要素は控えめにしながら、空間作りと質感に気を配ったデザインに行き着きました。

    ー特にこだわった部分はありますか?

    家の中の動線にこだわりました。玄関から入って階段を上る縦の動きと、キッチンからリビングや和室への横の動き、この縦・横の動線が1つの空間に存在するようなデザインにしました。

    居酒屋

    居酒屋

    ー最も苦労した点は?

    居酒屋のセットです。監督から求められたのは、間口が狭くて奥行きのある、うなぎの寝床のようなデザインでした。その狭い感じと、実際に役者さん達が動き回れる空間の確保との間でせめぎ合いがありました。奥行き感を表現するのにも苦労して、途中、何度かデザイン案がボツになりました。

    ー視聴者に特に見て欲しい箇所は?

    キッチンのデザインです。真璃子は主婦業を全うしてきた女性なので、キッチンを彼女の「城」と、シンボリックに捉えた見せ方にしました。空間を広くとり、正面からあえてストックヤードまで見えるような配置にしています。

    栞の家

    栞の家

    ードラマの内容上、配慮したところはありますか?

    夫と妻がそれぞれ不倫に呑み込まれていくという複雑なストーリーなので、その世界観の邪魔にならないような空間作りを心掛けました。それと同時に、細部にまで上質感にこだわりました。
    入り組んだストーリーと一緒に、味わいのあるセットも楽しんで頂ければと思います。